子どもが朝布団から起きない、子どもが学校に行きたがらない、子どもが部屋から出たがらない、そういう状況を抱えているご家族の心労は、察するに余りある。
家族として、どうしたらいいかわからず、頭ごなしに叱ったり、強引に外出へ誘ったりするしか、方法が見えない時もある。
家族は、次第に誘うことに疲れ果て、経済のための自分の仕事に没頭することで、苦しい状況を数時間忘れる方もいる。
どうにもならない状況を抱えながら、眠ったり、入浴したり、ご飯を食べたり、働いたりすることは、孤独な闘いだ。
切ない。
見守る家族の、そういう辛さを少しでも軽くできるのは、子どもの変化や子どもの踏み出しである。
子どもの変化や子どもの踏み出しを作る方法について、5つほど紹介したいと思う。
教育仮設36-1 子どもの自信に繋がる心理学的な接し方(梅津八三)
子どもへの接し方について、梅津八三の心理学から、以下の4点をお勧めした。
1.現勢の保障(=今の状態・不登校を責めない )
2.共感と同行(=誰でも苦手や苦労、辛い時があるねという共感)
3.得意な領域の拡大(=あれができるね、これができるね、あれも得意だね、 これ楽しいね)
4.苦手な行動や新しい行動への踏み出し(=一緒に何々をやってみよう)
不登校の改善には、梅津のいう、現勢の保障と得意な領域の拡大の2つが、子どもの自信に繋がると考えている。
教育仮設36-2 「できたね・できているね」と言うコーチング
ある時、コーチングという方法に、出会った。
コーチングとは、古くは「馬車でその人が望むところへ送り届ける」に始まる。
スポーツのコーチが、選手の主体性を引き出すことに用いることで、有名になった。
選手のできたことを認めて、それに言葉をかけていく方法だ。
人は、認められれば、嬉しい。
すると、選手は、また頑張る。
そういう、良い循環の繰り返しの方法だ。
言葉をかける時には、このコーチングの考え方が、良いと思っている。
親は、子どもがまだしていないことに、「起きて」「ご飯を食べて」「歯を磨いて」「支度をして」ということが、多い。
言葉で、すべきことを、指示するという感じだ。
子どもが、これまで出来ていた適応を失った時、指示だけ出されることは、子どもにとっては辛い。
できないこと、起きにくいことを言われるからだ。
そこでコーチングのいう、できたことだけを言う方式に、家族が変わる必要がある。
将来の行動の指示をするのでなく、既に起きた過去の行動・今現在の行動を、「できたね・できているね」と言うことだ。
朝起きない時には、カーテンを開けながら「眠れたかな?」「ぐっすり眠れているね」と、前夜の睡眠について話しかける。
そう言葉をかけたが、朝起きてこなくても、「昨夜は夕ご飯一緒に食べて嬉しかった」「昨夜は食器を洗ってくれてありがとう」「昨夜はお風呂に入れてお母さんも安心した」「大好きな卵焼き焼いてあるからね。朝ごはん食べてね」「お母さん仕事に行くけど、早く帰るね」と、言葉をかける。
できたことに言葉をかけ、好きなものに言葉をかけ、子どもに自信を思い出させる感じだ。
教育仮設36-3 大場美鈴さんの「声かけ変換表」
大場美鈴さんの「伝わる声かけ変換」は、 子どもの行動を非難せず、子どもがその行動に立ち向かいやすいように、子どもの立場に立った言葉かけのお手本が多い。
大場さんの著書も参考にしてみてください。
教育仮設36-4 「子どもの心のコップを自信の水で満たす」森田直樹
香川県に、森田直樹さんというスクールカウンセラーの方がいる。
現在は、ご自身が代表者となって、「キッズカウンセリング寺子屋教室」という、心理相談事務所を経営されている。
「不登校は1日3分の働きかけで99%解決する」という本を、リーブル出版から刊行された方だ。
Amazon のベストセラー第1位ということで、2015年に私はこの本に出会った。
題名は少し信じがたかったが、まずは読んでみようと思った。
森田氏の本から、私が読み取ったのは、以下のようなことである。
森田氏は、家族に、アプローチの3段階「したことを言う」「嬉しいと言う」「力があると言う」を勧めている。
①1日3回、3分間、子どものしたこと・できたことを、認めて褒める声かけをする。
それが子どもの自信につながる。
本の内容から私が勝手に想定したシーンは、たとえば、
何時でも、起きてきたら「起きたね」、
好き嫌いがあっても何かを食べたら「ご飯食べたね」、
学校へ行けなくても「留守番頼むね」「お茶碗洗っといてくれると助かるなぁ」 、
仕事から帰宅したら、「留守番ありがとう」「困ることなかった?」「お茶碗洗ってくれたんだね」などだ。
➁上記の①に加えて、そこに、「何々でうれしい」という、家族の気持ちを付け加えて言う。
「起きてきたね、お母さん嬉しい」「ご飯食べたんだね、お母さん嬉しい」「お茶碗洗ってくれたんだね、お母さん助かる」 など、全て過去に対する認め方だ。
それが子どもの自信につながる。
③さらに「あなたには何々の力があるね」と、子どもの得意な力・適応力を刷り込む。
「自分で起きられるね」「朝ごはん食べられるね」「家族のためにお茶碗を洗えるね」「お風呂洗い続いているね」など、あなたに今現在そういう力がある、という認め方だ。
それが子どもの自信につながる。
毎日、家族から、最低3回、認められる言葉をかけられ、自分の存在が家族に嬉しいと喜ばれ、力があると言われれば、誰でも嬉しい。
「子どもの心のコップを自信の水で満たす」と、踏み出し行動が後からあふれてくる。
育児、家族のコミュニケーション、親業、全般に通ずる方法だ。
教育仮設36-5 子どもが生まれた時の写真を飾り存在を喜ぼう
子どもが生まれた時、家族は嬉しかったと思う。
「あなたが生まれた時、嬉しかった」と言おう。
言えなくても、子どもが生まれた頃の写真を、リビングに、キッチンに、飾ってほしい。
生まれた時から現在までの、お気に入りの写真をピックアップして、家のあちこちに飾ってほしい。
兄弟が3人いれば、3人分をそうしよう。
飾るきっかけは「探し物をしていて、片付けをしていて、うれしかったことを思い出した」と言えばいい。
あなたの存在そのものが嬉しいと、写真を飾る行動で、子どもに伝えよう。
生まれて、泣いて、呼吸して、眠って、飲んで、食べて、排泄して、お風呂に入って、歩いて、話せて、家族と暮らせて、遊べて、‥‥‥できているたくさんのことを、思い出そう。
写真を飾ろう。
過去と現在までの、子どもがすでに持っている力を喜ぼう。
家族のそういう感動が、「 僕は存在していていいんだ」という子どもの自信につながり、質の良い睡眠を作り、外へ踏み出してみようという気持ちを引き起こさせる。
学習や対人関係について、本人の苦手さの自覚があれば、それを家族に語り出す。
家族の皆さんにとって、起きやすい方法から、1つずつ、お試しされたい。
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