同行すればプールでの歩行運動もできた
ヤエさんは骨粗鬆症の後、78歳から85歳くらいまで、温水プールでの歩行に毎週1回通った。
認知症が発症した83歳から85歳は、私がプール内も同行して一緒に歩いた。
プールでの歩行は、散歩の3倍ぐらい運動負荷がかかると言われ、運動に最適と言われている。
85歳から、杖なしでは歩行が危なくなり、温水プールでの歩行は卒業した。
高齢者の入浴は運動と同じ効果がある
高齢者にとって入浴は、運動と同じくらい血液循環をよくする。
心臓が悪い方は、浴槽での入浴が好きではないかもしれない。
半身浴が良いと言われる理由は、心臓に負担が少ないからだ。
プールでの歩行運動は失ったが、ヤエさんは82歳から97歳まで自宅のジェットバスで、毎晩私と入浴した。
ジェットバスは、一般の浴槽入浴より、 ヤエさんの血液循環をよくしてくれた。
ジェットバス入浴で冷たい足が温まり、深部体温も上がり、ヤエさんに質の良い睡眠がもたらされた。
96歳から97歳、要介護4の2年間は、デイサービスで週3回入浴させてくれた。
私も97歳まで、土日祭日には自宅のジェットバスへ、ヤエさんを抱いて入れた 。
98歳要介護5、車椅子とベッドの生活になってからも、デイサービスでは、毎日身体の清拭をしてくれた。
本当にありがたかった。
浴室内の手すりは途切れないことが重要
我が家のお風呂は、TOTOの一般的なユニットバスだ。
ヤエさん82歳、浴室設置の初めから、浴槽はジェットバスである。
浴室の壁に初めからある手すりは、出入り口付近に一つ、浴槽の壁に一つだった。
95歳、要介護4、ヤエさんの歩行と認知が困難になった時、浴室の手すりが途切れていることに私は初めて気が付いた。
デイサービスの浴室を見学させてもらったら、デイサービスの浴室は長い手すりが洗い場から浴槽まで続いていた。
手すりは、ベッドからトイレまでの生活場面でも必需品だった。
特に浴室では、手すりが途切れないことが重要だ。
浴室の入り口から入り、ヤエさんが浴室壁の手すりにつかまる。
今までの習慣で、シャワーのある壁の鏡に向いて座ろうとすると、入り口の手すりから鏡まで、移動する2mの間に手すりがなかった。
浴槽に入りやすいシャワー椅子の工夫
94歳まで、ヤエさんは浴室の洗い場で鏡に向かってシャワー椅子に座り、身体を洗わせてくれた。
94歳までは、浴槽内の座面に腰掛けるために、シャワー椅子から180度身体を回して、浴槽に入ることができた。
95歳から、つかまる手が弱くなり、立っている足がおぼつかなくなり、身体の向きを変える段取りができなくなった。
シャワー椅子から、浴槽に入るための、180度の身体の方向転換ができない。
浴槽のふちにつかまって180度身体の向きを変えることは難しく、壁や浴槽ふちに手すりがないと、浴槽に入れなくなった。
手すりも片手側だけでなく、両手にないと足をあげられなかった。
股関節の可動も悪くなり、浴槽の縁をまたぐことが大変だった。
シャワー椅子の背中につかまってもらったが、椅子は軽くて動くので、ヤエさんは怖そうだった。
シャワー椅子に座ったまま、身体の向きを変え、足を浴槽に入れて、浴槽に入るといいと思った。
浴槽に入る時、カットしたお風呂マットを回転させて足を入れた。
浴槽から出るときも、腰掛けたらお風呂マットを回転させた。
意味が分からないのでヤエさんは怖がった。
シャワー椅子の向きや、浴槽へ移乗するための椅子の種類を、様々に工夫した。
背もたれのない椅子は、身体は回転させやすいが、ヤエさんには怖かった。
認知症でなければ、工夫された椅子を使いこなせるが、95歳要介護4のヤエさんにはもう、椅子の使い方の理解や、私の説得が難しかった。
工夫された椅子も、認知症当事者の理解や動きが、楽なうちから使っておかないと、必要な時に役立たない。
矢崎化工 ヤザキ シャワーいす ターンテーブルタイプ
矢崎化工の回転椅子は、介護保険制度の購入支援で、4万円の1割負担の4000円で購入できた。
浴槽から出る時は後ろ向きになるのが難しい。
縁の分だけ、腰の掛けかたが遠くなる。
悩んだ末に、回転椅子の背中は L 字のものを購入したが、実際に浴室で使ってみると L 字はヤエさんの肘にあたって使いにくかった。
椅子の背中に、1つパイプがあるだけでよかった 。
使ってみないとわからない道具はたくさんあり、それが高価なのでとても困る。
おすすめはレンタルで1か月使ってみて、よかったら購入するといい。
デイサービスの浴室を見せてもらったり、デイサービスに出入りしている福祉用具担当者に相談したり、レンタル見本を1日、借りたりすると良い。
浴槽滑り止めマット
浴槽の中には、滑り止めのマットをAmazonで購入して敷いた。
2000円くらいで 買えるが、安い中国製だと、ビニールがすごく臭いことがあった。
デイサービスで実物を見せてもらったり、福祉用具のカタログを先に見るとよい。
ニトリのバス用品コーナーで、白地に薄い模様の上品な浴槽滑り止めマットを見つけた。
ほしい滑り止めマットが決まったら、ニトリ店舗でもニトリネットでも購入できる。
実店舗ならば、ビニールの匂いも分かる。
福祉用具の担当者さんも、1~2割引きで販売してくれる。
浴槽までの手すりの動線が大事
96歳、要介護4、浴室でヤエさんを鏡の前に座らせてシャワーで洗う、というこれまでの習慣を私は諦めた。
鏡はないが、導線が途切れないで浴槽に入れるように、ヤエさんを入り口からすぐの手すりにつかまらせた。
立ったままヤエさんの身体を洗った。
そして浴槽へ入れることを考えた。
出入り口の手すりと、浴槽壁の手すりは1 m 以上離れている。
やえさんには届かない。
かがんで浴槽のふちにつかまって入ることが難しくなったので、立ったまま手すり伝いに進めば浴槽に入りやすいか、と考えた。
直径4cm の水道ホースの手すり
足も前方へ上げるより、手すりにつかまって後ろへ上げるほうが、ヤエさんの股関節が楽そうだった。
ホームセンターで浴室手すりをのぞいたが、素人の私が取り付けられる自信がなかった。
介護保険制度や大工さんを依頼する、時間と心の余裕がなかった。
工事なしに、緊急に手すりと手すりをつなぐことばかり考えて、すぐにホームセンターに太いホースを買いに走った。
1m1000円くらいの工業用の一番太い水道ホースを2m買って、手すりと手すりの間に丈夫な紐で縛り付けた。
少したわんで揺れるので、足元がおぼつかないヤエさんは怖がった。
ユニットバスに手すりの後付けができる
極太ホース手すりを、半年ほど使ったが、いよいよホースでは危険だとわかって、97歳の最後の方になってから、TOTOさんに手すりの後付けをしてもらった。
ユニットバスに、後付けで手すりをつけてもらえることを、私は知らなかった。
ケアマネさんにも教えてもらえなかった。
本人が生活するベッド周り、お風呂など、早い段階でケアマネさんに見てもらい、アドバイスがもらえると良い。
シャワー椅子を工夫したり、ホースなんかつけたりしていないで、初めから浴室後付け手すりを付けてやればよかった。
2年遠回りして、やっと浴室手すりを壁に後付けしたが、遅かった。
介護の真っ最中は、ネットで調べる時間もアイデアもままならない。
ケアマネさんからの、情報が必要だ。
室内壁の手すりのほとんどは、ホームセンターで購入して私が自分で取り付けたものだ。
これも本当であれば、介護保険制度の住宅改修が使える。
ゆっくり準備ができる方は、制度を使った方が1割負担で済む。
自治体の指定業者に、取り付けてもらう必要がある。
自治体に申し込んで、業者が見積書と取り付け前の写真を撮って申請書類を提出し、申請が許可されたら、工事を実施する。
取り付け完成後の写真を撮って、金額を請求し、後払いとなる。
何度も書くが、本当に必要になった時は、認知症が重くて、本人は使いこなせない。
健康で楽に使えるうちから、慣れておくということが非常に重要だ。
「まだ要らない」なんて思わずに、「介護が危険だから」ということでレンタルしたり、介護保険制度で購入した方が良い。
介護保険制度でレンタルできる品目と購入できる品目は、介護認定の最初にもらうパンフレットに書かれている。
97歳の年末、浴槽手すりをつけてもらう行動が、漸く私に起きた。
手すりの値段が¥4000~¥20000で、作業代が¥8000くらい、計12000~28000円。
住宅改修や福祉用具購入制度で取り付けると良い。
認知症が発症した最初に、玄関手すりを付けたころに、ヤエさんが楽に入浴できているうちに、浴室手すりも整備するべきだった。
やはり連続した手すりが良い。
緊急だったので介護保険を使わなかったが、後付け手すりも手順を踏めば、住宅改修として介護保険制度が使える。
TOTOさんが後付けしてくれた手すりは、2万円だったので介護保険制度を使えば、2000円の負担で済む。
浴室内での移動に困っている方がいれば、早めに住宅改修制度利用や手すりの後付けをお勧めする。
今思えば、認知症になったらすぐに、お風呂の動線の手すりを整えておくべきであった。
手すりが途切れたら、浴槽には自力で入れない。
認知症と診断されたら、最後まで在宅介護をするつもりなら、、早めにお風呂の手すりの動線を見直すと良い。
我が家は最後まで使わなかったが、もちろん訪問入浴の制度もあるのでそれを利用されることもお勧めする。
訪問介護や訪問診療も、できるだけ認知の良いうちから利用した方が、認知症の当事者も慣れやすい。
入浴は運動と同様に、高齢者の身体運動や認知機能維持に良い。
在宅介護でも、デイサービスでも、世話をする介護者にとって、入浴は重労働だ。
自分が後で、一人でゆっくり浴槽に浸かる気力もない。
いっしょに入って、疲れて、もう寝よう!てな感じ。
(ゆっくり入浴できなかった私は、介護の終盤に左手首の腱鞘炎が起き、介護が終わった翌年には左の肩甲骨周囲の痛みが激しく、ついに左肩の腱板断裂が起きた。)
せめて物理的な工夫が、最低限必要である。
15年の在宅介護を終えてみて、そう思う。
猫ちゃんブログへのコメント