25歳のまさや君には、まさや君の、生活のペースというものがある。
我々がよく言う「マイペース」というやつだ。
まさや君は、目覚まし時計を使ったり、柱時計やテレビのデジタル時刻を見たり、お母さんに声をかけられたりして、外の生活に合わせるということをしている。
小学生から高校生までは、何の疑いも持たず、ひたすら、まさや君もそうして来た。
高等部を卒業して、作業所に就職し、学校時代よりは、行事などの変化の少ない、平坦な職業人生活が、18歳からまさや君にも始まった。
文字によるスケジュールの可視化
お母さんが、まさや君についての4つ目の悩みとして、「最近、予定されている時刻に遅れがちだ。とてもスローペースになった。」と話してくれた。
対応の1つ目は、読み書きのできるまさや君に、文字で予定を見せようと考えた。
お母さんの脳内にあるスケジュールを、お母さんがその都度まさや君に声をかけるだけでなく、脳外の文字で見せ、文字でスケジュール全体の見通しを、まさや君自身に持ってもらおうと思った。
全体の見通しが持てると、間に合うように、まさや君も急ぎやすいのではないか?と考えた。
文字カードにして、お母さんに協力してもらい、朝、使ってもらった。
デジタルタイマーとタイムタイマーによる時間の見通し
対応の2つ目は、お母さんに急かされるのでなく、まさや君自身に残りの時間の見通しが立つといいと思って、減っていく時間が見えるタイムタイマーを探した。
Amazon にあった。
普通のデジタルタイマーの時刻表示の文字の大きいものと、減っていく時間が見えるタイムタイマーを、まさや君にプレゼントした。
これもやはりお母さんに協力してもらい、朝、おうちで使ってもらった。
おうちで使い慣れたところで、可能であれば作業所の指導員さんにも、普通のデジタルタイマーとタイムタイマーを見せて頼み、お昼休みの時間の見通しに使ってもらうようにした。
お母さんからの作業所情報では、以下の2点があった。
①朝、作業所に到着して、ロッカーのところで作業着に着替えるときに、スローペースになった。
➁お昼をとてもゆっくり食べるので、午後の作業開始に遅れる。
作業所で、毎日指導員さんがタイマーをセットしてくれて、お昼に使っているようだ。
たまに、月に1~2度、指導員さんがタイマーをセットして声をかけても、まさや君が自分でタイマーを止めてスローペースでいることがあるそうだ。
指導員さんは、そういう時、そのまさや君の行動を、マイペースとして認めてくれているらしい。
ありがたい対応だ。
私も「遅れてもいいや」「遅刻してもいいや」と思って、仕事に間に合わせることよりも、遅刻を選ぶときが、たまにある。
私もまさや君も、同じ判断を取る仕組みだ。
まさや君も私と同じに、遅刻したら「遅れてすみません」と言える機会にしたらいいように思う。
急ぐ時とのんびりする時の使い分け
私もお母さんも、まさや君を外側に合わさせることばかり努力しているが、このブログを書きながら、それ自体が怪しいのではないか?と思った。
まさや君も、「僕は外側に合わせてばっかり」と思って、嫌気がさして、超スローペースになっているのかもしれない。
まさや君に「合わせろ合わせろ」というだけでなく、急いで合わせる時と、のんびりゆったりしていい時がある、ということを可視化することが大事だと気づいた。
朝、お迎えのバスに乗るまでと、作業所に着いて作業着に着替えるときと、お昼休みを終えて午後の仕事が始まるときが、まさや君の3つの急ぐ時間帯だ。
「その3箇所は、急ぐように努力しよう。
しかし作業所から帰宅してからは、ゆったりと夜の予定をこなせば良い。
土日の休日も、自己決定でゆったりと過ごせる。」
急ぐときとのんびり、両者を言語で意識して、可視化して、まさや君に知らせよう。
次回、まさや君と学習する時、まさや君に、朝~夜の12時間を描いて、
1.急ぐとき➡①作業所に出かけるまでの朝の1時間、➁作業着の着替え、③お昼の1時間
2.のんびりしていいとき➡夕方5時~夜10時に寝るまでの5時間、土日
「1の①➁③は時刻を気にして急ぐが、2は帰宅したらまさや君のペースでのんびり行動できるよ」と、急ぐ時と急がなくていい時の図を見せて、まさや君と脳外共有したいと思った。
誰でも、外の世界に間に合うように時刻を気にしながら行動するときと、帰宅してのんびりと過ごすときの2つがある。
私もお母さんも、色々な問題に突き当たるとき、「まさや君が合わせるべきだ」という風に考えがちだ。
しかし、成人してからペースがとてもスローになったまさや君を見ると、「まさや君が合わせるべきだ」という考えこそ、偏見ではないかということに気づかされる。
まさや君のスローペースは、私の偏見への警鐘に思える。
まさや君の好きなこと、まさや君の願い、まさや君のペース、まさや君の自己決定を、ご家族とともに、許される限り、これからも大事にしていきたい。
まさや君の「ipad 音声アプリ『かなトーク』」については、次回投稿したい。
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