書くことはどうして難しいのか?№1

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書くことは、文字を書ける大人にとっては、簡単なことに思えます。

ところが、6歳になっても、鉛筆を持つことや、文字を書くことが、難しい子どもたちがいます。

書くことは、どうして難しいのか? 理由をご紹介しますね。

書くことは、目の見え方、手の運動、文字の分解と合成、つぶやく言葉の力などが関係します。

今回は、見え方と、手の運動について、ご紹介します。

見ることの複雑さを知って、子どもたちの苦労に共感しましょう。

眼球運動の前提になる注視

研究によると、生後20分の赤ちゃんは、向かい合った時、原始模倣という、舌出し模倣が可能になります。

2000年NHK放映の原始模倣の画像 ワシントン大学メルフォス教授の実験

相手を見つめる「選好注視」、「模倣」の舌出し運動、そういう「注視と模倣」が先天的に備わっている赤ちゃんたちです。

生後2〜4ヶ月頃の赤ちゃんが、自分の手をじっと見ているハンドリガードという「注視」があります。

はいチーズ!クリップのハンドリガードの画像から

視力が発達して、焦点が合うことを楽しんでいる行動です。

先天的な発達障害があると、脳機能に渋滞があって、上記の注視や模倣が難しい場合があります。

注視力を育てる遊び学習には、玉転がし、玉入れ、棒差し、だんご挿し、スリット通し、はめ板、積み木、ブロック、紐通し、ビーズ通し、シャボン玉を追いかける、金魚すくい、ボールの受け取り、迷路たどり、などがあります。

着替えのボタンはめや、ファスナーのスタート部分が苦手な子どもさんを、「不器用」とくくって片付けず、その子の「注視力」を育てる、上記の遊び学習を大人と一緒にやりましょう。

猫ちゃんブログでも、注視や追視、目と手の協応の学習教材を、紹介しています。

玉入れ教材の紹介

同時処理の跳躍性眼球運動と、継次処理の追従性眼球運動

眼球運動は4つあるそうなのですが、ここでは、書くことに必要な、継次けいじ処理の追従ついじゅう性眼球運動を、主に紹介します。

跳躍ちょうやく性(衝動性)眼球運動は、素早い視線移動で、パッと判断する、同時処理の眼球運動です。

瞬時に、文字の全体を判断して、文字を読むことに必要です。

ゲームが好き、ゲームが得意な子どもは、パッと判断する同時処理の、跳躍性眼球運動の力があります。

マークを覚えたり、充実図形のマンガアニメが好きなのは、パッと見て分かって楽しいからです。

反対に、追従性眼球運動は、対象を滑らかに追いかける、時間をかけた追視の運動です。

追従性眼球運動は、文章の行を順にたどって、文字を正確に読んだり、書き順を正確にたどって、文字を書いたりすることに使う力です。

ひらがなや漢字のような、細くて複雑な線図形の見分けは、追従性眼球運動や、順序よくつぶやく言葉の力がないと、難しくなります。

教科書を読むことが苦手、書き順をまねすることが苦手な子どもさんは、時間を追っていく継次処理の、追従性眼球運動が苦手な場合が多いです。

詳しくは、猫ちゃんブログのこちらでも、目の機能と漢字記憶について紹介しています。

漢字の覚え方を漢字練習帳に書く漢字記憶法2

全身運動と手の運動

赤ちゃんの時のハイハイ、つかまり立ち、歩行、走る、階段昇降、ブランコ・滑り台・うんてい・三輪車など、保育園や公園で、身体全体で遊ぶことは、発達の土台であり、とても大事ですね。

先天的な発達に渋滞があったり、全身を使った遊びの経験が少ないと、書字の苦労にも繋がります。

手の運動には、0歳から5歳までに、以下のような手の発達の順序があります。

哺乳瓶をつかむ、手を口に入れる、左右の手で持ち変える、両手でたたく、蓋を開ける、殴り書き、積む、容器から容器へ移す、1列に並べる、ぐるぐる書き、両手でぶら下がる、直線を書く、丸を書く、ハサミで切る、ボタンをはめる、バツを書く、はずむボールをつかむ、折り紙を折る、などです。

5歳を過ぎると、三角、四角、斜線、波線、カーブ、一筆書きの星、などを真似して書けるようになり、6歳になると、カタカナ、数字、アルファベットの大文字、ひらがな、などを真似して書けるようになります。

一般的な発達の力を持つ子どもさんは、上記の、手の運動や書字模倣が、楽に起きますが、発達障害や発達性協調運動症があると、本人は書字に苦労します。

文字を書くことが苦手な時、苦手なことを直そうとせず、本人が好きなこと、得意なことの中で、目と手の使い方を教えてあげるとよさそうです。

レゴをはめるコツ、レゴを外すコツ、などを言語化してあげましょう。

大好きなお手伝いの、食器洗いのコツ、でもいいです。

手足の協調運動、目と手の協応、マス目の視空間認知が苦手な健ちゃん

健ちゃんは自閉症で、運動が苦手です。

ひらがなをあっという間に覚えて、7歳で書けます。

印刷のように、いつも決まった形のひらがなを、見えているマス目の四角いっぱいに書きます。

マス目の線に近い1~2ミリを、ほどよく空けて書くということができません。

マス目は見えるが、線のない空間は見えない、健ちゃんの見え方をこちらは知ることになります。

健ちゃんと公園に行って、健ちゃんの好きなカマキリの滑り台の、ロクボク階段を昇って、滑り台を滑ります。

昔は体育館の中にロクボク(肋骨のような木)という昇りバーがありました。

ロクボクのバーを手でつかみ、右手と左手を交互に出しながら、左足と右足を連動させて出す、この四つ這いのような垂直運動が健ちゃんは苦手です。

この画像はインターネットからの画像で、健ちゃんではありません

健ちゃんは、上を見て昇れずに、下を見て昇るので、1段上がるたびに、ロクボクで自分の頭を打ってしまいます。

健ちゃんは、自分の頭を打って痛いので、やや遅れて昇る、私の頭をたたきます。

はじめは、健ちゃんが私の頭をたたく意味がわからなかったのですが、よく見ると、健ちゃん自身が自分の頭をバーで打っている姿が見えました。

垂直四つ這いのような、手足の協調運動が難しいんですね。

1段ずつ昇るたびに健ちゃんは頭を打ち、「痛いよ」と言う代わりのオウム返しで、私の頭をたたきます。

私の頭をたたく行動は、「手足が楽に連動せず、昇る垂直四つ這いが難しく、頭を打って痛いよ」と言っているのだと思いました。

滑り台に昇る、ロクボク昇りの運動がこれだけ難しいのですから、健ちゃんにとって、文字を書く視知覚運動の難しさを想像できます。

健ちゃんには、マス目の中にもう一つの点線のマス目を書いて、開ける空間を見せました。

「青いマス目よりも小さく書きます」の意味で、灰色の枠を見せました

運筆、なぞり書きの手前の、見え方と協調運動の話が長くなりましたが、次回、運筆、なぞり書き支援について、ご紹介します。

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