教育仮設No.1-1 梅津八三の接近仮設にならったアプローチ
梅津八三の教育の接近仮設にならって、 (梅津は接近の足場となる仮設という意味で「仮設」を使う)
➀現勢の保障、➁同行、③確定域の拡大、④踏み出し、をアプローチの柱としている。
通常学級の低学年や、情緒特学で、机と椅子に着席しにくい子どもさんがいる。
机と椅子に座らない子どもさんと付き合う時、子どもへのアプローチを、もう少し具体的に書けば、以下のようになる。
- 回避の現勢を保障し、緩衝行動に同行する
- その子の好きなもの、確定域を準備する
- 触れる教材で、運動感覚を満たす
- プリントやノートでなく、ホワイトボード・タイル・単語カード・付箋紙などを使う
- 目で見てわかる教材で、踏み出しを狙う
- わかるように選択肢を提示する
- できるように、例題や助走問題を行なう
- 手で操作しながら、解答できる課題にする
- 比較・選択・修正を、脳の外で行なえる課題にする
- 鉛筆で書く負担が少ない課題にする
- 考えること、解答することに集中してもらい、メモ書きや書くことは大人が行なう
- SOSや疲労を伝えるカードを用意する
- 難しいことに共感し、わかったこと、できたことを共有する
教育仮設No.1-2 いったん行動が展開すれば起きにくい行動も起きる
Cくんは、いつも取り掛かりに苦労している。
学年相当の課題が難しいのだ。
ひらがな・カタカナ・漢字などの「脳内記憶による書き」が最も難しい。
難しいことに取り組まねばならないと思うと億劫になり、Cくんが鉄棒から離れないのももっともだ。
私もパソコンで書類を考えて書かねばならないと思うと嫌になり、メールをチェックしたり、Yahoo ニュースをネットサーフィンしたり、おやつを食べたり、掃除機をかけたり、紙類の片付けを始めたり、教材の整理をしたり、今しなくてもいいのに、自分が最も起きやすい、楽な緩衝行動を、色々とやり始める。
夕方になり、夜になり、いよいよ締め切り時刻が近づくと、やっと立ち向かう気持ちになって、パソコンの前に座り、いじりやすい年賀状の作成なんかしてみてから、書類書きに移っていく。
かくいう私も、ギリギリ派だ。
書き始めてしまえば、書類は1時間もしないで書き終わる。
何度もそう経験して、取り掛かれば早いとわかっていても、開始の行動になかなか取り掛からない。
つまり、私にも、回避の行動があり、緩衝行動があり、伴奏行動や変奏行動があり、確定域から革生行動へと移っていく。
Cくんと全く同じ行動のしくみだ。
私は、パソコンでの年賀状作成のような、楽にできる行動から、億劫な書類書きへと移れる。
私の場合も、苦手な行動に近い行動で、楽に起きる行動が重要らしい。
教育仮設No.1-3 指導例1:教室内の隅の鉄棒が基地のCくん
どのような工夫をすれば、 Cくんが学習に取り掛かりやすくなるのか、最近Cくんの国語の個別指導場面に1時間関わった。
5分休んで、6時間目が始まったが、Cくんの基地は、休み時間に引き続き、教室内の鉄棒だった。
回避の現勢を保障して、鉄棒からCくんが踏み出してきやすい教材を、目で見てわかるように提示することが大事だ。
気持ちは幼く、学力は低い。
おそらく、課題は目でパッと見てわかればやるが、難しかったり億劫だったりすれば、取り組みから逃げる。
先生が予定していた国語のワークを見せてもらい、私はいつも持ち歩いている付箋紙に、漢字の解答の選択語群を書いた。
Cくんの鉄棒まで、ワークと語群を持って行って、「Cくん、これを教えて」と言って、1問目と2問目の解答付箋紙を張り付けて見せ、3問目からCくんに、付箋紙の漢字を選択解答してもらった。
「椅子に座らない」と、こぼす先生がいるが、先生が鉄棒まで行ったら良い。
Cくんが解答を知らない様子の時は、「これだよ」と、すぐに手伝った。
分かると注意集中は持続するが、わからないと意欲は落ちるからだ。
大きな設問2つほどを鉄棒の上で行ない、設問3つ目からは、Cくんを「問題できたよ。おいで」と机のところに呼んで、机で選択語群から答えを選択対応させた。
私が問題を作る間、Cくんは基地の鉄棒にいる。
付箋紙の漢字選択肢から、漢字を選ぶことができるので、次は、漢字の部分的な書き足しならできるのかなと思って、部首の一部を書いてもらうことにしたら、これはとても難しかった。
漢字の部分的な書き足しの時も、正答の漢字語群があって、その正答を見ながら、漢字の部分を書き足す、という風にした方が良かった。
解答しに、机まで来てくれたので、椅子を勧めたが、着席はしない。
立ったまま、机の上のワークに書いてくれた。
鉄棒を基地に、鉄棒と机を往復して、私の準備する付箋紙解答語群から、選択解答した。
そういうやり方で、ワークは3ページ、取り組んだ。
椅子に座ると、どこまでもやらされると思って、用心深くしているようだった。
座らない理由は、スラスラとできないからだ。
わかるように、できるように、選択語群を用意してやることが大事だ。
通常学級では、先生が、解答選択肢ヒントを板書するか、解答選択肢ヒントプリントを配布して、プリントを裏返させ、分からないところは、選択肢ヒントを見てよいと言えばよい。
ヒントを見ないでできる子もいれば、見るとできる子もいる。
ヒントを見ることと見ないことを、自己選択できる環境を用意すること、それが合理的配慮だ。
書くことを嫌う子は、一度書いた回答を、消しゴムで消すことも、とても嫌う。
「間違いを治そうね」と言われたその瞬間に、切れる子もいる。
付箋紙は交換するだけで良いので、消しゴム修正ほどのストレスがない。
付箋紙解答語群から、選択解答するやり方で、鉄棒と机を往復して、次第に机にいる時間が増えれば、狙い通りになる。
ワークだけでは難しく、45分の取り組みが持たなければ、好きな課題・簡単な課題で、着席行動を増やせばよい。
好きなものであれば、Cくんは車関係が取り掛かりやすい教材、確定域だ。
算願、プリントキッズ、などに、迷路のプリントもある。
取り掛かりの1枚目はこれ!
選択肢の中から、正答を〇で囲むような問題も、取り掛かりやすい。
1~2年生のプリントから、そういうプリントを探す。
確定域で、勢いに乗ったら、付箋紙選択語群課題に移行する!
白い空欄に解答できる子どもには、脳内に選択語群があって、漢字が書けたり、ワークを解けたりできる。
Cくんには、脳の外に、先生の脳内の選択肢を目に見えるように提示してやることが、学習を取り掛かりやすくさせる。
Cくんの漢字は、小1の80字も怪しい。
奥野かるた店の漢字トランプなどで楽しく学習したい。
漢字記憶の参考投稿は、以下のリンクを参照されたい。
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