保育園での多動な行動にどう対応するか

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教育仮設33-1 まずは本人の気持ちの側で理解する

子どもは、できることをする。

歩けるようになると歩きたがり、走れるようになると走りたがる。

小児科に療育に来ているL君は 、3歳で出会った時は、歩きたがらなかった。

どこへ移動して、何をするのかが分からないので、アンパンマンのパズルを見せて「あっちでやろう」と誘っても、歩かないで、両手をお母さんに伸ばし、いつもお母さんに抱っこされたがった。

3ヶ月経つと、お母さんの後ろに張り付いて、人見知りをした。

お母さんにお願いして、はじめを抱っこしてやり、途中でそれとなく降ろして、手を引いて一緒に歩かせる。 

行動の初めは、抱っこされたい子どもの気持ちに沿い、抱っこで大人の移動が起きたところで、途中からこちらの目的の一人歩きに合わせてもらう。

散歩に行きたがらないときも、同様にする。

6ヶ月経つと、ベビーブックやアンパンマンのパズル片を見せれば、お母さんの洋服につかまりながら、不安な顔で、なんとかついて歩くようになった。

9ヶ月経つと、歩き方がしっかりして、お母さんと一緒に手をつないで歩いて、診察室まで来るようになった。

3歳10ヶ月の今では、「L君行こう」と言うと、診察室の場所がわかり、一番先頭で、一人で片足スキップで、部屋まで走って行く。

子どもは、いつも、自分が楽にできることをやりたがる。

そうだとすれば、周囲に不釣り合いでも、子どもの多動を責められない。

多動な子どもは、ヒートアップは起きやすいが、クールダウンの起きにくい子どもたちだ。

走りたいんだな、エネルギーが余っているんだな、元気なんだな、体力使いたいんだな、と思ってやることが一番だ。

多動で困る、というのは我々の側の感覚だ。

走り回る本人にしてみたら、走りたいのだ。

「どうしてみんなは走らないの?」「どうして静かにできるんだ?」という感じだと思う。

彼自身になって、彼の内側から世界を見ることが、子どもの行動理解だ。

梅津八三は、それを現勢の保障といった。

彼の今の勢いを、大事にするということだ。

本人の気持ちの側で、行動を理解するということが、育児・保育・教育の出発点だ。

教育仮設33-2 全面禁止でなく、彼の勢いに乗っかって、スピードを緩める

100の勢いで走っている行動を、ゼロにして止まれ、というのはなかなか難しい。

我々の車の運転でも、100キロ出していて、急ブレーキで0にすることは、難しいのと同じである。

100の勢いで走っている行動を、全部取り上げたら、彼は何をしたらいいのかがわからなくなり、荒れて、他の子に八つ当たりするかもしれない。

粗い、激しい、雑な、彼の力いっぱいの100の行動を、50にスピードダウンしてもらうことが、起きやすい調整なのではないかと思う。

動きたいだけで、無目的で走っている100の勢いを、スピードダウンするには、わかりやすい模倣で、起きやすいイメージを与えることだ。

保育室や廊下を、走ってはいけない規則になっているのであれば、1日に1種類、以下の声をかける。

「かかとをつけて歩く競争できるかな?」、「スローモーションできるかな?」、「音を立てない忍者歩きできるかな?」、「ちょこちょこ歩くありさんの歩きできるかな?」「ダンゴムシになって丸まって休めるかな?」など。

「できるかな?」と聞くと、子どもは「僕はできるもん」という気持ちになる。

先生の依頼を忘れてしまうということがあるので、億劫がらずに毎回声をかける。

梅津八三のいう、共感と同行だ。

教育仮設33-3 行動禁止でなく、新しい行動形成の言葉かけ

100のスピードの走りが起きてしまって、真っ最中や事後に声をかけるよりは、登園した時すぐに、朝の会の最後に、「予告」することが最も良い。

園庭では走ってよい。お部屋の中に入ったら、『かかとをつけて歩く』『スローモーションで歩く』『音を立てない忍者で歩く」『ありさんで歩いてください』

日替わりで1種類、スピードダウンの歩き方を予告・依頼すると良い。

園庭から中に入る時も、改めて、中ではどう行動するか、具体的に予告する。

予告のときも、行動が起きてしまってから依頼するときも、言葉だけでなく、身振りを付けて演じてみせることが重要だ。

多動な子どもは、言葉だけで脳内イメージを持ちにくい子どもたちなので、必ず身振りで、目からの情報を与える。

朝の会のその場で、スピードダウンの動きを、真似してもらうことも重要だ。

悪い行動を禁止するという考えでなく、良い行動を形成するという考えで、声をかける。

「走らない」、「叩かない」、「投げない」、「邪魔しない」、「意地悪しない」、「横入りしない」という、否定の禁止語ではなく、

「かかとをつけて歩こう」、 「指でトントンと触ろう」、「目を見て渡そう」、「背中を見て待っていよう」、「交代で使って仲良くしよう」、「順番を待てるよ」、という声かけだ。

大場美鈴さんの「声かけ変換表」に、肯定的な声かけがある。

肯定的な言葉かけの方法

教育仮設33-4 填め板やパズルで良い行動を刷り込む

多動な子どもは、手を使う操作が好きだ。

感覚運動を満たす、填め板やパズルが好きだ。

その得意な領域を利用して、ソーシャルスキルを刷り込む。

楽しい時に、良い行動を言って聞かせる。

マイナスな行動が起きてしまった時に、ガミガミと説教しても、刷り込むことは難しい。

叱られると、目が合わず、上の空で、聞いてないという状況になる。

ソーシャルスキルトレーニング填め板➡SSTパズル➡SST絵カードを使って、手の感覚運動と目からの視覚情報で、イメージと言葉を一致させる。

個別の絆作り、絵や文字の学習にもなる。

子どもの側に説明させたり、子どもの側に身振りをさせたりしてみよう。

感覚運動が満たせる、落ち着いている填め板やパズル場面では、スキルを言える子どもが多い。

社会的判断力はあるのだが、あそびの現場に行くと忘れて、多動になってしまうのだ。

判断力と現場の乖離を埋めていくためには、現場での声かけと、填め板やパズルでの学習、の両輪が必要だ。

教育仮設33-5 現勢の保障、共感と同行、得意な領域の拡大、によって新しい行動は起きる

子どもの、走りたいという今の勢いに乗っかって、スピードダウンの新しい調整を形成したい。

填め板やパズルという、子どもの得意な領域も、ソーシャルスキルトレーニングに利用したい。

保育士の先生方の声かけを家庭にも連絡し、家庭でスーパーやホームセンターに出かけた時に、同じように声かけをしてもらおう。

100のスピードを0にする無理よりも、100のスピードを50にする調整が、まずできたら素晴らしい。

多動な子どもには、物理的な環境として、小中学校の体育館のような、広い走れる場所が必要である。

それが園庭だと思えば、園庭でサーキットトレーニングのような運動をすると良い。

園庭のトラック線引きコースの周囲を、5周走ってお部屋に入るだけでなく、

園庭の外周に沿って、鉄棒で前回りをし、登り棒を登れるだけ上り、砂場でプリン型を一つ抜いて、ブランコに10回乗り、滑り台を2回滑り、小山の頂上に登って「やったあー」と叫び、 かかとをつけて競歩で下駄箱へ向かう、下駄箱へ靴をしまった人から、先生とじゃんけんをして水道で手を洗う、(トイレが済んで、お弁当の用意ができたら、机で折り紙をして待つ。)

というようなトレーニングを、毎朝、園庭遊びの最後にやって、お部屋に入るのはどうだろうか。

その時先生は、一番気になっている子ども、一番多動を抑えたい子どもにぴったりついて、認める声をかけ、うまくいくように手伝う、個別の係わりを心がける、と理想的だ。

運動が遅い子どももいると思うので、「乱暴に急ぐよりは、一つ一つを丁寧に、ゆっくりと楽しむのがかっこいい」と、全員に言って聞かせよう。 

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