働き盛りの介護者の悩み 親が在宅介護を望む時の解決法

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仕事か 介護か

 在宅介護を望む、高齢者の親御さんがいたとします。

持ち家に住んではいるものの、親御さんの経済は国民年金だけです。

介護者は、常勤でフルタイム勤務の仕事を持っています。

常勤とはいえ、家のローンや子どもの教育費がこの先もかかります。

親御さんに認知症の発症や転倒骨折などが起きた時、親御さんに施設に入ってもらうか、介護者が常勤の仕事を辞めて非常勤になって在宅介護をするか、仕事を辞めて在宅介護に専念するか、さあ介護はどう設計したらいいでしょうか?

転倒事故は誰にでも起きる 

慣れた家とはいえ、認知症がまだない私でも、階段のドアの高い取っ手に肩をぶつけたり、カーテンを持ったまま椅子に上がって椅子ごと転倒したりすることがあります。

振り帰れば我が家の親も、50代か60代だったでしょうか、近所へ外出して転んで両手の平をすりむくなど、何度か怪我をした時期がありました。

注意力や歩行もそうやって老化し、次第に悪くなります。

大なり小なり転倒のような事故は、高齢者には避けては通れないことのように思います。

70歳代以上の高齢者であればなおさらです。

本格介護という台風に見舞われることは、どの家族にも起き得ることです。 

誰でも我が家の暮らしを続けたい 

自分もそうですが、高齢者の親御さんは、自分が選んで、思い出の詰まった、住み慣れた家を離れたくないのだと思います。

新しい施設での暮らしは、一から覚えなければならない、それは70代になってみれば億劫なことのように想像します。

自宅であれば、誰に気を使うこともなく遠慮なく暮らせる、そして自宅なら同居や別居の子ども家族が訪ねてくれる、そういう日常を失いたくないのだと思います。

特に子どもと同居であれば、この家で自分が育てて来たように、この家で子どもの世話になりたいと高齢の親御さんが思って自然です。

介護者となる自分の幸せが第一優先事項

子育ても、介護も、何世代も繰り返されてきた世代間交代の歴史です。

長い歴史で繰り返されてきたことが、一般的なことだと私は思います。

親は、我が子の幸せを一番望みます。

介護者となる子どもは、自分の幸せを最優先できる介護を行なえば、親の望みと合致するはずです。

自分は自分のためにどうしたいか、それをまず明確にしましょう。

仕事が好きで働きたいと思えば、それが最優先事項です。

自分の子どもの将来のために経済的に働きたいと思えば、それが最優先事項です。

仕事に疲れ、人間関係に疲れて、ちょうどよい、このチャンスに仕事を減らそうと思えば、非常勤に変わって在宅介護をするチャンスかもしれません。

あるいは転職のチャンスかもしれません。

経済的な心配が少なければ、仕事を辞めて在宅介護を選び、自分の人生をちょっとリセットするチャンスかもしれません。

いずれにしても、自分の人生が幸せでなければ、幸せな在宅介護を親にしてあげることはできない、そう思ってください。

仕事を辞めるか辞めないかでなく、どうすることが介護者となるあなたの幸せか、ということをご自身に問うてみてください。

優先順位第一位は、ご自身の幸せ

優先順位はご自身の幸せ、お子様、ご主人、親御さんの願いの順かなと私は思います。

将来ご自分が介護される側に回るときも、そうだと覚悟してください。

その優先順位を活かしつつ、親御さんの願いを叶えてあげることが介護者となる子どもの務めだと思います。

経済的な事情やお子様方の先々の教育費などを考えて、フルタイム勤務を縮小することができなければ、親御さんに施設に入っていただくことも必要だと思います。

自宅から施設へ入所するよりは、病院入院に続いて施設へ入所というコースのほうが親御さんにはリハビリのように感じられて、受け入れやすい流れかも知れません。

その場合、ご自身から言いにくければ、兄妹姉妹、伯父さま伯母さま、かかりつけの医師、担当医、医療ソーシャルワーカー、看護師さんなどから言っていただくといいと思います。

完全隔離でない、過ごす時間を共にできる施設がいい

私が知っている医療型の老人保健福祉施設では、朝8時から夜8時まで面会が可能でした。

家族がいつでも訪ねられる状況なので、とても良い老健に思えました。

インフルエンザの時期やコロナ禍の現在は面会が限定されていますが、毎日家族に会える施設は親御さんも慣れやすい気がします。

我が家の親も全く会えない状況の老健やグループホームでは、自分の家から離れたことで表情に精気がなくなって、面会しても廃人のように見えましたが、私が毎日面会に行ける病院では笑顔がたくさんあり、生き生きとして「また明日ね」と私が言うとニッコリと穏やかに入院していてくれました 。

自宅の近所で、家族が毎日出入りできる、家族と共に時間を過ごせる施設があるといいなあと思ったものです。

双方の願いを叶える在宅介護の方法 

親御さんが在宅介護を望む理由は、我が家で眠れることと、自分の子どもの世話になりたいことの2つだと思います。

しかし在宅介護は、介護者である我が子の同意がなければできません。

その時、介護者となるあなた自身が、一番幸せである状況を作ることが大切です。

あなたが幸せでなければ、親御さんに優しい介護はできません。

だから親御さんの在宅介護を叶えてあげることができるなら、それ以外の全てにおいて介護者のあなたの選択が優先されます。

親御さんの一番の願いである、夜自分の家の自分のベッドで寝ること、を叶えてあげるのであれば、その他は介護者であるあなたの都合のいいように生活とサービスを組み立てればいいと思います。

デイサービスを利用料の目一杯使う、仕事の忙しい時期にはショートステイを使う、福祉用具を借りる、特定福祉用具を購入する、福祉車両を使う、住宅改修費を使う、などです。

利用料の1割負担の他に、それでも足りない時間は全額自費を足してサービスを使うというやり方もあります。

例えば、要介護3で、利用限度額が1ヶ月26万円の時、デイサービスをフルに利用して30万円が予想されれば、26万円の1割負担の26000円と4万円は全額自費なので、計66000円を負担するということです。 

共感と歩み寄りのある 本人への伝え方

フルタイムの常勤の仕事を持ちながら、親御さんの在宅介護をされるなら、その覚悟を伝えましょう。

認知症を発症していなければ、今のうちにどうしたいかを、親御さんと子世代で相談しておきましょう。

改まると話し合いが硬くなるので、親御さんが将来の心配を語った時に「メモしておくね」と書いて、希望を文書にし、日付とサインをもらっておくといいかもしれません。

臓器提供や延命治療、遺言などについても同様に、テレビ番組の話題などから、親御さんがそういう話題に触れたときに希望を聞き出して書面にしましょう。

認知症になった時、急速に進行すれば、話し合いも難しくなります。

在宅介護と仕事の両立について、このように伝えるのはどうでしょうか?

「最後まで我が家のベッドで眠れるように私も世話をするから、私の仕事も定年まで続けられるように協力してちょうだい。一緒に協力し合って行こう」と依頼すれば、親御さんはきっと喜んで協力してくれると思います。

仕事の継続を前提に、可能な限り在宅介護をする、ショートステイやデイサービスを使う、ある時老健なども使う、 そのための介護保険制度・居宅介護支援だ、そういうことだと思います。

我が家も結果的にそうでした。

私の場合は、「私も仕事を続けたいからデイサービスに行ってね」と認知症の親に依頼し、平日午後だけ働く非常勤の仕事を辞めずに15年間の介護ができました。

4年間家族だけで見守り、10年間デイサービスにお世話になり、最後は、老健、サ高住、ショートステイ、グループホーム、病院に5ヶ月お世話になり、残りの5ヶ月はデイサービスと在宅介護で見送りました。

在宅介護を続けるために協力し合う、そうしたいと初めに親御さんに伝えれば、喜んで協力してくれるように思います。

在宅介護であれば親御さんに合うデイサービスは大事

常勤の勤務の間、デイサービスに行っていてもらうというのは、その間安心して自分が仕事をできるからです。

子育て時代の、保育園と一緒ですね。

またデイサービスで介護士さんと交流したり、お風呂に入れてもらったりできるからです。

我が家の親も「自分の家で寝たい」と、考えているようでした。

時々私が、「ずっと家にいていいんだよ、私がずっと見るからね」と言うと、とっても安心して嬉しそうにニコニコしていました。 

その代わり、1年350日くらいデイサービスに行ってくれました。

昼間デイサービスで7時間過ごすので、家族と朝晩4時間過ごすより、デイサービスの介護士さんと交流している時間の方が長く、要介護3では、デイサービスから自宅への帰宅時に「こんちわー」と挨拶を混同して帰ってくるので、笑えました。

介護の自己開示

フルタイムの常勤勤務の方は、制度があれば、年休をもらい、介護休暇制度なども利用するといいです。

管理職の道を選ぶならまた別だが、管理職地位にこだわらないなら、平社員で退職を迎えるなら、在宅介護の勤務者と割り切って、権利の範囲の年休を目一杯取るべきです。

私は在宅介護を決めてから、誰にでも自分が介護状況にあることを伝えました。

勤務先では皆さん親切に協力してくれ、ぴったり5時に帰宅させてくれました。

そういう自己開示と他者の協力がなければ、在宅介護は家族の力だけでは難しいと考えます。

勤務先がそういう理解を示してくれることが、介護を社会の問題として支えるということかと思います。

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 病院小児科で臨床発達心理士をしています。
 梅津八三の心理学、行動調整法、子どもの行動理解、育児、教材、ソーシャルスキル、介護、猫の行動について投稿中です。

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