子どもの行動を丁寧に細かく見つめることができると、子どもの今の段階を理解できます。
目の前の子どもの行動を見ないで、子どもの理想像を追いかけると、その子の発達の順序を無視した自己無能感に追いつめることになり、子どもを苦しめ、子どもを荒れさせます。
自閉症の子どもの感覚過敏を保障しないと、ゆっくり発達することを認めないと、愛着が壊れ、他害が起きます。
鉛筆、カルタ、じゃんけんの3つについて、それぞれの複雑さを理解してほしいので紹介します。
鉛筆を持てるようになるまでの手の発達の順序を理解する
うちの子は、もう年中組さんだから、4月から年長組になるから、「鉛筆持ちをさせたい、鉛筆持ちをさせるにはどうしたらいいか?」という理想を見ていてはいけません。
目の前の子どもの、手の動きと苦労と発達を見つめて、細かなステップを言葉にして理解してください。
クレヨン➡マジック➡クーピーペンシル➡色鉛筆➡鉛筆などを、3本指で持って使えるようになるには、様々な手指の発達が必要です。
①手づかみで物を食べることができる。
➁スプーンで物を食べることができる。
③ソフトビニールの大きなブロックなどを、はめたり外したりする器用さがある。
④厚みが1cm、ピースの大きさが4~5cm くらいの大きな木製パズルを扱うこともいいですね。
⑤レゴのような小さなブロックなどを、はめたり外したりする器用さがある。
⑥着替えを嫌うのは、先生や仲間への同調の気持ちがなかったり、着替えの意味が分からなかったり、着替えが楽にできないから、なかなか取り掛かりませんね。
着替えのスタートをやってやり、着替えの最後を子どもにやってもらうところから始めて、少しずつスタートに近づけます。
上半身の T シャツは、後ろを上に置いて着る。
下半身のズボンは、前を上にしてはく。
着る前後のルールが、上下で反対なので、難しくなります。
ズボンの前後を間違う、靴の左右を間違う、などよく見かけますね。
手がかりとなる言語がないと、着るときのコツの言葉がありません。
不器用な子ども、できない子どもは、たいてい目だけで行動していて、コツの言葉がなく無言です。
下の画像のように保護者がT シャツを物理的に工夫しても、子どもに「手のところを持って頭を入れる」という言葉が必要です。
何回も何回も大人がそばで言ってあげることが必要で、子どもにも真似して言わせることが大事です。
⑦スキップができる。
直径20 cm くらいのボールを投げたり取ったりできる。
紙飛行機が折れる。
直線に沿ってハサミで切れる。
はみ出さないように、塗り絵ができる。
頭部・身体・手足などの、人物画を描ける。
鼻をかめる。
水や味噌汁をこぼさないで運べる。
右手と左手がわかる。
1.5 cm くらいのボタンを楽にはめ外しできる。
歯ブラシで歯を磨ける。
お箸を使って食べられる。
⑧じゃんけんで勝負を決める。
以上ができるようになる頃には、鉛筆を持つことも楽になります。
それが、手の動きと苦労が分かる、、発達理解になります。
鉛筆持ちだけが、急に単独で上手くなるわけではありません。
道具で補完する
子どもの手には、長さが10 cm、太さが直径2 cm くらいあると、ペン類は持ちやすいです。
それでクレヨンは、たいてい短く太くなっています。
くもんの鉛筆も、初期のものは、長さが12 cmで6 B です。
マジック➡クーピーペンシル➡色鉛筆➡鉛筆も、短い・太い・ペン先が柔らかいと、子どもの不器用さを助けてくれます。
マジックは、力を入れなくても、楽に塗れますね。
鉛筆は、太く短い三角鉛筆の6 B であれば、一般的な鉛筆よりも楽に書けます。
最近は、ダイソーやセリアなどの100円ショップにもあります。
普通の鉛筆の、持つ部分を太くするゴムラバーも、100円ショップや Amazon などで販売されています。
歴年齢で手の発達を決めるのではない、子どもを大人の理想に合わせるのではない、目の前の子どもに、今、楽に起きていることは何か?
どんな道具を工夫したら、少しでも楽になるか?
今、楽に起きていることを十分に楽しむ中で、次のステップをおまけでアタックしたり、提案したりする、その細やかさが大人に必要です。
大人の理解が雑だと、子どもに自己無能感を与え、苦しめます。
親の理想が高すぎて、直接、親に反抗できない時、子どもはストレスを、保育園や学校で他害で訴えます。
子どもが荒れたとき、無理な負荷がかかっているということを認めて、理想を諦めて、子どもの力を認めましょう。
塗り絵を塗る行動の複雑さを理解する
塗るとき、なぞるとき、細かいペンの動きを作るために、ペンの芯に近い部分を持つように言うと、子どもは指で線や絵が見えなくなります。
線や絵を見ることと、ペンを動かすことの二重の仕事になり、苦労するので、ペン先から遠い所を持ったり、塗り方・なぞり方がはみ出たりします。
この時、はみ出たことを非難すると、子どもは自己無能感で切れます。
二重の仕事が不器用な子どもには、有能感を持つように、出来ていることに言葉をかけます。
「一生懸命塗れたね」「力を入れて塗れたね」
はみ出たことは、できていないことなので、触れないようにします。
子どもはうまくできなかったことを、結構自分で認識しています。
失敗や不完全に触れないで、スルーしておくほうが、親子関係や愛着関係に良いです。
したこと・できたことに声をかけて、認めて褒めましょう。
それが自己有能感や自己肯定感につながり、認められると素直になります。
どうしても直したい時は、「よくできたね」「頑張ったね」「集中して書けたね」と、できていることを認めてから、「ここをこう頼むね」「ここはこうかな?」と声をかけてみてください。
塗り絵を塗り分けることばに擬音を使う
丸〇三角△四角▢の形に沿って塗るときや、恐竜やキャラクターの塗り絵を塗る時に、そばで大人が擬音を言ってあげましょう。
直線や長い線は、「ザアザア」
丸く塗るときは、「グルグル」
細かく塗るときは、「チョンチョン」「小さく小さく」「細かく細かく」
線に沿って、縁取るときは「線の上、線の上」
などです。
子どもがふだん使う言葉、わかる言葉を大人が添えてやりましょう。
絵探しカルタ
家庭で子どもたちを一緒にすると、兄弟喧嘩が起きてしまう時、カルタは、大人2人と子ども1人の3人から始めましょう。
大人は、「読み札の、一番最初の文字を見つけるのが、カルタだ」と思っています。
まだ、ひらがな文字を覚えていない子ども、読み札の一番最初の音を探すと分かっていない子どもは、読み札から聞き取る「言葉と絵」を対応させて札を探しています。
ひらがな文字カルタというよりは、絵探しことばカルタですね。
そして、これでいいのです。
これを十分楽しむことが、やがて文字に繋がっていきます。
十分楽しい活動の中で、じゃんけんなどのソーシャルスキルを教えます。
家族でするカルタ遊びは、難しさ理解と、ソーシャルスキル形成のチャンスです。
空中で行なうじゃんけんの複雑さ
カルタの絵札を2人が同時に取った時、2人でじゃんけんをします。
「最初は・グー」の「グー」を、タイミングよく出せない子どもさんがいます。
それくらい、空中で行なう模倣は、難しいのです。
手をグーの形にして、じゃんけんの言葉を言いながら、脇でリズムを取るということが難しい様子です。
手を後ろに引いている時が2拍、じゃんけんを出す時が3拍目ですね。
両手の3拍打ち「さい・しょは・グー」「じゃん・けん・ぽん」「あい・こで・しょ」が、リズミカルにできるように、歌と3拍打ちを大人と一緒にやると良いでしょう。
「じゃんけん・ぽん」の「ぽん」のタイミングで、じゃんけんを出せない子どもさんもいます。
じゃんけんの指は「ぽん」では変更できず「あいこでしょ」では変更できる2通りの使い分け
そのお子さんは「あいこで・しょ」の「しょ」でも、やはり出せません。
テーブルの上に2枚の紙を置いて、向かい合って大人相手に一対一で、じゃんけんを紙の上に出す練習をします。
もう一人の大人は、子どもの味方になって、そばに寄り添って、タイミングよくじゃんけんを出せるように、手を後ろに引いている時が2拍、じゃんけんを出す時が3拍目のリズムを手伝います。
「なんでできないの?」「なんで分からないの?」ではなく、上記のように複雑で難しいことなのだと理解して、何をどう手伝うかを見つけることが大事です。
「来年わかるよ」「さ来年できるよ」という、先送りや棚上げも必要です。
「じゃんけんって、複雑で難しいんだね」という共感が先にないと、子どもの心の荒れや他害が起きます。
自閉スペクトラムや、知的障害、発達性協調運動障害があると、じゃんけんのスキル及びソーシャルスキルは、難しいです。
子どもの難しいことへの共感と、共感してもらえる愛着関係が大事
歴年齢の仲間と同じように出来ないことについては、難しいことなのだ、習得には時間がかかるのだ、という理解が、子どもとの愛着関係を保ちます。
楽にできていることの次に、次のステップが生まれます。
楽にできる得意な領域=確定域で起きる満足感・自己有能感が、次のステップへの踏み出しを起こさせます。
難しさを受け入れ、確定域と次のステップへの踏み出しを見抜くのが、大人の育児や仕事の役目です。
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