教材No.16-1 パッと見てわかるマークから 線図形の分解と合成へ
子どもたちは、分解と合成の要らない、一瞬にしてパッとわかる、マークをよく記憶する。
「オス=♂」🚻「メス=♀」マークが発展して、「男」「女」などの漢字に至る。
梅津八三が「言葉の構造」で整理した考え方で分けると、構成信号系➡型弁別信号系だ。
幾何図形の記号も、10種類ぐらいまでであれば、割合判別しやすい。
数字も基本的には10種類、それを組み合わせていくので、数字を好む子もいる。
ひらがな・カタカナ・アルファベットは、線図形を見分けて記憶する数だけでも、格段に多い。
ひらがなは、清音だけで46個、そこに濁音半濁音25個・長音・促音・拗音24個が加わる。
濁音・半濁音のルールは、濁点゛と半濁点゜の2つ、拗音のルールは、イ段に小さなゃゅょが加わる3つのルールだ。
わずかでも共通するルールがピンとくる子は記憶が楽だが、 95個全て単独で記憶しようとする子はとても苦労する。
そこで記憶を助けるのが、原始的な記憶である50音表の位置記憶と、50音表タイルを手で操作して出し入れする運動記憶だ。
プリントだけで、目と口と耳だけで記憶することが、難しい子どもを助ける。
次に「め・て・は」のように、1音1文字で意味があるということを皮切りに、「あし・くち」のよううに、ひらがなを組み合わせて、言葉というものを表記していく。
ひらがな文字を組み合わせて言葉を表記し、カタカナ文字を組み合わせて言葉を表記する。
教材No.16-2 漢字の部首名が言えると複雑になる合成記憶を助ける
そしていよいよ漢字だ。
漢字にも、一文字で意味を表す、象形文字というものがある。
月火水木金土日山川田石足虫目手耳口立などだ。
象形文字の他には、指示文字・会意文字・形声文字がある。
漢字の部首の偏になっているものには、1年生で習う象形文字の訓読みが多い。
月火水木金土日が、月へん、日へん、さんずい、木へん、金へん、土へん、日へん になる。
教材No.16-3 漢字の分解と合成にへんとつくりのカードを使う
例えば「教」は分解して、土、ノ、子、ノ、一、ノ、\ と覚えねばならない。
この辺りになると漢字は、マークや幾何図形をパッと見で覚えるというレベルでは、記憶が難しくなる。
分解と合成力と、言語力が必要となる。
例えば「教」を使った熟語には、「教育」「教室」「教科書」がある。
漢字1文字にへんとつくりの分解と合成がある上に、熟語は、漢字2~3文字の組み合わせという合成になっている。
線図形が楽に書け、漢字の分解と合成の仕組みとルールが、楽にわかった子どもには、苦労ではないかもしれない。
しかしカタカナの時に、斜め線を書くことが難しかったり、漢字の偏「孝」を「土、ノ、子」と分解・暗唱・合成できない子どもには、漢字練習は線分を写すだけの作業となる。
そして何よりも、漢字の意味を取るということが楽にできないと、記憶を助けない。
「教育」「教室」「教科書」は、「教育とは教え育てること」「教室とは教えてくれる室内」「教科書とは科目ごとに教えてくれる書物」と、意味がわかれば記憶しやすいが、意味を取る言語レベルがないと漢字はちんぷんかんぷんになる。
そこで、脳内作業だけで、プリントだけで、学習させようと思わないで、漢字タイルや漢字部首カード等を使って、脳外で手の操作運動で構成させる経験をさせ、プリントで仕上げをすると良い。
通常学級でも個別指導でも、空書きのような一画一画の指の運動も良いが、部首カードの裏に磁石をつけて、黒板で先生が、新出漢字をへんとつくりで合成して見せてくれると記憶に残りやすい。
そのとき、全員で、部首名を言えることが、分解と合成のキーポイントになる。
また、へんが同じでつくりが違う、つくりが同じでへんが違う、そういう新出漢字と似ている漢字を先生が黒板に書いて、同時提示で説明してくれると違いが記憶に残る。
似ている漢字の相違点を、暗唱できるようなことも必要だ。
教材No.16-4 選択肢のあるプリントを使う
プリントは下の左から2番目の画像のように、選択肢を与えて、比較・照合、正答する方が、脳が活性化して、注意集中が増し、意欲的になり、結果として記憶しやすい。
「下村式となえておぼえる漢字の本」の改訂版第4版。
教材No.16-5 漢字の分解合成が 英単語音節の分解合成につながる
漢字記憶が苦手だという子どもが中学生になると、英単語の記憶が難しいということにつながっている。
アルファベットは26個。
ひらがなの読み書きの時も、➀行ごとに空で言えるようになること、そして次に➁ひらがなを行ごとに並べたり、③行ごとに書けるようになることが必要だった。
アルファベットの覚え方も、まずは❶abcの歌で26文字が言えるようになることが必要だ。
そして身の回りでよく見かける❷大文字が書けるようになること、そして大文字を基礎に難しい❸小文字が書けるようになることが重要だ。
50音表タイルと同様に、アルファベットもアルファベットタイルで位置を手がかりに出し入れ運動して記憶を助けると良い。
アルファベットの線図形の区別では、bd、mn、hnr、pqgなどが似ている。
bdは、親指と人差し指で、〇の☝輪を作り、残りの3本指を立てて縦棒に見立て、左手右手の輪を向かい合わせると、aの方向の左からbdだ。
bdの向きが分からない中学生に、机の下で、ひざの上で、上記のようにやって、判別するように言う。
ローマ字読み、アルファベット読み、その他の読み方
読みでは、小学校でローマ字の母音の「aiueo アイウエオ」を先に習うので、母音のローマ字読みと、英語のアルファベット読み「エイ・アイ・ユー・イー・オウ」と読み方が混乱する子がいる。
ローマ字「イ」「エ」が先に入ったために、特にiとe のアルファベット読み「アイ」「イー」が入らない子がいる。
漢字の音と訓の、2通りの読み方が入らないのと同じだ。
一対一対応は楽だが、一対多の対応は非常に難しい。
aが入っている英単語の発音には、aを[ア][エイ][オー]と読む、3種類がある。
at,ate,allなどである。
音訓の2種類以上の、複雑な読み方だ。
記憶がお手上げになっても最もな、複雑さだ。
それを助けるには、タイルやカードで、英単語の音節の分解と合成をする。
子音1文字はウ段で読む
bブ,cク,dドゥ,fフ,gグ,cク,hフ,kク,lル,mム,nヌ,pプ,qク,rル,sス,tトゥ,vヴ,wウ,zズだ。
子音1文字はウ段で読むというルールを説明しなくても身に付けてしまう子と、説明しても他人からの言語説明ではルールを取り込めない子がいる。
意味をつかむことは、その子の中でしか、起きない。
そうするのに、脳外にカタカナ全体を文字タイルで見せて、「子音1文字の読み方はウ段だ」と本人に発見させる必要がある。
口の形を大げさにして、「ウ・ク・ス・ツ・ヌ」と、口の運動でも記憶を助けるようにする。
松香フォニックスルールカードには、音節ルール70とかルール103とかあるが、脳の記憶容量が必要となる。
教材No.16-6 カタカナの自由自在さが 英単語音節分けの基礎
英単語は、wo/n/der/fu/l と、音節でスラッシュ線を入れて区切って、スラッシュ線がなくなっても英単語を wo n der fu l と音節で区切って見え、読めるようになることが重要だ。
それには、英単語の音節ごとに、カタカナが振れると良い。
「ワンダフル」と連続してカタカナを振るのでなく、「ワ・ン・ダ・フ・ル」と音節の真上か、真下にカタカナを分けて振れると良い。
拗音のカタカナ表記が自由自在にできない子どもは、英単語記憶が重労働になる。
小学校で会話の英語が大好きだった子どもも、中学の読み書きで英語を嫌いになることがある。
英語の読み書きの土台には、➀カタカナの自由自在さ、➁漢字の音訓のような2通りの記憶力、③漢字のへんとつくりの分解と合成力、④熟語のような漢字の分解と合成力、⑤Wednesdayをウエドネスダイとこじつけで覚える言語力、などが必要である。
楽に習得した人が、習得を苦労している人について理解することは、なかなか難しい。
子どもと学習する時、いつも、「こんなに複雑なことをやっているんだね」という発見をする。
それが、子どもに学ぶということだと思う。
複雑な学習を、脳内操作のプリント学習だけで記憶させようとしないで、漢字記憶も英単語記憶も、タイルやカード等を使って、脳外で手の運動操作で構成させると、記憶を助けると理解して、教材を工夫して欲しい。
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