保護者から、ソーシャルスキルの相談を受けることがあります。
ソーシャルスキルとは、社会という外側に、自分の行動を合わせていく技術です。
外側に合わせてばかりいると、自分を開きすぎて、疲れます。
何かつらい出来事があった時は、閉じて休む必要があります。
程よく離れて休めないと、働きすぎてうつ病を発症したり、身を守ることができなくて、自殺が起きたりします。
社会に合わせるソーシャルスキルを考える時には、閉じて休む「身の守り行動」についても考えておきたいですね。
誰もが適応して暮らしたい
家庭も学校も仕事も、なめらかにうまくいっていて、楽に適応している時は、こんな感じです。
外の世界に合わせられるし、微妙な微細な行動調整ができます。
不適応は、身の守り行動が必要な状態
適応を失った状態では、外側に合わせることが難しくなります。
例えば、教室離脱や暴言暴力、ゲーム依存や非行、うつ病などが起きます。
小学校低学年の子どもさんだと、授業中、席についていられなかったり、教室を出て行ったりする状況です。
家庭では、ゲーム依存になったり、嘘をついたり、暴言を吐いたり、暴力を振るったりするかもしれません。
内向的になり、憂鬱になったり、不登校になったり、引きこもりになったりするかもしれません。
その行動だけを取り上げて、それらを悪い行動だと決め、消去しようとして取り掛かると、育児や教育は、うまくいかないことが多いです。
それらの行動も、その子の一生懸命な調整であり、苦労していることの結果で起きたことです。
マイナスに思える行動の、原因に目を凝らす必要があります。
原因があると考えると、こちらがその子にかける言葉が違ってきます。
「文字がゆがんで見えないの?」
「似ている文字が難しいの?」
「こう書きたいと思っても、指がうまく動かないの?」
「情報が全部聞こえてしまって、先生の話に集中できないの?」
「自分に自信がないの?」
「叱られまいとして嘘をついたの?」
「できることが他になくて、一番できるゲームが、唯一の自信なの?」
原因に目を凝らすと、係わりの糸口が、見えてきます。
行動調整には粗大と微細があります
適応と微細が良い行動で、不適応と粗大が悪い行動と考えるのではなく、両方の間を、微細に微妙に変更できることが、行動調整力です。
自分だけを主語にして話すと、一人の粗大なつぶやきになります。
「ハサミがない」「お腹が空いた」など、自分の状態の叙述の言葉ですね。
コミュニケーションがなめらかな人は、「ハサミを貸して」「ご飯を作って」など相手の行動を意識した依頼の言葉を使うことができます。
保育園でも、「貸して」「(仲間に)入れて」などを教えます。
コミュニケーション力の高い人は、相手が行動しやすいような微妙な言葉を使える人です。
まずは、適応した生活をできている家族が、相手が行動しやすい言葉を使いましょう。
適応調整には閉じることと開くことがあります
誰でも外側に合わせるだけでなく、上手に閉じて休んだりして、暮らしています。
8時間働いて8時間眠る、5日働いて2日休むのは、閉じて休む身の守りの重要性からですね。
長時間労働や休暇のない生活で、外側に開きすぎた時、「会社を辞めます」と突然言うよりは、ひとまず「休暇をください」というのが穏便です。
少し閉じることが自分の身の守り行動、疲れた時の社会適応スキルになります。
休暇をもらって休みましょう。
昼夜逆転のゲーム依存や、家族と食事もしない引きこもりは、粗大な行動です。
つらいなあと思った初めに、㈫㈭㈮登校や午前中登校など、自分が開いていける範囲で開きましょう。
少し閉じて休むと、無理のない開き方をすると、元気が回復するものです。
外側に開きすぎて疲れた時は、ちょっと休んだ方がいいのです。
100%適応を考えないで、50~80%適応を考えます。
保護者の方は、そういう心の準備をして、子どもの一番最初の身の守りの言葉に耳を傾けて、話し合ってみてください。
閉じて休み、確定域で自信を取り戻し、適応を回復する
少し閉じて休む中で、自分に楽に起きること、得意なこと、確定域を思い出しましょう。
外に出たくなかったら、お家の手伝いもいいですね。
家事手伝いは、将来の生活や仕事にも繋がります。
得意なことで起きた行動は、自信に繋がります。
家族や先生は、その子ができること、その子が好きなこと、その子が大切にすることを、認める言葉をかけてください。
「お手伝いありがとう」「助かるよ」「また頼むね」
「それいいね」「何々が得意なんだね」「何々する力があるんだね」
認められると、自信が増え、苦手なことにも踏み出し、適応が増えます。
笑顔が出て、元気が出て、よく眠れて、また外側に合わせていく力が、生まれてきます。
乱暴だった言葉や行動が、穏やかになり、素直になり、家族との会話が増えます。
穏やか、素直、家族との会話、それこそ適応した生活ですね。
梅津八三の心理学的行動調整法
行動調整法の心理学者 梅津八三は「自己調整」と「相互調整」という、2つを述べました。
他の言葉で言い換えると「自律」と「他律」です。
あるいは「自律的行動」と「社会的行動」とも、言い換えられます。
具体的に言うと「自分を閉じて休む身の守り行動」と「自分を開いて外の世界に合わせていく社会的適応行動」です。
2つの対極については、他にも、「自分の快感の保障」と「社会適応するための忍耐力」と、言えるかもしれません。
子どもさんやご家族に何かあった時、この図を思い出してみてください。
この図を描いて、社会適応と身の守り行動はどちらも大事ということを、話し合いましょう。
微細な調整に進めるように手伝うよ、ということを伝えましょう。
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