音声の言葉のない、自閉症の子どもさんのお母さんが、療育相談に見えました。
音声がないということは、それだけで十分に重度な障害です。
お母さんの毎日の、絶え間ない苦労を思いました。
我が家の高齢の認知症の親が、東北の震災の激しい映像に拍手をしたり、音声言語を失ってからは、表情がなくなって、大好きな相撲を指差したり、食事の前に暇だとテーブルクロスを丸めていたり、飲みたくなくなった牛乳をテーブルの上にまけたりしたことを思い出します。
私自身も、脳が萎縮して認知症になって、音声言語を失ったら、自分がどんな行動をとるのかを想像できます。
音声言語は行動のかなめ、梅津八三が「言語行動」と呼んだように、人は言葉で行動しているのです。
言葉の種類には、実物・模型・身ぶり・写真・絵・文字・音声などがあります。
音声のない子どもさんの言葉=実物・身振り
お母さんのお話を聞くと、子どもさんは、「実物」で話すことが多いと分かりました。
ジュースが飲みたかったり、取って欲しいものがあったりすると、お母さんの手を引いていくそうです。
クレーン現象と呼ばれる、自閉症の子どもさんの言葉=「手伝ってほしい」です。
お母さんが一生懸命教えたのか、両手で「ちょうだい」の身振りもできるそうです。
素晴らしいですね。
今、意味が通じている「ちょうだい」をいくつか変化させると、今後、身振りの真似が起きやすいかもしれません。
拍手のように両手で叩く「ちょうだい」、手のひらと手の甲を合わせる「ちょうだい」、手のちょうだいと同時に頭を下げる「お願い」、など、できている「ちょうだい」を3つできるようにしてみましょう。
新しい行動を急に作るよりは、今できている行動を、少し変化させることが、子どもにとって起きやすいです。
得意なことの拡大ですね。
身振りは、実物をかたどっているので、子どもさんに意味が通じやすい言葉です。
食べる時は片手で茶碗を持って片手ですくう身振り、飲みたい時はコップを持つ身振りで飲むしぐさ、など、「ちょうだい」の他に、食べる・飲む・寝るの身振りから、身振りを増やして行ってみてください。
音声も運動なので、身体の身振りの運動の後、音声が出ることもあります。
指さし運動のあと「ブーブー」と言ったり、指さしてから「パン」と言ったりするイメージです。
トランポリンも好きだそうなので、トランポリンで飛ぶ身振り=手のひらを上下に動かす動作=大人が身振りに「ポンポン」と音をつけて、誘ってみるなども試してみてください。
自閉症スペクトラムの子どもさんは感覚過敏がある
子どもさんの多動・衝動・パニック・自傷・他害に、お母さんや先生方がとても困っているそうです。
子ども自身が先にとても困っているので、結果として、周囲の環境の大人たちも困らされることになりますね。
まずは子どもさんが何に困っているかを、よく観察することが大切です。
静かな環境が好きな子どもさんのようです。
にぎやかな部屋の場合には、部屋の隅に子どもさんの好きなレジャーシートを敷いて、その子の場所とわかるようにしてあげてください。
イヤーマフを購入してつけてください。
イヤーマフが難しい時は、100円ショップに耳栓も様々な種類が売っています。
自分の人差し指を耳に入れて、うるさいのSOSの身振りも大人がやってみせ、子どもに作ってください。
大人の環境調整対応がない時、にぎやかさに困って、言葉で言えず、パニックや他害が起きます。
自閉症スペクトラムの子どもたちは、感覚過敏・聴覚過敏を持っています。
ヘアドライヤーの音が飛行機の爆音に聞こえたり、注意の声が怒鳴り声に聞こえたりします。
目の前に回って、身振りをつけて、静かな低い声で、短い単語でソフトに話しかけましょう。
こだわりを否定せず「いいよ」をたくさん言ってあげよう
発達させよう、しつけようと思うお母さんは、色々と禁止することが多かったそうです。
今している行動に、ダメ出しをされると、子どもは何をしたらいいのかが、分からなくなります。
止められると、どうしたらいいか分からなくて、パニックになったり、自傷になったり、他害になったりします。
対応の第一声は、「いいよ」と言うことです。
場所に困ったら、他の場所を提案します。
遊びに困ったら、他の遊びを提案します。
次の行動を見せてから、今の行動を止めてください。
好きな水遊びへの新しい提案
この子どもさんは水遊びが大好きで、洗面所で遊ぶので、水浸しになって困るそうです。
また、洗面所でちょっと遊び、家中を走り回って濡らすということでした。
そこでお母さんに、お風呂場で遊ばせられないか、聞いてみました。
ゾウさんのじょうろが好きだそうなので、ちょっとずつ遊ぶには、じょうろが3つ必要かと思って、私もセリアでゾウさんのじょうろを3つ買ってみました。
次回プレゼントします。
音声言語があれば、さまざまな見立て遊び・ごっこ遊びができて、集中時間が長くなります。
ところがこの子どもさんは、音声言語がないので、物を扱う時間も短いのです。
集中して長く遊ぶには、大人が相手をして、一緒に水遊びする必要があります。
一緒に相手ができない時は、水遊びのオモチャの数が毎回新しく、たくさん必要です。
発泡スチロール製のお風呂でペタッとシート、「たべもの」のピースをダイソーやセリアで買って、お風呂にたくさん浮かべ、ネットに入れる遊びはどうでしょうか。
ペットボトルキャップも浮かぶと思うので、これもネットに集めるのはどうでしょうか。
パンが好きだそうなので、ペットボトルキャップに、パンの絵をカラーマジックで描いてやると、集めることを喜ぶかもしれません。
これらを用意したので、次回プレゼントします。
くもんのくるくるチャイム玉入れや食べ物の填め板
玉入れや丸型の填め板ができれば、1か所に15分くらいは座れるようになります。
くもんのくるくるチャイム玉入れや、方向のない丸の填め板がおすすめです。
セリアに「タワーボールおとし」があったので3つ購入し、連結して高さを出すことにしました。
パンの無料イラスト画像をネットからダウンロードして、2枚プリントアウトし、パンを切り抜いて、丸型の填め板の底板と円板に貼ろうと思います。
次回の療育で、玉落とし➡パンの填め板にチャレンジしてみます。
セリアに、お風呂でプカプカおままごと、お寿司の丸い填め板、美味しい食べ物もあったので買ってみました。
水遊びが好き、走るのが好きな子どもさんは、ジャラジャラ言うものも、好きかもしれません。
上下を逆さにすると、小さな球がジャラジャラと落ちていく、繰り返しのオモチャです。
パンの本も買ってみようかな。
子どもは、1人だけで遊ばせるよりは、相手をした方が長く遊びます。
下の画像のような、投げても危なくない「オーボール」を転がして、空のペットボトルを倒すボーリングなどもいいですね。
「投げる」ことは簡単だけれども、ペットボトルのピンや相手に向かって「転がす」ということは、めざす方向や、手の運動の調整が必要な、難しい遊びです。
自閉症スペクトラムの子どもは、遊びに介入されることを嫌って、手を振り払うかもしれませんが、用心深く待機して、必要な時に手伝ってあげることが大事です。
他人が遊びに介入すると、自分の計画と他人の計画と、遊び方が複雑になるので嫌うのです。
決して、お母さんや先生のことが、嫌いなわけではありません。
相手の計画を予測できず、「分からないこと」がつらいから、手を振り払うのです。
自分一人で、分かる遊び、水遊びなどを、延々と繰り返します。
玉入れや填め板をそばで見守って拍手し、「ボールだね」「入ったね」「やったー」「パンだね」「美味しいね」などと、共感の声を遠巻きに控えめに話していれば、きっと目を合わせたり、ハイタッチしたりしてくれます。
好きなトランポリン、水遊び、玉入れ、填め板の相手をすることで、共感し、仲良くなると、ストップやブレーキもかけられるようになり、お母さんの心配や苦労も減ると考えています。
まずは子どもさんの好きな確定域を、共に楽しむ時間を作りたいですね。
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