認知機能維持の運動 その1

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散歩は認知症の発症前から習慣にしたい

 認知機能を維持をするには、遊びや学習だけでなく、全身運動による血液循環の有無が、かかわっている。

家庭で簡単にできる全身運動は、散歩や入浴だ。

ヤエさんは、子どもの頃から、運動音痴だった。

ヤエさんの父親である、私の祖父が、自転車に乗れない人だった。

ヤエさ、歌も音痴だった。

40代では社交ダンスを習っていたが、自分から散歩を日課にする姿はなかった。

働き盛りに、美容師の立ち仕事で疲れて休む、という日常だった。

散歩や運動も、心身が元気でないとできない。

70代で右足の足首を御嶽山登山で痛め、私に言わずに放置していて、治療しなかった。

77歳で骨粗しょう症になって、半年間寝たきりになった。

毎週、注射の順番を朝、取りに行って、昼前に、車の後ろ座席に寝かせて、整形外科までエルシトニンの注射に連れて行った。

そこから、リハビリで私と一緒に、散歩するようになった。

認知症が発症してから、急に何かしようとしても、以前からの習慣がないと、家庭ではなかなか散歩も運動も難しい。

認知症が発症するまでに20年くらいかかっているということだから、本当は60代くらいから散歩のような運動を、日常的に心がけるのが最も良いのだと思う。

今流行のフィットネス教室などで、認知症の発症前から運動に親しんでおくことが、認知症の発症後も、散歩や運動を継続しやすい。

認知症のヤエさんが90歳代で使った運動器具

左:東急スポーツオアシスフィットネスクラブすわってスクワット 右上:アルインコのプチトレ 右下:エアロライフ モーションナビ DR-3830
96歳 ヤエさんは若いころ自転車に乗れた。だから自転車こぎは好きだった。
96歳 合計回数が9998回になってとても喜んだ。
電動ステップサイクル
97歳 要介護4 電動だから、毎晩1000回喜んで踏んでくれた。
2台で向かい合って、私も一緒にやると喜んだ。

好きでない限り、健康でも一人だけの散歩は億劫だ。

認知症の発症後は、家庭で家族と一緒に散歩するか、デイサービスで仲間と一緒に散歩するかが、散歩の起きやすさになる。

杖は自力歩行に役立つ

ヤエさんは、子どもの頃から手足にしもやけができ、手足が冷たかった。

健診等で、血液採取の際に、血管がなかなか出ないヤエさんは、元々血管も細かった。

70代の捻挫で悪くなった右足のために、速足散歩はできず、血液循環は悪く、冬は手足が氷のように冷えた。

美容師で長時間立っていると、80代では、70代の捻挫の右足が痛むようになった。

83歳で認知症を発症した頃には、痛めた右足のために右側だけ杖をついた。

90歳、要介護1までは、ダイソーの1点杖を頼りに、一緒に散歩によく出かけた。

要介護1 90歳  散歩 1点杖

歩道はアスファルトで、段差や傾斜がなければ転倒しない。

自走式車いすのかたが自分で楽に車いすをこげる、真っ平らな歩道が理想だ。

たいていの歩道は車道のために途切れたり、雨逃しの傾斜があったりする。

自転車も車いすもヤエさんも、本当は車道のようなまっ平らなアスファルト歩道を利用したい。

高価なしゃれた敷石の歩道でないほうが、高齢者はつまずかない。

車椅子と高齢者に優しい歩道を、設計施工してほしい。

92歳から96歳まで、右足の表在静脈のつまりをⅮ病院心臓血管外科の町田政久医師に診ていただいた。

むくみ改善の包帯を、3年間毎朝巻いた。

右足かかとの紫色が改善され、ビタミンE(ユベラ)で血流がよくなり、認知も維持されたような気がした。

1点杖は不意の反応時には役立たない

92歳、要介護3からは1点杖で散歩に行くと、しばしば転倒した 。

96歳 要介護4 両足でまっすぐ立てない。

スーパーのレジ前に商品販売ワゴン台があり、それを避けようとした男性がヤエさんの左肩に不意にぶつかってきただけで、スローモーションで右へ転倒した。

散歩の途中、私が「猫がいた」と指差すと、左を見た瞬間、歩道にわずかな傾斜があったため、悪い右足で踏ん張れず、右側に転倒した。

我が家の階段の手すりの設置が短く、ヤエさんが身体を180度回そうとした瞬間に転倒し、ヒーターの角で頭を切ったこともあった。

1点杖は卒業して、島製作所 四点杖 オールカーボン四点可動式 スモールタイプを使うことにした。

スーパーでは杖をやめて、カートを押して歩くと四つ足になり、少しは安全だった。

買い物に連れて行ってもヤエさんは、次第に「車の中で待っている」と言うようになった。

歩行者用の信号を無視したのと同じころ、一人で待っていた駐車場車内で、尿意を我慢しきれずに、ヤエさんが車の外で排尿していた。

尿意が分かって自己解決したことは素晴らしいが、自宅から付けていった尿取りパッドに、車内で排尿するということはできなかった。

車いすを面倒がってスーパーに同行させず、一人で車内に放置した私が悪い。

子どものころのように、外で排尿したのだ。

自分の快感の保障と他人から見た常識との間で、社会的判断が難しくなったヤエさんを見て、次からは買い物に連れて行かず、家で留守番してもらった。

96歳 要介護4 自転車こぎ機にはもう座れず座面から落ちた。要介護1くらいからやるべきだった。
96歳 要介護4 ホームフィットネスぶるゆれマシーン

歩行器も早い時点で慣れておくほうがいい

93歳、要介護3、4点杖の次に、ヤエさんは福祉用具レンタルで、歩行器を使うようになった。

レンタルの歩行車 竹虎ヒューマンケアのハッピーミニ

1か月借りて2000円なので、1割負担の200円だった。

自分用に自費で購入すると、2万円ぐらい。

福祉用具は、貸与と購入があり、要介護1以上のかたは、購入は毎年10万円まで利用でき、1割負担でいい。

また住宅改修制度もあり、生涯で20万円使える。

我が家も6万円で玄関手すりを付けたが、6000円の負担で済んだ。

ヤエさんが歩行器を使うようになったころには、歩行器を使いこなす認知機能もヤエさんには難しい時期になっていた。

さっさと歩ける、要介護1ぐらいの時点で歩行器に慣れておくほうがよかったと、今なら思う。

スイスイ歩けるうちに、「私が見てみたい」「私が使い方を知りたい」と、レンタルの歩行器で散歩に行く経験があるといい。

初めて杖で転倒が起きたとき、そこで思い切って歩行器に変えると良さそうだ。

デイサービスではヤエさんの歩行器の前後にいつも介護士さんがついてくれた。

デイサービスの入り口 スロープ

93歳のヤエさんの足の運びや、ブレーキの機能上、デイサービスではヤエさんと歩行器から目が離せなかった。

家庭では、ベビーカーのようなコンパクトな車いすを押してベッドからトイレ、洗面台から食卓へ私と一緒に移動した。

我が家の室内はコンパクト車椅子を押して移動した。

我が家の床はバリアフリーで、初めから全面ジュータン仕様にしたので、車いすも滑りにくく、ヤエさんの転倒に備えやすかった。

車いすを使うとき

慣れない場所に、転倒しやすい杖で行くことは危険だ。

92歳、要介護3から、デイサービスでも花見などのお出かけには、ヤエさんを車椅子で連れて行ってくれた。

我が家も93歳から、通院の際は車椅子で行くことにした。

ヤエさんも車椅子になって、通院先でほっとしているように思えた。

車椅子には、自走式と介助式がある。

ヤエさんが自力で手漕ぎで車椅子を走らせるということはないので、わが家はタイヤが小さいカインズの介助式車椅子にした。 

カインズの介助式

アルミ製ケアテックジャパン介助式コンパクト車椅子スマイル 

室内運動ができる様々な運動器具

ヤエさんは認知症を発症し、90代の高齢になってからも、私が相向かいでに行なえば、家庭で運動にチャレンジしてくれた。

96歳 要介護4

ヤエさんは運動音痴なので、手首や足首への力の入り方が心もとないが、それでも一生懸命やってくれる。

93歳要介護3~97歳要介護4の間は、主に我が家の室内で運動器具を使って一緒に運動を心がけた。

96歳 要介護4 東急スポーツオアシス すわってスクワット

ヤエさんにはもう難しい運動器具であったが、97歳までご機嫌よく一生懸命やってくれた。

座位での足首回しや、つかまってのスクワットなど、明るく前向きに取り組んでくれるヤエさんだった。

猫ちゃんもよくそばで、ヤエさんの運動を見守ってくれたり応援してくれたりした。

猫ちゃんがいると、嬉しそうだった。

階段昇降とエレベーター

階段昇降は、97歳の後半に歩けなくなるまで、ヤエさんの一番の運動の機会だった。

96歳 要介護4 朝は階段を下りる

入浴の際の昇降、デイサービスへ出かけるための昇降、1日に2往復、15段を4回昇降することが、ヤエさんの足の血行や腹圧の運動になっていた。

階段昇降は、排便の促進にもよかった。

98歳、要介護5、歩けなくなってからは、エジェムという会社のホームエレベーター(幅70cm奥行55cm)を、事務用のキャスター椅子に座って乗った。

寝室が2階だったので、エレベーターのおかげで最後まで在宅介護が可能だった。

帰りは小さなホームエレベーターで2階へ

98歳、要介護5、寝たきりになったヤエさんの寝室を1階へ移そうと、1階を片付けているときに雨漏りを発見し、雨漏り修理の依頼を始めたところで、10月にヤエさんを見送ることになった。

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 病院小児科で臨床発達心理士をしています。
 梅津八三の心理学、行動調整法、子どもの行動理解、育児、教材、ソーシャルスキル、介護、猫の行動について投稿中です。

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