音声の言葉のない多動な自閉症児の療育7 人に対する要求の伝達を育てる

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特別支援学校小学部1年生のあっちゃんが、久しぶりに小児科の療育に来てくれました。

36°c超えの暑い日です。

待合室に迎えに行くと、椅子に座って、水筒の飲み物をごくごく飲んでいました。

お母さんが言うには、「きょうは機嫌が悪いんです。」

自閉症で感覚過敏のあるあっちゃんには、この暑さはつらいです。

音声の言葉がない自閉症のあっちゃんの拒否はうなること

我々は、「暑いですね」という言葉でしのいでいるのですが、あっちゃんには音声の言葉がありません。

あっちゃんは暑さの不快を、ぐずる態度で表わせるだけです。

お母さんはお家であっちゃんに、病院のカードを見せて予告してくれたのですが、きょうの不機嫌の理由は、あっちゃんの大好きな遊びを途中で切り上げることが残念だったのかもしれません。

今のところ、あっちゃんは、うなり声をあげて「いやだ」を表わします。

あっちゃんの手に、教材がいっぱい入った重いポリ袋を持たせたら、「重い、持ちたくない」と言う意味で、うなって怒ります。

すぐに、重いポリ袋を引き取りました。

おやつが入った、小さなポリ袋を手に持たせることから、始めようと思います。

あっちゃんに「いやだ」の首振りも形成したいと、お母さんと話し合いました。

実物の容器を手渡すことが「開けて」という言葉

待合室から手をつないで移動して、療育の部屋に入ると、エアコンや扇風機もついているし、いつもの部屋や教材という実物の言葉で、することがわかったらしく、不機嫌な表情は消えました。

お母さんから、本日の不機嫌さの情報をもらったので、この日は、教材の操作よりも、食べることを介した人とのコミュニケーションに力を入れました。

これまであっちゃんとは、麦チョコをつまんで食べるような、目と手の協応操作の学習を重ねてきました。

今回は、スティックパンや麦チョコが入った容器を、お母さんに手渡すことで、「開けて」と要求を伝える学習を行ないました。

高さ17cm 直径12cm の透明容器は100円ショップのセリアなど

部屋の隅っこを向いて座る、壁での手のひらたたき、私の手を引いてのトランポリン、椅子からのジャンプ、玉転がし、棒差しなどの合間に、あっちゃんが食べたいおやつの容器を自分で選んで、お母さんに容器ごと差し出します。

あっちゃんがお母さんに容器を差し出すと、あっちゃんの目を見ながら、お母さんが「ア・ケ・テ」と言います。

あっちゃんはお母さんの口元をよく見て、音は出ないのですが、「あ」の口形をまねすることができました。

パン1本と、麦チョコとチョコベビー20粒ずつぐらいを食べました。

夏休みはご家族と、2学期は先生と、色々な容器で、「開けて」という要求の伝達が増えると良いと思います。

ビンをさかさにして中のものを片手で受け取る

ねじって開けるふたつきの小型ビンに、麦チョコを入れてあっちゃんに渡すと、「ふたを開けてくれ」とお母さんにビンを渡します。

お母さんがふたを少しゆるめてから渡すと、あっちゃんもふたをねじって開けようとします。

ふたを開けると、あっちゃんはビンに指を入れて、麦チョコに指が届かないと、ビンをさかさにして、麦チョコを出すことを覚えました。

療育では1~2回うまくいくように手伝っただけなので、ビンをさかさにすることが上手になったのは、お家でお母さんと練習したからです。

あっちゃんは手のひらで、直接麦チョコを受け取ることにも、チャレンジしました。

初めはビンと手のひらが離れすぎて麦チョコが落ち、あっちゃんの手のひらが平らすぎて、麦チョコが落ちました。

3回目4回目には、あっちゃんが自分で指のすき間を閉じたり、手のひらを丸くしたりすることが起きて、麦チョコを落とすまいとする工夫が自発しました。

容器の手渡しや蓋開けは、「ペットボトルの蓋を開けてくれ」と、お母さんにペットボトルを手渡す行動が土台になっています。

不器用な子どもにペットボトルの開け方を教える方法

子どもの好きなもの獲得したいもので係わる

開けてくださいという要求の伝達、および手指の巧緻性は、欲しいものの獲得と結びつけると、あっちゃんにも形成できそうです。

今のところ、あっちゃんの獲得意欲はおやつが中心で、くもんのくるくるチャイムコロコロシロホンM63のボールを獲得したい、という姿はなかなか見られません。

コロコロシロホンの玉転がしを2~3回やってくれました。

ボール・棒・リング・コイン・スマホなどは、シール容器に入るサイズですが、あっちゃんの好きなおもちゃは、トランポリンのように大型でシール容器に入りません。

トランポリンを風呂敷に包んで、「開けて」の要求伝達を次回やってみようか?

あっちゃんが欲しがる小型のおもちゃが見つかると、着席行動や要求の伝達が増えると思い、お母さんに聞きながら、おやつ以外の興味関心も探していきます。

暑いの身振り

最後に、駐車場の車まで送っていくと、灼熱の車に乗った途端、あっちゃんがうなり声を上げて不機嫌になりました。

暑さの不快に加えて、あっちゃんには不快を伝達できないつらさがあります。

車に乗ったらすぐに、あっちゃんにうちわを手渡すことを繰り返してから、耳の横で、手をうちわのように動かす、「暑い」の身振りを、次回からやってみせたいと思います。

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