12 クーちゃんの介護
朝起きるとクーちゃんは、ペットステップの上で私を見つめる。

日なたで身体をマッサージしてくれと待っているのだ。
私がそばに行くまでじっと見つめている。
見つめることがクーちゃんのことばだった。

クーちゃんは自分ではもう身体全体の毛繕いは出来なくなっていた。
しかし痩せた老体には毛梳きの櫛は痛いらしかった。
ダイソーで、シャンプーした髪の毛を速く乾かせるという、マイクロファイバー手袋を見つけて、そのふわふわ感がクーちゃんの身体に優しい気がした。

それで毎朝マッサージしてやると、クーちゃんは目を細めてうっとりとした。
全身の毛繕いはもうしないが、食後の口周りはクーちゃんが自分の手を舐めながらきれいにしようとするので、口内炎の膿とちゅーるの練り状でクーちゃんの痩せた手がベトベトした。
南里秀子氏の「老猫専科」にあったバイオウィルスクリアで口周りと手を拭いた。

目の周りも丁寧に拭いてやり、目薬を付けた。
ユニ・チャームのピュアウォーターシルコット、99%純粋のウェットティッシュがとても役に立ち、クーちゃんの介護に欠かせなかった。
同じく「老猫専科」にあったアイオニックシルバーも購入して使った。

免疫力をあげるのだという。
元気なころから飲み水に混ぜて飲ませてやればよかった。
クーちゃんは食欲があったが、カリカリを食べると血が出るようになった。
血が出たら食事をやめて、水を飲ませてやり、口を拭いてやった。
それでもクーちゃんは口腔の右側で食べようと努力していた。
次第にいつものカリカリを噛むと毎回大量の血が出て、カリカリは無理になった。

次に子猫用や老猫用の焼かつお・焼きささみも噛むのが難しくなった。
更にはカツオ味のウェットフードを細かくつぶしても噛めなくなった。
テリーヌもやってみたがカツオ味がなくてクーちゃんには好まれなかった。
元気なころから好んで食べていた、いなばのチャオプチはまだ食べられるようだった。

テレビCMで流行り出したチャオちゅーるもカツオ味だと食べてくれた。
年が明けて、クーちゃんの栄養が心配になった。
カロリーが高いエナジーちゅーるのカツオ味を見つけた。

呑み込めばいいようなそれらをクーちゃんは食べてくれた。
毎朝、毎夕、8本ずつくらい食べてくれた。
クーちゃんが食べてくれると、このままずっと生きられるようで嬉しかった。
カツオ味のボーノスープもたまに飲んでくれた。
人間のリポビタンキッズドリンクやアリナミンRオフドリンクも飲ませた。
食後は猫の習性で、自分の手を舐めては口周りをきれいにしようとした。

口内炎と薬と餌でねばねばした口で舐めるから、手の毛がドロドロになった。
バイオウィルスクリアをスプレーした、純粋ウェットティッシュで毎回拭いた。

動物病院では私が願い出ると化膿止めの注射もしてくれた。
朝預けて夕方迎えに行き、帰るとクーちゃんはフラフラして歩けなかった。
痩せて体力がないクーちゃんにもう化膿止めの強い注射はきつかった。
医療でクーちゃんをいたずらに苦しめないと言いながら私はクーちゃんを延命しようとした。
注射はもうできないので、化膿止めの粒の薬を貰った。
粒薬を飲めなくなった親の介護の時Amazonで購入した薬の粉砕機で、粒薬を粉にし、チャオちゅーるに混ぜて飲ませた。

クーちゃんは口内炎の膿を振り払おうとして、ときどき首を左右に振った。
すると、口内炎の膿と粘着性の薬が、部屋中に飛び散った。
窓ガラスはすぐに拭けば割合きれいになったが、板壁は乾くと取れなかった。

漸く思い付いて、私は家中の壁にペットシーツを貼った。

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