朝から元気よく遊ぶ保育園文化を終了して、朝から落ち着いて座って学習する学校文化へ、移行することが難しい子どもさんがいます。
その子どもさんの保育園も、私は参観していました。
小学校で授業参観させてもらい、その子の様子をよく見ると、保育園の時と同じように振る舞っています。
学校で「このように振る舞ってください」と言う、先生からの情報を5月になっても取り込めていません。
授業力・指導力のある担任の先生と、付いてくれる支援員さんのおかげで、学級はとても落ち着いていて静かです。
他の子どもたちは学校文化に慣れましたが、その子どもさんだけが文化の違いに気付けないでいます。
例えば、以下のような様子でした。
①何かを思いつくと、保育園の時と同じに、授業中も自由に喋ります。
ウィーン少年合唱団の子どものような、ボーイソプラノの美声が教室に響き渡ります。
思いついても、頭の中にしまっておくことが難しそうでした。
頭の中にしまっておくルールを、消えない指示で、確認する必要があります。
➁友達の様子が見たいと、授業中も席を離れます。
友達はその子に話しかけられて、先生の指示を聞き逃します。
先生に自分の作品を見せたいと、先生めがけて席を離れます。
先生の全体への問いかけに対して、自分が分かると黒板まで走って行って解答を書きます。
自分と友達、自分と先生、のピンポイントの「一対一の関係」に留まっています。
教室の仲間全体と先生、という「1対多の関係」がまだ難しい様子です。
「1対多」のために、「座っている・黙っている・待つ」必要があることを、脳外に見せるルールで、確認したいと思いました。
③水道の順番を待つために並んでいたが、いったんその場を離れてしまったから、他の子に水道を使われる事件がありました。
自分がその場を離れたことは思い出せずに、「順番を抜かした」と言って、水道栓を固く締める意地悪をしました。
パブリックルールが、事実誤認のマイルールになります。
友達の気持ち、相手の気持ちが見えません。
この時は、私がタイムアウトを使いました。
私が壁際まで連れて行って、壁を向かせ、「水道を離れたから順番を抜けたね」「水道栓を閉められたら嫌だね」「嫌なことはしません」と後ろ向きの子どもに声をかけました。
私の顔を3回振り返りましたが、壁を向かせて1分間、私が背後に立っていました。
情報のないところで言って聞かせないと、目に入った情報が邪魔をして、私の言葉が届かないので、タイムアウトを使いました。
落ち着いたら、後で状況を絵で再現し、このことを確認すべきだと思います。
以上の、①だまる➁すわる③相手の気持ち、などの教室ルールを、インターネットからプリントアウトしました。
全体の場面で担任の先生が使ったり、そばについてくれる支援員の先生が使ったりする、ルールの教材をペープサートやカードにしようと思いました。
全体の場面で使える教室ルールのペープサート
教室に持ち込んで使うときは、まずは、できている場面から使い始めます。
「黙って考えているね」「黙って勉強できているね」「黙って給食を食べているね」と、児童ができているときにペープサートを見せます。
できている時に数回使って、「教室ルールだね」と相互に確認できてから、できていない状態の時にも使って、教室ルールを促すようにします。
セリアやダイソーの「デコうちわブラック」と、ダイソーの「〇✖プレート」を使います。
個別学習で使える学校文化のルールパズル
Toss のソーシャルスキルかるたで、学校文化のスキルをパズルにしてみました。
ぎょうせい発行の教科書「日本語を学ぼう」48~49ページの「15そうじ」をコピーして、掃除の全体順序をパズルにしてみました。
運動感覚を満たすことは好きなので、「パズルをしたい」と本人は言ってくれます。
昼休みに10分間、私と個別で、上記2つのソーシャルスキルパズルをやりました。
私に「パズルをしたい。明日も来る?」と聞いてきました。
私が「6月だよ」と返事をすると、「6月の1日(いちの日)に来て」と言いました。
パズル学習や、個別学習は好きな様子です。
担任の先生の希望があれば、支援員さんとできたねマグネットホワイトボードで確認したり、〇付け評価で確認したりするプリント教材も、作成したいと考えています。
例えば、セリアのやることすることマグネットを使って、15cm位の小さいホワイトボードに、「座る」「黙る」「相手の気持ち」の3項目くらいにスキルを絞って、できた!とマグネットで振り返る・認めていく教材を考えています。
ルールを守れたら、裏返すと、「できた!」・「がんばったね」などになります。
ダイソーの名刺カードに印刷すれば、本人の筆箱や支援員さんのポケットにも、ルール、入れておけます。
目に見える絵カードが、ブレーキの役目になると良いです。
どんな環境調整を用意したら、その子どもさんが保育園文化と学校文化の違いに気づいてくれるのか、担任の先生と相談しながらチャレンジして、お互いの調整を今後も紹介したいと思います。
保育園文化の延長線上の学校教育 広島県の小学校の例
NHK BS 1で「セルフドキュメンタリー“不登校がやってきた”」という番組の再放送を見た。
「セルフドキュメンタリー“不登校がやってきた”」 – BS1スペシャル – NHK
これまでの整然とした学校教育の教室ルールでなく、子どもは仲間と会話しながら学習していく、という姿を大切にした、広島県の小学校教育だった。
広島県の教育委員会が、保育から教育のあり方を学んだ結果、開校したのだという。
保育園の保育やフリースクールの教育に近い、環境提供に思えた。
子ども同士の会話、選択的な参加、子どもの創造性、子ども自身の学び方、が大事にされていた。
これまでの整然とした学校教育の教室ルールが、苦手なお子さんにとっては、この方が合っている小学校文化に思える。
これまでは、子どもを小学校文化に合わせようとしていたが、広島県では学校教育の方が子どもに合わせる小学校文化が生まれたと、この番組を見て思った。
長野県の伊那小学校も、素晴らしい実践をしている。
猫ちゃんブログへのコメント