小学校3年生のS君が、病院小児科の療育に、お母さんと見えました。
小学校3年生の国語と算数の勉強は、S君にとって、だいぶ難しいです。
勉強が難しいと、先生の話に集中できず、授業から離れる行動が起きやすくなります。
しかも、35人の大勢のクラスは、S君には賑やかすぎて、刺激と情報が多すぎます。
S君が、落ち着いて授業に参加する方法を、3人で話し合いました。
お母さんに褒められたい
①家で連絡帳の時間割の〇印を見たお母さんが、「6時間、頑張ったね」と褒めてくれると、S君は一番嬉しいそうです。
そこで、連絡帳に、1週間の予定表のミニサイズを、貼ることにしました。
学校で連絡帳書きの検印の時、担任の先生にS君が着席して頑張った時間、〇印を付けてもらいます。
運動感覚を満たしたい
➁私が「S君、親指を中に入れて、手を握って、膝の上に置いて、話を聞いて」と言うと、素直に私の指の動きを真似してくれる S 君です。
話し合ううちに、壁などを触わりに手は動いてしまうのですが、それでも触わる行動を止めるよりは、手をこうしてください、と頼む方がS君の感情を傷つけません。
発達期の、8~9歳の男の子の、止むに止まれぬ触覚運動なので、注意すると、S君の怒りが増幅されます。
注意するよりも、次回の行動プランを「頼むね」と言い続ける事です。
起きてしまった行動をけなすのでなく、次回の望ましい行動を毎回伝えます。
「指をこうすると、我慢しやすいよ。」と話して、療育が終わるまでに、5~6回、「指をこうして、聞いてね」と、お願いしました。
否定したり、けなしたりしなければ、嫌がらずにその都度やってくれる、S君です。
③「S君は感覚運動を満たしていたい人だ」と、私が説明すると、お母さんが思い出したように、S君が「教科書を破る」と言いました。
「教科書は大事だから、筆箱に入れておける小さな付箋紙にグルグル書いたり、付箋紙をいじったりするのはどうか」と私が提案したら、S君が「紙に書いて、先生に叱られた人がいる」と言うので、付箋紙はやめました。
④それでは、膝の上方で短い鉛筆を回すのはどうか?と、私が短い鉛筆を回して見せました。
梅津八三のいう、緩衝行動、分からない場面をしのぐための行動です。
私だと、聞いても分からない話の時は、頭の中で、内緒で別のことを考えています。
S君が「僕にはできない」と言うので、「やってみたら」と真似してもらうと、鉛筆回しをその場でできました。
「鉛筆回しは音が出ないし、誰の迷惑にもならない、自分の授業参加の時間がなくなるだけ。それは離席よりもずっと良いよ。」と話すと、分かった様子です。
「目は先生の方を見て、鉛筆を回すんだよ。」と付け加えました。
S君は、何かを触っていると、落ち着ける人です。
療育の最期に、S君が、落ち着いて座っていられるように、100円ショップのプニュプニュを持たせると、とっても喜んで、帰るまでに3回「これ、ありがとう」と、自分から目を見て言いました。
プニュプニュを、算数の勉強の間は、お母さんに預けて、しまっておけるS君です。
⑤このプニュプニュは学校へは持っていけないので、お母さんに角角消しゴムを買ってもらい、授業で使う普通の消しゴムの他に、触るための消しゴムを2個、S君の筆箱に入れてもらうことにしました。
コクヨ カドケシと、サンスターのジグザグなら、触わりがいがあります。
学校の先生にも、「手悪さ」という評価ではなく、感覚を満たして離席しないための道具だと、お母さんから伝えてもらいたいです。
S 君も自分で、「席に座っているために持っている。席についていることが大事だから。」と、言えるようになりましょう。
35人学級ではどの座席が集中しやすいか
病院の小児科で、私は保護者と話す時も、本人と話す時も、必ず絵や図および文字を書きながら話し合います。
療育の近い距離で、3人で話し合っている時は、私の描く図を挟んで、話をよく聞いてくれるS君です。
S君の座席の位置を聞くと、窓側の一番前が一度、窓側の一番後ろが一度でした。
その2か所では、席を離れる行動が起きてしまい、授業への参加度が少なくなりました。
先生との距離が近い方が、S君は先生の話を聞きやすそうです。
一番後ろの座席は、模倣が起きやすいS君にとって、クラス全体が見えてしまって、他の人の行動に引きずられます。
⑥そこで、お母さんから先生に、廊下側の1番前の席にしてもらうよう、頼んでもらうことにしました。
1番前であれば、先生に注目しやすいと考えるからです。
S君は背が大きいので、一番前の中央は難しく、廊下側ならば良いと考えました。
板書が先生の背中で見えないこともあるので、ノートの書写には不安もありますが、お試しです。
お母さんや先生から期待されている行動の理解
「他のお友達の行動を真似しない、S君が授業にどう参加するかで、連絡帳に〇がついて、お母さんに褒めてもらえるよ。」と、教室の見取り図で話しました。
図書室で本を読む
自分の席で本を読む
黙っている
座っている
私が4つの行動の選択肢を書いて、どう振る舞うといいかの順位を聞くと、社会的行動を理解していて、療育場面では以下のように、自分の言葉で言えました。
⑦「座っていると、黙っているが、2つとも1番。本を読むのと、図書室へ行くのは、勉強ができなくなるからダメ、少人数で勉強したいけど他の小学校へは転校したくない。」と、自分で順位を決めることができました。
下のピラミッド図は、S君が決めた行動順位のピラミッドです。
ピラミッド図の下から「席に座って、35人いるから黙って黙って聞いて、消しゴムいじりでしのいで、6時間がんばって〇をもらうと、お母さんに褒められて、嬉しいね。」と、確認しました。
ソーシャルスキルは、絵・図・数字・文字を描いて話し合う
⑧S君と、絵・図・数字・文字で話し合うことを、お母さんにも勧めています。
お母さんは、「仕事で、お客様に、絵や図を描いて説明するようにしたら、お客様が『電話よりとてもよく分かる』と言ってくれるようになった。」と、絵による説明の効果を教えてくれました。
大人の脳の中と、S君の脳の中を同じにして、分かり合うには、お互いの目に見える、絵や図を脳の外に描き出して話し合う必要があります。
目に見えない音声のやり取りだけでは、お互いの脳の中の考えが同じになったかどうかが、分かりにくいですね。
療育場面で話し合い、自己モニターできたので、2学期に、チャレンジしてみることにしました。
話し合いで描いた実物は、S君が「パパに見せる」と、持って帰ったので、実物を投稿できませんが、それと同じものを描いてあります。
学習内容が難しいことも、S君の授業への参加度を低くします。
S君とやった、小学校3年生の算数「時刻と時間」の学習支援のコツは、次回、投稿します。
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