教育仮設32-1 絵によるソーシャルスキルの脳外イメージ
小児科の療育に通ってきている、3歳10ヶ月のL君のお母さんから、身につけさせたい生活スキルの連絡があった。
幼児は、自己モニターが難しい。
例えば「順番」と聞いて、順番というイメージが持てれば、そうしようとできる。
しかし、「順番」と聞いても脳内イメージが持てなければ、言われても守れない。
「順番」いう言葉と状況を、絵で脳外に見せて、言葉と状況をお互いに確認する学習が大事だ。
イメージを、脳外に見せてくれる、絵カード集がある。
保育園の巡回相談でも、支援会議で紹介し、保育士さん方に評判がよく、購入してもらえることになった。
昨年12月、「この絵カード図鑑は、切り取ってバラバラにして使えるのでいいですよ」と勧めたら、L君のお母さんもすぐに購入してくれた。
普段、お家で、お母さんが「生活絵カードずかん」を、読み聞かせしてくれている。
お母さんが現在希望する、L君に身につけさせたい生活スキルは、「話す・聞く・見る・静かにする」「立つ・座る・走る・止まる・飛び出す」「貸して・どうぞ・おしまい・いっしょ・片付け」「割り込む・順番」だった。
教育仮設32-2 ソーシャルスキルに関心を持つための填め板
そこで「3歳児のソーシャルスキルトレーニング填め板」の作り方の手順と同じく、お母さんが希望するスキルをボール紙のパズルにした。
用意するものは、市販品のパズル、スキル絵カード2枚、はさみ、アラビックヤマトのり、丸型の瓶、鉛筆である。
絵カードの絵は、イラストレーターのわたなべふみさんも、ネット上で無料提供してくださっている。
イラストレーターわたなべふみ|子ども、保育、児童書、学校教材、教科書、医療、福祉などのお仕事制作とイラスト素材を制作しています
パズルの形は、円形が、方向がなく、最も入れやすい。
2021年1月9日投稿の「ソーシャルスキルトレーニング填め板」は、木製の板で作ったので、厚みもあり、手触りもよく、感覚運動を満たしたいL君の発達年齢にぴったりでヒットした。
教育仮設32-3 ソーシャルスキル絵パズル
今回のボール紙パズルの土台だけ出して、左から右へ、ひとつずつ絵を説明していくと、L君は、私の絵の説明をよく聞いてくれた。
その後でパズル片を一枚ずつ渡すと、絵合わせをしてくれようとはした。
しかし、木製のはめ板のように、スーッと填まらない、入れる時に周囲がきついボール紙パズルだったので、L君はイライラした。
木製の填め板だと、手つきが柔らかく・静かな・優しい操作になる。
薄くて入れにくい紙パズルだと、手はバンバンと叩く、乱暴な仕草になった。
スーッと入る木製の填め板では、興味を持って、①入れながら➁絵の内容のお話を聞く、2つのことを同時にしてくれた。
スーッと入らないボール紙パズルでは、絵の説明より、パズル片を入れることの1つだけに夢中になった。
24枚のカードの絵が多すぎ、隣接しすぎていていて、L君は見分けにくいのかな?とも思った。
今回は、市販品のボール紙パズルを使った為、木製のパズルほどはヒットしなかった。
教材を、紙パズルで済ませてはいけないな、と思った。
L君の年齢では、まだまだ木製の填め板が必要だ、と思った。
KADOKAWA(角川書店)の「生活絵カードずかん」(岩澤寿美子監修、イラストレーターはカモさん)で、木製のソーシャルスキルトレーニング填め板が、発売されると良いなぁと思う。
感覚運動を満たしたい年齢の幼児や、発達障害の児童には、木製の填め板になっていることが、最も興味を持たせるからだ。
感覚運動と発達順序で言えば、木製填め板➡発泡スチロールパズル➡紙パズル➡磁石絵合わせカード➡ラミネートカード透明ポケット➡絵カード➡カルタ➡図鑑➡絵本➡身振り➡ことば単語➡文章の順に難しくなる。
新品のボール紙パズルは硬いので、L君は入れにくかったかもしれない。
お家に持ち帰って、やってもらうことにした。
扱いを重ねて、入れやすくなると、もう少し楽しんで、使えそうだ。
お母さんは、喜んで持って行ってくれた。
L君が一人で楽しむ時は、自由に絵の重ね合わせを楽しめば良い。
お母さんが並んで相手になれる時は、一番上の段の6枚のカードを選択肢としておいて、パズルの左から右へ、上から下へ、順に絵を探して填めるようにお願いした。
子どもは、手にしたものからランダムに収める、という操作になりやすい。
「環境という枠組に適応して合わせる」ということのために、填め板学習も、「ここに入れてください」という一箇所を指定し、指定に応じて探し出す、ということを繰り返す。
左から右へ、上から下への探索や、スキャンニングがうまくなるよう、「これを探してね」と、空間の形成を大人が意識したい。
相手が丁寧に係わると、指定された環境に合わせる操作、ができるようになる。
将来、算数は左から右、国語は上から下という、空間概念を今から形成しておくためである。
次回からはまた、木製のパズルをL君に制作していきたい。
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