自閉スペクトラム症の子どもと行事参加や登校について話し合う方法

コロナ禍ではありますが、修学旅行が近づいて、不登校のU君と、修学旅行にどんな風に参加するか、話し合うことになりました。

U君は、おとなしく穏やかな人で、周囲の勧めを拒否することができず、「はい」と何でも受け入れてしまい、受け入れてから苦しくなって、二次障害が起きた中学生です。

U君の二次障害は、ないものが見える幻視、起きていないことを考えてしまう妄想、何度も何度も同じことをお母さんに繰り返し確認する行動、などがあります。

学校で自分の意見を言えない、周りに合わせることに疲れてしまったU君は、不登校でお家で過ごすことで、自分の快適さを守って、二次障害が減ってきました。

U君の初発を否定しないことが、二次障害を防ぐことだと、お母さんと話し合っています。

自閉スペクトラム症の3つのタイプ

自閉スペクトラム症には、受動型、孤立型、積極奇異型の3つのタイプがあります。

反対意見を言えずに何でも人の言うことを聞いてしまうタイプと、人嫌いで人を寄せ付けないタイプと、誰にでも積極的に関わっていくおせっかいなタイプと、我々を3つのタイプに分けるのと同じ分類ですね。

3つのタイプとも、それぞれに長所と短所があります。

自閉スペクトラム症受動型

自閉スペクトラム症の受動型の子どもさんと、付き合う時に気を付けるのは、本人の最初の意見を尊重するということです。

初発を否定しない、ということですね。

強い主張や強い拒否をしないので、何でも外側に合わせて、自分を押し殺してしまいがちです。

こだわりが強く、自閉度が強い子どもさんの、内向的な我慢が続くと、そのストレスから強迫性障害などが起きやすくなります。

U君との付き合いは、わずかまだ3回なのですが、毎回、「嫌な時は嫌だって、言っていいんだよ」と、拒否と自分の意見の表出を勧めています。

今回は、修学旅行についての話になりました。

慣れた場所から慣れない場所への移行は部分参加で良い

私が「修学旅行は〇〇だけど、U君は行ってみたいですか?」と、日本地図を大雑把に描きました。

U君は、1~2秒考えてから、「まだ行ったことがないから、行ってみたいかなぁ」と言って、お母さんの方を見ました。

「日帰りなので、私も一緒に行きます。」と、お母さんも大賛成です。

U君の初発の気持ちにしっかりと同意することが、U君の不安を取り去り、U君の考えに自信を持たせます。

私が新幹線の絵を描くと、U君も旅行のイメージが具体的になってきたようでした。

U君と話す時、お母さんはいつも、スケッチブックに絵や文字を書きます。

私もそれを真似て、U君とお母さんと話す時は、いつも紙に絵や文字を書いて話し合います。

絵や文字を書いたり見たりすると、消えてしまう音声の言葉よりも、ずっとゆっくりU君が考えられます。

学校の先生やデイサービスの先生にも、そうしてもらえたらU君と話が通じやすいです。

修学旅行については、お母さんが学校から、①旅行の行程表の冊子をもらい、➁新幹線の座席表をもらい、③一緒に行動するグループを教えてもらい、④当日の集合時間に二人で早起きして間に合うと良さそうです。

万が一、朝、間に合わない時は、先生の携帯に連絡し、費用は掛かりますが、次の新幹線で行くのでもいいですね。

また、旅行の行程が始まってからも、U君の体調が悪くなったり、疲れたりして、先に帰りたくなれば、先生に伝えて、お母さんと一緒に新幹線で、みんなより先に帰ってくるのもありだと思います。

全行程の参加が無理でも、部分参加のチャレンジをできますね。

学校の修学旅行に、親子旅行で合同参加する、くらいの気持ちで行くのが良いと思いました。

お母さんという通訳

U君は、お母さんがそばにいると、安心して登校や旅行の参加ができます。

お母さんは、U君にとって、U君の気持ちを周囲に伝えてくれる通訳です。

家庭で安心して過ごせる、家庭以外の場所に出かける時は、お母さんが通訳として一緒に出かけてくれる、U君はそれで強迫性障害が起きないで過ごせています。

しかし、24時間U君と一緒にいるお母さんは、自分の時間がなくて大変です。

学校でも、デイサービスでもいい、U君が2~3時間過ごせると、お母さんも1時間くらいほっとする時間ができます。

家庭という確定域から学校へ踏み出します

30分でも1時間でもいい、U君が家庭以外の場所で安心して一人で過ごせるには、U君の好きなこと・大切なものがポイントになります。

U君の好きなことで学習活動を展開する

U君には、好きなこと、大切なものがあります。

サンリオピューロランド、キャラクターのマイメロディやシナモン、レゴが好きで、U君の確定域です。

私がお母さんと話しているのを待つ間、マイメロディやシナモンの絵を、あっという間にたくさん、とても上手に描きます。

そこでまずは学校でもデイサービスでも、マイメロディやシナモンの絵を描いて過ごせるといいと思いました。

その描いた絵に、塗り絵をすれば、さらに時間を過ごせます。

その絵の下に、誰が何をしている絵か、U君に文章をつけてもらえば、国語の学習になります。

「右の絵はみるくとモカがティータイムを楽しんでいる」

下のシナモンの塗り絵には、花の名前、チューリップ「Tulip」ガーベラ「Gerbera」など、英単語も書いてあるので、英語の勉強にもなります。

U君の好きなキャラクター名を、ローマ字や英語で書くこともやれそうです。

シナモンのぬいぐるみの値段などの文章題を、先生がその場でホワイトボードに作れば、数学の勉強になります。

サンリオピューロランドまでの往復について、JR・車の行程をパソコンで調べたり、絵にしたりすれば、地理美術の勉強になります。

そんなふうに、U君の得意な事象で学習を始めれば、場所と学習がU君の確定域になります。

お母さんと一緒にいる安心の時間帯に、それらの学習を始め、U君が楽しく安心したところで、「こんなのもやってみる?」と、先生の狙っている問題集やプリントを出すのはどうでしょうか?

学校の一室がU君の確定域になれば、お母さんが1時間くらい自宅に帰る時間も、U君と相談できるようになると想像します。

拒否できる選択肢も、文字で、決めておけるといいですね。

「15分休みたい、これは分からない、これはできない、シナモンを描きたい、家に帰りたい、お母さんに電話してください、お昼は家で食べたい、etc」などです。

登校について話し合う

U君に「始業式に学校に行けるかどうか?」聞いたところ、「5時間目に行けるかな」と答えてくれました。

朝から行かんかい!と思わないで、「うん、そうだね。5時間目に夏休みの宿題を提出してこようね。」と私も答えました。

登校を嫌がらずに、行く気になっているというところが、素晴らしいスタートだと思います。

お母さんの努力で、お母さんと過ごした楽しい夏休みの効果が、U君の穏やかな態度と、気持ちを言葉にできたことに、表われていました。

修学旅行の後、学校でどのように過ごすかのお願い文①➁➂を、お母さんに持って行ってもらいました。

①学校で安心できる居場所を用意してもらう。➡そこから教室にもチャレンジする。

➁お母さんという通訳の同行を許可してもらう。➡一人の時間も作っていく。

➂U君の好きなことで学習活動を展開する。➡先生からの課題にもチャレンジする。

U君のシナモロールやレゴなどの確定域を大切にしながら、U君と様々なことを話し合いたいと考えています。

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