今回は、病気や障害のある子どもと高齢者、その世話をする介護者自身の終末医療について考えます。
リビングウィルは、元気な時に書き残す、終末医療についての意思表明書です。
介護している子どもと高齢者について、そして介護者の自分自身も、万一の時に、どんな終末医療を受けたいか?
元気なときに、自分の延命治療の希望を、家族と話し合い、書き記します。
医療に関する、遺言書ですね。
遺言書は、財産をどうするかですが、リビングウィルは、命と医療をどうするか、について意思表示します。
突然の病気・事故などで意思表示ができなくなり、回復が見込めず最期が近づいた時、リビングウィルで、本人家族の希望を医師・看護師に伝えます。
考えが変わった場合、リビングウィルは、何度でも書き換えられます。
延命治療と健康寿命
健康寿命は、日常生活が制限されることなく生活できる期間で、男性72歳、女性74歳です。
リビングウィルの難しい点は、医療従事者が患者の命を救おうとする治療使命と、素人の患者と家族が必要とする健康寿命が、異なることです。
お医者さんは患者が寝たきりになっても命を救おうとし、我々は脳や身体の回復の見込みがないのであれば、植物状態のような延命はしないでほしいと望みます。
私もガンが分かった時は、自分で意思を表明できると思うのですが、心筋梗塞や脳溢血などで意識不明になった時は、意思表出できないので、今回自分もリビングウィルを準備してみました。
98歳で見送った認知症の親の最期を振り返って
我が家では、83歳で認知症を発症した親を、15年の在宅介護で、98歳で見送りました。
最後の10か月は、歩けなくなり、話せなくなりました。
終末の6か月間で4回、脱水➡高熱の尿路感染症の入院をしました。
心臓も弱って来て、足のむくみ・踵の褥瘡がありました。
入院でいったん、口から食べることが回復しましたが、1か月後ムース食も飲み込みにくくなり、とろみの飲み物もむせて飲み込めなくなりました。
水分を飲み込めないので、点滴の水分補給が必要でした。
私は、親が人生を終わろうとしている、枯れて行こうとしているということに、気づくことができませんでした。
頑張って食べてほしい、頑張って飲んでほしい、ということに夢中でした。
最後の2週間、デイサービスのトイレの排泄介助で便座に座ると、3回の意識消失がありました。
弱くなった心臓では、排泄や姿勢を変えるだけで、血圧の変動が大きかったのです。
デイサービスの方々は、一生懸命に身体機能を保持し、清潔にと世話をしてくれました。
デイサービスから救急車で運ばれた医療機関で、「救命救急をして、この先を施設で寝たきりで暮らすか、在宅介護で静かに看取ってあげるか、ご家族が決めるときです。」と医師に教えてもらいました。
それでようやく私も、食べてほしい、飲んでほしいということが、もう無理なのだと理解しました。
亡くなる前の晩、誤嚥をCT撮影してくれた病院で、「入院しますか」と医師に聞かれました。
その時は、「入院させますが、延命治療を拒否します」と断言できることを、まだ知りませんでした。
入院してたくさんの管をつけて寝たきりになったら、「家がいい」という親の意思に反すると思い、「今夜は連れて帰り、朝また来ます」と、自宅に一緒に戻りました。
帰宅して、明け方、自宅で亡くなりました。
尊厳死とリビングウィルを準備しておけば、最後の入院も恐れずに、医師にはっきりと延命治療の拒否を伝えて、病院で看取ってもらえたはずです。
葬儀になるまで忘れていましたが、親の遺言書にも「延命治療は望まない」と書かれていました。
本人の意思を忘れないためにも、緊急事態でない時に、リビングウィルを準備しておけると良さそうです。
リビングウィルカード
医療については素人の我々も、「延命治療」について知っておく必要がありますね。
延命治療は、病気の回復ではなく、延命を目的とした治療です。
延命治療が始まると、中止は簡単ではありません。
延命治療の大きな柱は、人工呼吸・人工栄養・人工透析の3つです。
救急隊に連絡して、医療機関に運ばれた時、まずは医療従事者に、リビングウィルの存在を知らせます。
すると、患者と家族の意思に沿って、医療従事者から何のための措置かの説明があり、延命をするかしないかを問われます。
救急情報と一緒に、リビングウィルも保険証に入れて保管しておくと良いですね。
家族・親戚・同僚・知人に、リビングウィルを知らせておくことも、大切になります。
尊厳死を願うとは具体的にはどんなことか
長く終末医療に従事している、90歳の精神科医の中村恒子さんが、ある対談で次のように語っています。不安と折り合いをつけて うまいこと老いる生き方
尊厳死を希望している。
延命をしないでください。
ICU(集中治療室)に入れないでください。
人工栄養をしないでください。
胃ろうをしないでください。
口から食べられなくなったら、餓死させてください。
点滴は痛み止めだけにしてください。
肺炎と心不全の重体及び老衰は、そのままにしてください。
人工呼吸器をしないでください。
心臓マッサージをしないでください。
寝たきりになって、筋力がなくなって、歩けなくて、床ずれができて、長期間闘病するのは嫌です。
私の場合、長野県須坂市のリビングウィルカードを使うと、以下のような希望になります。
日本尊厳死協会とリビングウィル
日本尊厳死協会のホームページです。
正式なリビングウィルを表明をしたい方は、日本尊厳死協会にweb入会し、登録できます。
1年の会費ひとり2000円、終身の会費7万円です。日本尊厳死協会WEB入会の流れ
日本尊厳死協会のリビングウイルを受容し、患者の意思に協力してくれる医師の都道府県別一覧を以下で検索することができます。リビング・ウイル受容協力医師リスト
皆さんが救急情報とともに、健康寿命への意思表示をリビングウィルでできる、意思表明書の紹介でした。
救急情報用紙も、リビングウィルカードも、お住まいの自治体で発行している可能性があります。
お一人お一人、お考えが違うと思うので、ご家族と話し合う機会になさってみてください。
障害児者を緊急に預けられる入所施設
家族の入院などで、緊急時に預けられる施設があります。
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