過剰なストレスで幻視を訴えたダウン症の青年の身の守り行動

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ダウン症のまさや君との出会い

まさや君は、現在、25歳のダウン症の青年だ。

病院の小児科で、1997年に深澤尚伊医師から、1歳半のまさや君を紹介され、まさや君の発達相談に26年係わっている。

深澤医師は「ダウン症の子どもを育てるのは、3つ子の子どもを育てるよりも大変な苦労で、お母さんの努力は並大抵のことじゃないよ」と、お母さんの心を支える言葉の言える、誰からも尊敬される医師だった。

2020年9月 68歳で亡くなられた

幼児期から高等部まで

1歳半のまさや君との係わりの初めは、「ボールを容器に入れる」という課題を出した。

まさや君は、ボールを穴に入れる微調整を断って、ボールを容器以外の室内へ、繰り返し粗大に投げた。

子どもは、できることをする。

ボールを、持てる。

すると、ボールを、投げる。

入れる場所や方向が、限定されない方がやさしい。

しかし、工夫するにしたがって、ボールを穴に入れてくれるようになり、公文のくるくるチャイムなども楽しんだ。

立体的なボールから、平面的な填め板へと進み、文字や数字も学習した。

幼児期は、活発で、頭のいい、「アオ(青)、オン(本)」などの母音の音声もある、元気な男の子だった。

特別支援学校の小学部に入る頃には、算数ブロックで足し算・引き算も、学習できるようになった。

ミニカーのトミカが大好きな、男の子だった。

小学部の頃は、普通の声で元気よく話す子だった。

2011年、高等部入学まで、毎月1回学習した。

8+4= 「8」を頭に入れて左手の4から、1ずつ追い足し算で「9・10・11・12」

「怖い人が見える」幻視の訴え

特別支援学校の高等部を卒業したまさや君は、運動の集いへの参加、作業所への就職、年金の受給と、ご両親の努力で順調に、社会適応して暮らしていた。

5年のブランクはあったが、20歳のまさや君と、再び係わるチャンスに恵まれた。

そのきっかけは、まさや君が「怖い人が見える」と、恐怖を訴えるようになって、お母さんの判断で、病院の心理相談に再来したのだった。

まさや君はこれまで、ご両親の愛情に応えて、外の世界にひたすら合わせて来た人だった。

ご両親も、他の人の真似のできない愛情を、まさや君に細やかに注いで来た。

ある時、成人のスポーツ教室で、他の保護者から「まさや君は物がよく分かり、色々とよくできる人だから、さらに色々とできるように、甘やかさないで厳しくした方がいいよ」というアドバイスを、お母さんがもらった。

真面目なお母さんは、まさや君の自立を目指して、以前より少し厳しく接したそうだ。

それが原因かどうかは分からないが、20歳のまさや君が「怖い人が見える」と訴えるようになった。

それで、心理相談を受診してくれた。

ダウン症に自閉症が併発する事例

まさや君は、小さい頃から絶対注射をさせなかったり、今でも採血による血液検査をさせなかったり、元々恐怖心の強いお子さんだ。

また下記の方が指摘しているように、私から見ても、まさや君はダウン症に自閉症が併発しているお子さんに思えた。

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働く主婦の独り言 働く主婦の独り言 自閉症合併のダウン症の子の特徴

過剰な負荷がかかると、自己防衛の意味で、恐怖を訴える SOS として、「怖い人が見える」という幻視が現れたのではないか?と、私からお母さんに説明した。

成人した まさや君の考えを尊重する

お母さんと相談し、育児方針を転換することにした。

まさや君の本来の性格を大事にして、 まさや君はすでにもう成人だから、まさや君の自己決定に色々と任せていこう、と話し合った。

まさや君のご家族全員が、それに賛成してくれた。

まさや君の気持ちと、社会的自立の、板挟みで苦しんでいたお母さんも、私の言葉に押されて、まさや君の気持ちの側に立つことを選んだ。

母子分離が成立した。

一心同体だったまさや君を、お母さんが手放した瞬間だった。

心理学者のアドラーによれば、これを「課題の分離」と言う。

「子ども自立させたい」、その時、直面する一つ一つの問題について、「お母さんの願う課題」か、「まさやくんの自己決定を尊重すべき課題」か、目を凝らして分けて考える必要があるということである。

まさや君が決定すべき領域に、お母さんが踏み込みすぎてはならない。

それが、成人した子どもの考えを、尊重するということだ。

何でもお母さんの願い通りに、頑張って来たまさや君が、「僕には無理」と言った SOS が、幻視のSOSだった。

半年ほど時間をかけて、まさや君から幻視の訴えが消えていった。

カラオケの🎤セットを贈った。笑顔あり。

物理的な工夫で自立を目指す

以降、お母さんと一緒に、まさや君の生活の物理的な工夫をチャレンジしている。

まさや君の気持ちに圧力をかけて、まさやくんの意欲を問うのでなく、物理的な工夫によって、まさや君の適応が社会常識の側に寄るといいと話し合った。

次回以降は、まさや君が使ってみた「食べ物をカットするハサミ」、「お風呂タイマー」、「洗濯を楽にしたジェルボール」「時間の見えるタイムタイマー」「iPad 音声入力アプリ『かなトーク』」などの使用事例を紹介していきたい。

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 病院小児科で臨床発達心理士をしています。
 梅津八三の心理学、行動調整法、子どもの行動理解、育児、教材、ソーシャルスキル、介護、猫の行動について投稿中です。

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