多動な子どもの探索に付き合ってうまくいくように輔けると落ち着く

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教育仮設38-1 「行って来ていいよ」

3歳11ヶ月のL君が、小児科の療育にやってきた。

これまでL君は、療育の1時間、四畳半ほどの療育の部屋に、ずっといることが多かった。

立体的で操作性の高い感覚運動教材や恐竜の填め板など、好きなものに取り組む時は、(疲れている時を除いて)1時間近く椅子に座って操作した。

L君も、教材の操作が難しい時、飽きて、自分でドアを開けて、ドアの外に出ることが1~2度あった。

私は普段からどの子も、追いかけないで自分は椅子に座ったまま、「行って来ていいよ」と声をかけることにしている。

子どもの行動を禁止するのでなく、まずは子どもの現勢を保障するように、心がけている。

「いいよ」と言われると、飛び出さない子どもの方が多い。

「いいよ」と言われると、子どもは素直になる。

ダメ、ダメ、ダメ、と禁止ばかり聞かされると、子どもは孤独になり、激しく抵抗し、大人の忠告を無視するようになる。

「いいよ」と言われて、L君もドアから動かず、辺りを見回して自分で戻って来た。

お母さんのいる療育の部屋が基地であり、その基地から、無目的な探索に飛び出すL君ではない。

お母さんもお父さんも穏やかな性格で、L君もその性格を受け継いでいた。

3歳頃は、お母さんの後ろに隠れ、移動するときは、お母さんに抱っこを要求するL君だった。

L君の行動は、これまでの小児科の療育場面では、上記のように、割合ゆったりとしていた。

私とのやりとりでは、狭い空間の机の上に、L君の好きな教材(得意な領域)が展開されるため、 L 君は興味を持ってそこに、1時間とどまることができる。

保育園の帰り、ある時L君は、車に乗ると、お母さんに「パズル先生 行く」と言ったそうである。

療育場面は、環境が整備され、好きな教材が扱えて、L君にとって分かりやすい場面だった。

療育場面のL君は、私から見て、落ち着いて見え、お母さんを困らせる子には見えなかった。

教育仮設38-2 情報の多い、複雑な場面で、子どもはどう振る舞うか?

保育園場面は情報も多く交錯し、広い空間の全体視が苦手で、他者の立場にまで立てないL君にとって、複雑な場面だ。

お母さんから聞く話では、しつけようとして係わると、お母さんや保育士さんの期待のようには振る舞わず、お母さんや保育士さんを困らせることがあることを聞いてはいた。

例えば、

①保育園で、散歩を嫌って皆と一緒に出かけない。

これはお母さんと先生に、「みんなで先に準備して、皆で先に出かけようとして、一番最後にL君をおんぶで誘ってもらう。歩き出したところで、おんぶから降ろしても歩いてもらう」という戦略を提案した。

②散歩を嫌ってか、皆の帽子や靴を抱え込んで、持って行ってしまう。

これも「皆で靴箱の前に座って、帽子がなくて困るー!、靴がなくて困るー!、散歩に行きたーい、散歩に行けなーい」と、保育士さんと仲間の子どもたちに、口々に園庭に向かって叫んでもらうのはどうか?と、お母さんにメール連絡してみた。

保育園の先生にも、そのメールを読んでもらうように、お母さんに依頼した。

L君は「僕は散歩は嫌だ、僕は散歩に行きたくない」と、言葉で言えない。

言葉で気持ちを言えないことが、皆を困らせるような行動となる。

皆の帽子や靴を抱え込んで、持って行ってしまったら、「散歩に行きたくないのかな?散歩が嫌なのかな?」と、まずは L君の気持ちを代弁してほしい。

それから、皆が行きたくて困っていることを、皆で靴箱の前に座って、園庭に向かって叫ぶと良いと思う。

L君の気持ちの代弁と、皆の気持ちの解説の2つが、保育士さんの重要な役目だ。

「L君ダメでしょ、返しなさい」と言ったら、L君の気持ちに触れていない。

L君には「行きたくない気持ちはわかった」と、言うことが重要だ。

そして、「皆が困っている、帽子と靴を頼むね」という、依頼だ。

L君の行動を責めるYouメッセージの言葉でなく「散歩に行きたい、靴が欲しい、帽子が欲しい」と、保育士さんや仲間が、Iメッセージを叫ぶことがポイントだ。

③とまり鬼でタッチされると泣く、じゃんけんで負けると泣く、どうしたら泣かないようにできるか、という、お母さんの質問もあった。

これについては以下に投稿している。

こだわりが強い人の認知の仕組みを理解しよう 1 | 猫ちゃんブログ (nekochanblog.com)

遊び・勝負・競争・ゲームでは他者の立場に立つ力が必要 2 | 猫ちゃんブログ (nekochanblog.com)

④嫌いなタケノコや、嫌いなエビケチャップが給食に出ると、保育室から逃げて出て行ってしまう。

1つには、L君には、我々にはない、感覚過敏や味覚過敏があって、タケノコの筋張った感触が、嫌いなのかもしれない。

L君には、タケノコを米粒ぐらいにみじん切りにしてやったら食べるのか、お母さんに試してみてもらうように、メールした。

もう1つには、「タケノコを減らしてください。タケノコを入れないでください。食べられません。残していいですか?」という、要望を伝えるコミュニケーションが、未習得なので、言えなくて逃げていくしかないのだ。

本当に必要なことが言えず、マイナスな行動になってしまう。

散歩に行く友達の帽子や靴を取ってしまうことも、タケノコが嫌で園庭に逃げることも、コミュニケーションの力が及ばないからだ。

「減らしてください」「残していいですか」それを填め板にして作って、填めてもらいながら文字を読んで話した。

「へらしてください」「のこしていいですか」

お家でも、填め板と口頭申請を、食事場面で練習してもらうことにした。

L君が言いやすいように、言えるように、「減らしてください」「取ってください」「残していいですか」をお母さんも保育園の先生も、先に言ってみせてほしい。

オウム返しを利用して、言えるようにさせたい。

それでも、要望を伝えるコミュニケーションが未形成ならば、タケノコやエビケチャップを提供しないことだ。

家庭の食事や給食は、楽しく食べた方が良い。

教育仮設38-3 子どもがどうしようとしているか?それがうまくいくように輔ける

お母さんは、 L君を保育園の仲間に同調させようと、一生懸命だ。

そのために、お母さん自身も、ダメ出しや禁止が多くなってしまうと、分かっている。

お母さんは、応用行動分析を学んで、L君を発達させたいと思っている。

お母さんの気持ちは分かる。

お母さんの願いにも、寄り添いたいと思う。

L君の発達には、L君のコミュニケーション力や、L君の認知力の向上、他者の言葉を聞き入れる力が必要だ。

係わる大人は、社会的しつけの立場に立つより、L君の気持ちの側に立つことが先に必要だ。

コミニュケーション力・認知力・他者心理の理解には、一番初めにL君の気持ちを理解することがポイントなのだ。

L君がどうしようとしているか。

まずはそれを見守る。

次にL君がしようとしていることが、うまく展開するようにたすける。

しつけの言葉も、その時に、肯定的に入力していく。

3/5、上記の保育園での困りごとの①②③④を、私も頭に入れていた。

3/5の療育で、L君が療育の部屋以外でどう振る舞うのか、少し見ようと思った。

前回、L君が、帰る時に「飲みたい」と言ったので、内科の前にある給水器を使って、紙コップで水を飲ませた。

今回、1時間の療育のちょうど半ば頃、L君がドアの外に行こうとしたので、私の方から「お水飲みに行こう」と給水器に誘った。

L君は、私に手を繋いできた。

多分、給水器が目に見えないので、手を繋いできたと思う。

給水器に行こうとしたが、給水器が目に入らず遠いので、L君は、目に付いた公衆電話の探索に取り掛かった。

ちょうど内科の方から、電話の呼び出しの音も鳴っていた。

おそらく、お母さんなら、すぐに止めに入る。

公衆電話を、いたずらしては、困るからだ。

私は、L君が公衆電話の操作に納得すれば、やめると考えていた。

それは、1分もかからないだろうと、予想していた。

万一、無料の110当番につながった時には、自分が受話器を取って、謝ることを覚悟していた。

社会的なしつけより、L君の操作したい気持ちと、電話機だ!という叙述の行動の展開を大事にしたいと思って、見守っていた。

「電話だね」「ベルもなってるね」と、L君の受話器とボタン操作を見守った。

L君が受話器とボタン操作をしている間「もしもしパパですか、夕ご飯は何ですか、カレーが食べたいなぁ」などと代弁していた。

L君は、電話機の数字ボタンを押す間、一言も喋らなかった。

まだまだ、言語活動が活発ではない。

手で操作しながら、喋るということが少ない。

言語なしに、見えるものの方に動く、触ることで分かる、行動が多い。

L君の押すボタンの数字を、私が「1、3、0」などと読んだ。

L君は、1分ぐらいで、2つ目の公衆電話に移動しようとした。

そこでは大人の患者さんが携帯電話をかけていたので、私が「ここは使っているから、お水飲みに行こう」と、両手でL君の体をやや方向づけながら、提案した。

人がいて、物理的にふさがっているので、L君は方向転換してくれた。

給湯器の手前にあるソファーの間に入って、観葉植物の50cm 以上はある大型の鉢の上に上がった。

ここでもやはり、お母さんなら止めたと思う。

お母さんには、母親としての社会的立場があって、他人がどう見ているかということが気になる。

私は一番大事なのは、L君の気持ちだと思って、L君がどうしようとしているのかが大事だと思って、L君のしようとしていることを十分展開させたいと思って、くっついていた。

(私は病院の職員で仕事だから、他者の行動評価に対して平気だった、とも言える。)

ソファーの隙間に入った L君を、狭いところに入りたいんだなと思って、私は見守った。

給水器が目に入らず遠いので、途中で目に付いたものに引っかかったのだ。

給水器まで行くという行動の完結には「水を飲む、水を飲む」という言語の保持が重要である。

この日は、前回よりも、水を飲みたいという気持ちは、L君には少なかったと思う。

それで、寄り道の探索行動が、電話機、ソファーと観葉植物、と起きたと思う。

給水機の写真カードを持たせれば、給水機への移動は保持されたかなと思う。

病院のホールで、大人がついて見守っていれば、L君は大したいたずらはしない。

観葉植物の鉢の端っこを踏み台にして、2回、ソファーの背中を乗り越えただけだった。

L君がソファーの背中を乗り越えようとする時、手を貸して、引っ張った。

お母さんだと、すぐに靴を脱がせたと思うが、私はそこは、はしょって見守っていた。

ソファー越えも2回で終わり、L君が再び手を繋いできた。

「お水飲もう」と言って、1歩目は手を引いて、一緒に歩いた。

L君は給水機の紙コップボタンを押して、自分でコップを出し、コップで給水レバーを押して、紙コップの半量くらいの水を飲み、自分で紙コップをゴミ箱に捨てた。

紙コップに少量の水が残っていたが、私はそれについては触れないで、目をつむった。

L君の一連の行動の方が、大事だと思った。

次には「空っぽ、捨てる」ということを提案したいと思った。

初めから完璧な「空っぽにした紙コップを捨てる」行動を要求するのでなく、粗大な行動を微細にしていく、という行動形成の仕方が、子どもに起きやすいと思っている。

病院のホールのような広い空間では、お水を飲みに行く行動までに、これだけ様々なことが途中で展開する。

目的の給水器の手前で、色々なものが目に見えてしまうからだ。

狭い部屋の整理された机の上の学習場面と違って、家庭や保育園の室内や園庭は、こういう複雑な環境だと思う。

その時、少し、L君にくっついて、L君がどうしようとしているか、L君のしようとしていることがうまくいくように輔けるといい。

その積み重ねが、多動に見える子どもの、満足した素直さや落ち着き(=自全態)を形成する、と考えている。

家庭でスーパーに行くときは、大人も2人必要だ。

一人が他の兄弟と買い物し、もう一人がL君の探索に付き合うといい。

教育仮設38-4 子どもの得意な領域の教材によるやり取り

水を飲んだL君は、療育の部屋に戻ると、それからまた30分、填め板などの学習をして、売店でピーピー笛ガムを買って、ご機嫌よく帰った。

売店のアイスケースの蓋も開けたが、私がカウントダウンして「溶けるから閉めるね」というと閉めた。

恐竜パズルを作るのに準備するもの、市販パゾル、恐竜カード、コピー、のり、ボンド
枠に色を塗ると恐竜が際立ち見やすくなる。仕上がり
ダイソーで恐竜ものしりカード、セリアで恐竜図鑑カルタを販売中
ダイソーの4つ100円のこのパズルは厚みがある。入れやすい。
L君は動物と恐竜が好きだ。ダイソーのこのパズルは、薄くて、L君には無理、イライラする。ピース数も多いし、L君はまだ、コピーした下絵を見ながらの、上絵の部分合成が難しい。
木のパズルだと、部分合成もやる気が維持される。
ダイソーの知育パズルを見かけると私は買い占めている。販売は左上の1種類のみ。12個買うと、色々な組み合わせも可能。
ダイソーの知育パズルを使用

コメント

  1. ねこのしっぽ より:

    「パズル先生 行く」、素敵な言葉ですね。良い働きかけには良く応える、さすがですね。

    • 猫ちゃん より:

      机上の狭い分かりやすい空間で、得意な恐竜のパズルをするのは、L君の楽しみになったようでした。
      複雑な保育園生活の帰りに、楽しみを思うL君に、また、「確定共有」の恐竜パズルを作ろうと思っています。
      保育園という外の世界への適応については、お母さんが一生懸命やってくれるので、私は、L君の心の楽しみの共感者になりたいと思って、恐竜のパズルを作っています。

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