あいさつの形成の方法

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子どもと目が合ったら、こちらからニッコリしたり、こちらからハーイの手をあげたり、こちらから頭を下げたりすることがあいさつだと、私は思っている。

あいさつが起きにくい子どもには、こちらからあいさつすれば良いのだと思っている。

あいさつを模倣で返してもらえたら、他の場面で他者ともあいさつできるかもしれない。

そう思って、ご家族も先生方も、自分からあいさつし、子どもにあいさつを教えていると思う。

教材No.20-1 V サイン・ピースサインの手の向きの理解

自閉症の子どもさんが写真に撮られるとき 、V サイン・ピースサインの手のひらを、カメラマンに向けないで、手のひらを自分の顔の側に向けていることをよく見かける。

オウム返し模倣で身に付けた、V サイン・ピースサインの、手の向きだ。

もっと目立つ場面では、バイバイの手の振り方で、手のひらが自分の顔の向きに来る自閉症の子どもさんもいる。

自閉症の子どもさんは、ご家族や先生がして見せた手のひらだけ見て真似ている。

ご家族や先生の手のひらが、僕・私の方に向いているので、向きをそっくり真似をしているのだ。

先生の顔と先生の手のひらの関係を読み取ることが難しい。

ピースサインもバイバイの手も、手のひらが相手に向けられているということを読み取ることが難しい。

教材No.20-2 オウム返しを利用する

あいさつの形成には、そのオウム返しをスタートに利用すると良いと考えている。

初めはふたりのあいさつがそっくり同じあいさつから学習すると良いと思う。

「おはよう」「おはよう」、「こんにちは」「こんにちは」、「さようなら」「さようなら」「おやすみなさい」「おやすみなさい」などだ。

この『あいさつの形成の方法』で使用した画像はすべて、坂東眞理子、蒲谷宏 監修/三省堂編修所 編『こども マナーとけいご絵じてん』(三省堂 2009年 本体価格 2,400円+税)のイラストによるものです。

家庭や保育園で授受関係のあいさつを教えたい時は、2者関係の言葉でなく、その子に言って欲しい言葉を、保護者や先生がその子になりきって言ってあげて、真似してもらう。

「貸して」「どうぞ」というやり取りをしたいところだが、その子本人になりきって「貸して」「貸して」と子どもの側の言葉を言いながら渡す。

徹底的に、真似してもらうのだ。

「貸して」「どうぞ」のように、向かい合う言葉を使ってしまうと、授受関係の読み取りが難しい。

授受を教えなくていいということではないが、自閉症の方達にとって、話者が移動する授受関係の言葉の使用は難しい、ということを知っておいてほしい。

見本の写真上にカードを載せる
坂東眞理子、蒲谷宏 監修/三省堂編修所 編
『こども マナーとけいご絵じてん』
(三省堂 2009年 本体価格 2,400円+税)
の13頁のイラスト画像

授受関係では「ありがとう」を一番先に覚えてくれるかもしれない。

品物をもらっても、行動でやってもらっても、とにかく「ありがとう」と言うと良さそうだということが、一番初めに分かってもらえそうに思う。

その時も「どうぞ」「ありがとう」でなく、渡すときに「ありがとう」とオウム返しの呼び水を言ってやり、「ありがとう」を言ってもらうと良い。

オウム返しのような、反復する特性をうまく使って、あいさつを形成したい。

教材No.20-3 子どもの役割だけ教える

親子が朝の登校時に使う、「いってらっしゃい」「いってきます」表現が難しいということを、何十年も考えたことがなかった。

自分の家が基地で、学校が出かける場所だ。

家から動かないお母さんの言葉、「学校へ行って家へ帰ってらっしゃい」というのが「いってらっしゃい」だ。

家から学校へ往復する子どもの言葉、「学校へ行って家へ帰ってきます」というのが「行ってきます」だ。 

私は長い年月、このあいさつを正確に考えないで、、自分は子どものころから、場面取り込みで暗記して使ってきた。

改めて考えてみると、移動する空間の方向と、長い時間の経過を含んでいて、それらを理解した上で使う、とても難しいあいさつだ 。

教材No.20-4 正答教授法で模倣してもらう

見本の写真上にカードを載せる
坂東眞理子、蒲谷宏 監修/三省堂編修所 編

『こども マナーとけいご絵じてん』
(三省堂 2009年 本体価格 2,400円+税)
の21頁のイラストによる

教材は、僕・私の絵カードと、吹き出しを使う。

初めはあいさつの見本の上にそれぞれのカードを乗せていく。

次に、あいさつの見本を裏返しても、絵カードや吹き出しを載せられれば、自分の役割の言葉を理解したということだ。

さらには、あいさつの見本を裏返し、絵カードや吹き出しの選択肢から載せられれば、素晴らしい。

机の上で理解できても、玄関の会話で使えるかどうかは、やってみないとわからない。

自閉症の特性のある方は、机の上のような平面的な狭い空間では状況を写真のように理解しやすいが、玄関や学校や校庭のような広い空間に行くと、空間の全体視が難しくなる。

体育館や校庭で整列できないとか、座り込んで砂をいじってしまうとか、見聞きするが、自閉症の方たちにとっては広い空間は苦手なのだ。

見本を裏返して選択肢のカードを載せる
坂東眞理子、蒲谷宏 監修/三省堂編修所 編

『こども マナーとけいご絵じてん』
(三省堂 2009年 本体価格 2,400円+税)
の21頁のイラストによる

それで立っていられなくて、先生にぴったりくっついていたりする。

あるいはふらふらと、目に見える興味あるものの方向へ行ってしまう。

全体を見るのが苦手だということ、広い空間が苦手だということ、そのことを理解した上で「ここにこうしていようね」と手を繋いだり、後ろに立ってあげたり、低学年のうちはしゃがみ込むことなどを許してほしい。 

玄関では、吹き出し「いってきます」を手に持たせて、文字を見ながら言えるといい。 

そうやって本人の脳の中に自分の役割が理解されれば、「いってきます」のあいさつは出来上がる。

まずは、本人が自分の役割の言葉を、登録できるかどうかを、学習で形成し、場面で確認したい。

文字の助けを借りて、自分の役割のあいさつができれば、次の段階で、お母さんが「行ってらっしゃい」と言っても本人は「行ってきます」が言えるようになるはずだ。

「ただいま」「おかえりなさい」も同様にして、本人の役割の言葉である「ただいま」を学習する。

家にいて送り出す人と出かけて行く人、2者の役割理解は難しいので、本人が自分の役割の言葉である「ただいま」を身に付けたら、お母さんの役割の言葉は別途学習の機会を狙う。

教材No.20-5 あいさつの難しさを理解する

見本の上にカードを載せる
坂東眞理子、蒲谷宏 監修/三省堂編修所 編

『こども マナーとけいご絵じてん』
(三省堂 2009年 本体価格 2,400円+税)

の22頁のイラストによる

97歳の認知症のヤエさんはデイサービスへ行った時、「こんちわぁ」と室内へ入っていく。

ある日を境に自宅へ帰宅したときも「こんちわぁ」と帰ってくるようになった。

デイサービスと自宅、「ただいま」と「こんにちは」を使い分けなくなった。

ヤエさんの場合は、成長・発達とは逆の、認知の退行だった。

子どもにその場面に合うあいさつを無言で要求するのでなく、自分から先にあいさつしたり、上記のようにオウム返しで見本を言ってやったり、どう言えばいいかをその場で子どもに教えてあげたりしたら良いと思う。

 アスペルガー障害の方がある時、「何時までがおはようございますで、何時までがこんにちはで、何時からがこんばんはか、わからない」と教えてくれたことがあった。

見本を裏返して選択肢のカードを載せる
坂東眞理子、蒲谷宏 監修/三省堂編修所 編

『こども マナーとけいご絵じてん』
(三省堂 2009年 本体価格 2,400円+税)
の22頁のイラストによる

曖昧が、苦手だった。

二人で相談して、一年中、午前10時が朝の「おはよう」と昼の「こんにちは」の境界、夕方5時が昼の「こんにちは」と夜の「こんばんは」の境界と決めた。

基準があると、楽らしい。

あいさつとは、そのように難しいものなのだ。

 

 

 

 

 この『あいさつの形成の方法』で使用した画像はすべて、坂東眞理子、蒲谷宏 監修/三省堂編修所 編『こども マナーとけいご絵じてん』(三省堂 2009年 本体価格 2,400円+税)のイラストによるものです。

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 このブログの題名「猫ちゃん」は、認知症の親が猫の名前を憶えられず「猫ちゃん、猫ちゃん」と可愛がったことに由来しています。

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