音声の言葉のない多動な自閉症児の療育3目と手の協応

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特別支援学校に入学を予定している、音声の言葉のない自閉症のA君が、3回目の療育に来てくれました。

3回目、前回と同じ教材があることで、療育の部屋で過ごすことを分かった様子です。

病院小児科に来るまでに、車の中で、たっぷりとスマホでトーマスの画像を見てきたそうです。

療育に集中できるようにと、お母さんが考えて、事前にしてくださったことです。

小児科の待合室で、お母さんが手をつないでいるうちはいいのですが、お母さんが手を離すと、ピューッと走ろうとするので、車から降りる時、手に何か持つ方が、走りが緩やかになります。

スマホ、好きなおもちゃ、ペットボトルを「持って」と渡して、持って歩くのはどうでしょうか。

音声の言葉があれば、目で見たものを言葉にしながら歩けるのですが、A君はまだ音声の言葉がないので、手に実物を持って、触覚を満たすと、実物と触覚が音声と同じ言葉になり、行動がゆったりとします。

スマホ、好きなおもちゃ、ペットボトルを直接持ち続けることが長くなったら、カバンや袋に入れて間接的に持つことも、できるようになります。

穴を見て入れる目と手の協応が起きる教材「棒差し」

前回喜んだおもちゃは、トランポリン、くもんのくるくるチャイム、逆さにすると流れるビーズトイ、水の入ったペットボトルでした。

くもんのくるくるチャイムビーズトイは、お家に持って帰り、お家でたっぷり遊んだとのことです。

今回もその流れで、シール容器の玉入れ、スリット通し、ビーズトイを用意してみました。

しかし今回は、玉入れとビーズトイはそれほど喜ばず、棒差しと棒入れを喜んでやってくれました。

棒差しは、東京の基礎教育研究所を設立した、水口ふかし先生お手製の棒差しです。

台の重み、穴の間隔、棒の長さ、三拍子揃った教材で、A君がスラスラと何度もやりました。

さすが、初期学習の権威、水口ふかし先生の長年の洞察から生まれた教材です。

棒をさすとき、A君の目は穴に注がれています。

これは、洋服のボタンをはめる時、ボタンを持つことと、穴を見ることにつながります。

棒入れも、穴を見ながら、割り箸を入れてくれました。

お家でも、割り箸入れの経験があるそうです。

入れる穴が5ミリほど立体的に立っているので、入れる穴が分かりやすかったと思います。

分かりやすいこと、入れやすいことが、目と手の協応、および注視の条件ですね。

玉入れも、スリット通しも、シール容器の穴をカラーマジックで塗って、目立たせました。

穴を見て入れる目と手の協応が難しい教材

前回、小さな玉を小さな穴に入れることが難しかった、シロフォンチャイム玉の塔も、のり付き付箋紙を丸く切って穴に貼り、穴を目立たせました。

お母さんがモデルになって、やって見せます。

するとA君も、何度も何度も挑戦してくれました。

A君の玉入れはこうです。

1.すすめられて玉を持つ

2.うながされて、シロフォンチャイム玉の塔の穴を見る

3.玉を入れようとした瞬間に、目が離れる

これは、じっと穴を見て、玉を入れるという、目と手の2つの同時の協調運動が難しいからです。

見ることと、入れることがそれぞれ難しい動作だから、手で入れる運動の時は、目で見る注意を解放しています。

脳性麻痺の多くのかたが、穴を見ることと、ボールを手のひらから離すことの、2つの動作を同時にすることが難しいのと同じです。

脳性麻痺の方も、穴を見て、ボールを入れる時に、目が穴から離れます。

A君が入れようとする玉は、穴から外れて、入らないことも多いです。

まだ、親指と人差し指でつまむことが難しく、指全体や手のひらで、ものをつかむことが多いです。

それでも、何度も何度も挑戦しているうちに、A君が、シロフォンチャイム玉の塔の穴を見て玉を入れ、1段目2段目の傾斜を転がる玉を、目でじっと追視することが初めて起きました。

お母さんも喜びます。

スリット通しは、円盤と穴の方向合わせがまだ難しく、縦穴は無理で、横穴の時が最も入れやすいです。

A君がうまく入れるように、私も一生懸命、穴の向きを合わせます。

A君の玉入れや棒さしは最高4つまで続く

音声の言葉のない、多動なA君は、玉入れや棒差しなどの、同じ仕事を続けることが、今のところ4つまでです。

2~3秒の継続時間ですね。

1つやっては走り、1つやってはトランポリンを飛び、1つやってはお母さんに抱きつきます。

目と手の協応動作は、A君にとっては、ハードルの高い仕事です。

おそらく、スプーンやフォーク、お箸の使い方も、非常に難しいのではないかと想像できます。

それでもこの日は、「帰りたい」とドアを開けようとすることが一度もなく、スマホの「トーマスが見られない」と頭を叩くことも一度もなく、何度も笑顔が出て、終始しゅうしご機嫌のA君でした。

玉入れは方向がないので一番やさしく、棒差しは縦長の方向と棒の長さの見通しが、必要になります。

A君の目と手の協応の進化と、1つの活動を長く楽しめるようになることは、連動しています。

音声のないA君の身振りサイン

前回はおやつのカステラをあまり食べなかったのですが、今回は何度もちょうだいの身振りをして、おやつのパンを食べました。

ちょうだいの身振りは、①両手を合わせて叩く、②片方の手のひらを上に向ける、③片方の手のひらをお母さんに差し出す、この3つをまねできます。

そこで、④食べたいのサイン=唇を軽く叩く、⑤一緒に寝ようのサイン=両手を合わせてねんねの身振り、を作っていきたいです。

療育が終わった後、小児科の待合室のマットで、A君が私の服のえりを引っ張って私を倒すので、お母さんに意味を聞くと、「みんな集まって一緒に寝よう」という意味でした。

ねんねの身ぶりをしてくれると、誰にでも伝わりやすくなります。

身振りがなくて、直接服のえりを引っ張られると、保育園やデイサービスのお友達との間では、喧嘩になりそうです。

「お家に帰ろう」は、私が車の鍵を見せたら、すんなり伝わりました。

車のハンドルを揺らす身振りも、真似してくれました。

食べたい、おしまい、寝たい、帰りたい、などの身振りを、おとなの真似からA君の自発行動として、作っていきたいです。

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