共感
一人一人の考え方や生き方が大切にされ、多様性ということが認められるようになった。
私もそれに賛成である。
私は普段、世界が二つあると思っている。
自分の世界と、自分以外の他者の世界だ。
自分の価値観と、自分以外の他者の価値観でもある。
認知症の症状のまだない私と、認知症のヤエさんの、二つの世界があると思っている。
世話する私と、世話される猫の、二つの世界があると思っている。
自分の考えることが正しいと思えないと生きていけないから、私は自分の考えで行動する。
同様に、認知症のヤエさんの考えと行動や、猫の考えと行動も 、ヤエさんにとって、猫にとって、それぞれ正しい考えと行動なのだ。
お互いに譲り合え、適応し合えている時はいいが、自分だけが正しく、相手の行動が困ったものに思えた時はつらい。
まずは相手の世界のどこかに、共感できることはないかと、探してみる。
共感が、理解するということだ。
物理的な工夫
次に、二つの世界の、どこかが重なり合わないかと、あれこれ工夫をしてみる。
歩み寄りとは、重なる部分を工夫することだ。
共感し、物理的に工夫する、そうやってヤエさんと暮らし、猫と暮らしてきた。
これは私が関わる障害児教育でも、臨床発達心理でも同じだ。
相手に共感し、簡単なわかりやすいちょっとした道具の工夫を、提案してみる。
お互いに重なり合わなかった世界が、ちょっと重なると、とても嬉しい。
認知症のヤエさんや、猫の花ちゃんに、工夫を求めることは難しい。
二つの世界が重なり合う工夫をする側とは、そのことについてたくさん考える我々の側だ。
医師・看護師・ケースワーカー・ケアマネージャー・介護福祉士などの専門家、介護の経験者に、アドバイスを求めることもできる。
インターネットにも、様々な情報が書かれている。
原因は節電行動
例えば、ヤエさんがストーブのスイッチを切ったり、エアコンのコードを抜いたりする理由が、電気の節約だったとわかった時、私の困った気持ちがなくなった。
ヤエさんが考えている価値観を私もわかって、「なんだそうだったのか」と笑えた。
どうしてそうするのかが分からない時、つらい気がする。
ヤエさんの節電の気持ちに共感できた時、ありがたいけれど、どうしたらそうしないでもらえるか、対策を工夫した。
それがコードやコンセントや時刻表示をボール紙で覆い隠し、文字を書いて頼んだ工夫だった。
幸いヤエさんに、私の工夫に応えてくれる力があって、困りごとは減り、とても助かった。
原因は肛門嚢炎
猫の花ちゃんは、我が家に来てからの1年間、排泄後はジュウタンでお尻を拭いていた。
花ちゃんのこの行動は、偶然テレビで知った猫の肛門嚢炎かもしれないと、疑って受診した。
動物病院の処方薬を飲んでいるこの一週間、毎朝排便はきちんとあるものの、花ちゃんはジュウタンでお尻を拭かない。
我々がトイレットペーパーで拭くように、花ちゃんはジュウタンで拭くのかと、私はこの1年そう理解していた。
そうだったのか、実は肛門嚢炎でお尻がむず痒く、痛痒く、ジュウタンでお尻を拭きたかったんだなぁと、今は分かる。
花ちゃんの、ジュウタンお尻拭きを一度も叱ったことはないが、花ちゃんの行動を SOS と見ないで、1年間放っておいたことは、済まなかったなぁと思う。
テレビの情報と、蚊に刺されたかゆみがきっかけで、動物病院を受診し服薬したら、花ちゃんの肛門嚢炎も軽くなり、アレルギー性皮膚炎も軽快してホッとした。
二つの世界
猫の花ちゃんの世界と世話する私の世界、二つの世界があって、花ちゃんの行動理由が分かった時、対応を変えることで二つの世界が重なる時が嬉しい。
認知症のヤエさんの世界と介護する私の世界、二つの世界があって、相手に共感して困った行動を理解できた時、道具の工夫で二つの世界が重なった時が嬉しい。
ヤエさんの介護も、猫の花ちゃんとの暮らしも、共感と道具の工夫で成り立っている。
ヤエさんと私の世界、花ちゃんと私の世界、 「あーそうなんだ」と、二つの別の世界が重なる時、一緒にいて良かったなぁと、ニヤニヤする。
多様な世界での、小さな喜びだ。
「Yae-san’s care idea story breaks
to be continued special educational materials」
次の投稿からは、子どもの行動理解のための心理学の紹介や、言葉や数の教材についての小さな工夫を少しずつ紹介していきたい。
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