壁の電灯スイッチを使えない
93歳要介護3まで、ヤエさんは昼間は尿2回分吸収パッドを付け、夜間は尿意で2~3時間おきに自分でトイレに起きていた。
壁の電気のスイッチの意味が分からず、暗闇のままでトイレに行っていた。
天井の灯りと壁のスイッチの位置が離れているから、離れたものの関係の記憶がつながらなくなっていた。
ヤエさんの枕元に、イシグロのタッチセンサーライトを置いてみた。
しかしヤエさんには、トイレ行動の事前に灯りをつける力がもうなかった。
Aの為にその手前でBをする、ということはかなり高級な行動で、ヤエさんにはもう無理だった。
アイリスオーヤマ製ECOHiLUX人感センサー付きランプも、天井に付けてみた。
私が試すと、点灯の反応はいい。
しかしヤエさんが、トイレが済んでベッドに戻った後も3分間消えないから、ヤエさんに理解できず、ヤエさんはライトを見ていて、眠れなくさせるだけだった。
通過後10秒ですぐ消えるタイプは、アイリスオーヤマ センサーライト スリム ガーデン LSL-MS1 ブラックで、床置きの乾電池タイプしかなかった。
床置きは、ヤエさんの足元に危険だった。
通過直前に点いて、通過後5秒で消える、壁付けがいい。
枕元のタッチセンサーライト、天井の人感センサーライト、床置きライトの、どれも諦めた。
夜間の排尿起こし
これまでヤエさんは、普通の上下のパジャマを着ていた。
昼間、尿取りパッドを付けていられるので、今後のことを考えて、夜間もパッドを付けて寝てもらうようにした。
「これだと安心だよ」と勧めると、ヤエさんはパッドを付けて寝てくれた。
94歳、要介護3のお正月、ヤエさんが夜間の就寝中に、パッドが排尿で濡れると、パンツからパッドを取り出したり、暑いとパンツ・・パジャマごと脱いだりして、夜間、ベッドに失禁してしまうようになった。
ヤエさんには脱いだ記憶も失禁した記憶もないから、「暑かったら布団を剥いでね」と説明しても無駄だった。
認知のある我々ならば、寝具が暑いと寝具を剥ぐのだが、ヤエさんはなぜかパンツを脱いで布団やケットをきれいにかぶっているのだった。
ニトリの防水ベッドパッドと防水シーツは、幾つも買って便利だったが、毎日の洗濯の時間は買えなかった。
94歳、2月から、私は仕事に出かける前の膨大な洗濯を避けたくて、ヤエさんにパンツを脱がれまいとして、ヤエさんと同室で寝起きするようにした。
本当はベッドを2つ並べて、ヤエさんがパンツをもぞもぞと脱ぐ動きに対応したかったが、狭い我が家は物理的にベッドを並べられなかった。
【すぐに使える寝具セット】アイリスオーヤマ ベッド 折りたたみベッド コンパクト
ヤエさんのベッドの脇のジュータンに、布団を敷く幅もなかった。
仕方なく同室の8m離れた場所で眠り、夜間、ヤエさんを起こしてトイレで排尿させるようにした。
ヤエさんが尿意で起きる2回と私が自分の尿意で起きる1回と、合わせて一晩に3回起こしてトイレで排尿させた。
排泄に関する本当の介護が始まり、介護が待ち受ける家に帰ることが、私は嫌になった。
皆、投げ捨ててしまう蒸発とは、こういうときに起きるのかもしれない、と思った。
ヤエさんは2~3時間おきにトイレへ起こしても、失禁シーツ交換世話があっても、またすぐ寝てくれた。
これはとても助かった。
しかし私は、シーツ交換の世話時間が長いと、そのまま目が覚めてしまい、ようやく明け方まどろむと、新聞配達のバイクの音や、近所の犬の鳴き声で眠れない日々が続いた。
ヤエさんが下半身脱いでしまう失禁騒ぎは、お正月から95歳の11月まで、10か月で30回ほど続いた。
バスタオル1~3枚で夜間の暑さの調整をしてやると、脱がない夜が増えた。
ニトリのNクール・ヒンヤリケットも、役立つ夜があった。
私の睡眠の分断は10か月で済んでよかったが、これが数年続いたら、介護離職しない限り、介護うつや介護殺人が起きても不思議はない。
新聞に、介護虐待や介護心中の記事が報道されるたびに、他人事ではないと思った。
デイサービスからも、ケアマネージャーさんからも、つなぎパジャマの提案は全くなかった。
介護者の睡眠を助けてくれたフドーのつなぎパジャマ
私は、大学卒業後に勤務した特別支援学校時代に、カタログで大人用の弄便防止用の繋ぎパジャマを知ってはいた。
にもかかわらず、それをわが家の介護に応用することを、全く思い出せないでいた。
ヤエさん95歳、10月、ようやくアマゾンで検索し、介護用つなぎパジャマを初めて購入した。
最初に購入した竹虎ヒューマンケア製のつなぎパジャマは、ホックがマジックテープだったから、ヤエさんは夜中に簡単に外し、脱いで失禁し、無駄になった。
2つ目は、幸和製作所製のタッチホック式だ。
タッチホックが胸元にあった為に、器用なヤエさんは夜中に外し、脱いで失禁した。
11月、3つ目に購入したフドー製のタッチホック式つなぎパジャマⅢ型が当たった。
タッチホックが、足元にある。
竹虎ヒューマンケア フドーねまき3型 スリーシーズン コーラルピンク S
寝ていて、ホックが手から遠い。
しかし企業の製品工夫より、ヤエさんの脱ごうとする原始的な力が勝り、フドー式Ⅲ型のものも胸元のチャックの接合部を壊し脱いで失禁した。
また、足首のタッチホックの、私の着脱世話をじーっと見ていたヤエさんは、目を疑う記憶の良さ?で、夜中に足首のタッチホックを外し、脱いで失禁した。
55年近く美容師をしていたからか?手がとても利くヤエさんだった。
つなぎパジャマに慣れるまでに、1~2か月かかった。
家庭では、つなぎパジャマを着せることが、虐待とは思わない。
つなぎパジャマは虐待か?
このあと、2018年1月にヤエさんを介護老人保健施設へ入れた時、このつなぎパジャマを持っていったら「拘束着は虐待になる。普通のパジャマを持ってこい。」と、30歳ぐらいの男性の介護士長さんが私に言った。
介護に疲れ果て、それでも施設に入れることを悲しんでいる家族に、なんとか工夫してお互いに睡眠を取ろうとした結果のつなぎパジャマを、「虐待だ」と一括した介護士長の人間性を疑った。
ヤエさんが着ることを拒否して嫌がるのを、無理に着せたら虐待だ。
しかしヤエさんは30回とも、ビショビショになったベッドに、困惑した顔だった。
就寝前に「今夜は何色がいいかな?」と聞くと、指さしてつなぎパジャマの色を選んだ。
つなぎパジャマのチャックの長さや、ホックを見てニコニコし、私に着せてもらうのが嬉しそうだった。
95歳、要介護4と再認定され、12月から、ようやくタッチホック式つなぎパジャマに慣れて、脱がなくなった。
脱いでしまう難問が解決し、退行の方向ではあるが、排泄介護がひと山越えた感じがした。
ヤエさんは、暑いとタッチホック式つなぎパジャマでも脱ごうとするから、夏用のサッカー生地のつなつなぎパジャマのSサイズを6枚購入した。
インターネットのアマゾンで、1枚6500円位で購入できる。
夏用はSサイズでも襟ぐりが広いので、暑いとヤエさんは襟から片手を抜き出していた。
96歳になってからは、ヤエさんも全部脱いで裸にならず、我々同様に暑いと両手を出して寝ている。
この当時はわからず、今になって想像できるのだが、夕食後のユベラ(血流改善ビタミンE)とジェットバス入浴で身体がとても温まり、ヤエさんは身体が冷えないうちに寝るので、就寝後、私が考えているより寝具が暑くなってしまったのだったのか?と思う。
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