病院の看護師さんに学んだ介護
97歳、歩けない要介護4のヤエさんの在宅介護の継続が、私には無理に思えた。
車椅子のヤエさん、オムツのヤエさんを、私は自宅では看られないと思った。
しかし、尿路感染症の2回の入院で、ペースト食・車椅子移乗・オムツ交換を、病院の看護師さんの看護から学べた。
毎日、往復100km、病室に通って、昼食からヤエさんが眠るまで、8時間世話をした。
次第に車椅子のヤエさん、オムツのヤエさんを、自宅で看ていけると思うようになった。
ヤエさんの身体機能・認知機能がさらに退行しても、私がヤエさんの退行に合わせていける気がした。
5か月間、5か所の施設や病院を転々とさせ、ヤエさんに寂しい思いをさせたが、ようやく私がヤエさんに合わせていく、要介護5の在宅介護が見えた。
しかし、24時間自宅で看ることは、不可能だった。
在宅介護には、昼間のデイサービスの協力が、欠かせなかった。
大人のオムツの付け方
私は大人のオムツ交換も、赤ちゃんにするように、本人の腰を持ち上げて交換するのだと、思い込んでいた。
自治体の介護教室にも通わず、ネットで調べもせず、デイサービスの介護士さんに習いもしなかった。
大人のオムツ交換は、違っていた。
半身ずつ横向きにして、オムツ交換するのだった。
市役所でくれる「介護と保健ガイドブック」の48ページに、テープ式オムツの交換の図が載っていることを、私は知らなかった。
介護の最後の年に、市役所で冊子を手に取って読んで初めて、オムツ交換の情報が載っていることを知った。
介護認定の初回に冊子をもらったのかもしれないが、特定福祉用具の購入を毎年10万円までできることを読まなかったように、利用の全てが載っているこの冊子を、私は一度も読んでいなかった。
次に何かが必要になる介護段階の1つ手前で、ケアマネージャーさんや介護士さんが「ここに載っています」「次はこうですよ」と、ページを見せて教えてくれるとわかりやすい。
ヤエさんが退院した日、いつものデイサービスの責任者さんが、無償のボランティアで、我が家にオムツの交換にやって来てくれた。
有り難かった。
私が仕事で県外へ出張のとき、朝6時から夜8時まで、14時間ヤエさんを預かってくれた方だ。
仕事の枠を超えて、家庭全部・家族全部の生活を支えてくれた方だった。
この方たちのおかげで、ヤエさんは幸せな晩年を7年間過ごせた。
ヤエさんはオムツ交換を拒否する
ヤエさんはこれまでの長い習慣通り、自宅では20:00~10:00までの14時間眠る。
ヤエさんの長い眠り、過眠は、メマリーの傾眠作用のせいだと、この先7~8月の入院で知ることとなる。
10時過ぎにヤエさんに声をかけ、ベッド上で純粋ティッシュで洗面し、緑内障の目薬をつける。
ここまでは、にこやかだ。
電動ベッドを上げて、「オムツを替えるね」と、新しいオムツを見せる。
しかし、ヤエさんのパジャマのズボンを下ろすところから、ヤエさんは不機嫌になる。
ヤエさんは、脱がされるのが嫌なのだ。
オムツを外されまいと、両手で股間を隠そうと激しく抵抗する。
ヤエさんの手に、オムツの尿が付く。
尿ならいいが、便の時は、私は困り果てる。
一人では、交換できない。
ヤエさんの手を持っていてもらう代わりに、パジャマの上着やバスタオルで両手をくるむ。
それでも取り換えられないような、激しい拒否にあう。
施設でも家庭でも、介護虐待はこういう状況の時に起きるんだと思う。
オムツ交換は朝と夜および排便があった時だから、毎日2~3回このつらい闘いがある。
97歳まで、ずっと聞き分けの良かったヤエさんが、オムツ交換の時だけ別人だ。
施設や病院で、両手を拘束するときは、こういう時なんだと思う。
私は両手の拘束に反対しない。
拒否する人のオムツ交換をやってみれば、拘束がどんな状況で起きるか、わかるからだ。
35年前、自閉症の千暁ちゃんのご両親が、千暁ちゃんの頭部自傷を止めるために、3人で手を縛りあって川の字で寝ていた、縛るのはそういう状況だ。
それが千暁ちゃんにとっての、安全だった。
ペットのシーツを両脇に敷くといい
オムツ交換で横向きにしたときに、ヤエさんは恥ずかしさから、拒否でお腹に力が入り、横向きで排尿してしまう。
ペットシートを両側に敷けば、横向きになって排尿しても、ベッドのシーツへ尿がもれない。
純国産ペットシーツ レギュラー 薄型 600枚入は、交換も安価(1枚10円)で簡単である。
横向き排尿がなく、シートが汚れなければまた使える。
オムツセットは、外側オムツをライフリーのびーるフィット尿2回分の薄いタイプ、中側パッドをライフリー一晩中お肌安心尿4回分(昼用)と一晩中安心尿6回分(夜用)を使い分けた。
病院で知った「テーナ」という高級オムツも通気性が良く、ぬれると色が変わってわかりやすいが、パッドを使わないでオムツ1枚使いのために高価になる。
私は、ユニチャームの、「ライフリー通気性バックシート」が気に入っている。
私は、オムツの尿便がもれないように、オムツをぴったりヤエさんの肌に付けていた。
病院の看護助手さんは、割合中側のパッドも外側のオムツもゆるく当てていた。
尿がもれない程度にゆるいほうが、排尿が中側のパッドだけに良く吸収される。
陰部からやや離れているから、陰部が尿便でただれない可能性が想像された。
専門家の知恵も、家族は知りたい。
病院の看護師さんが、施設やデイサービスに宛てて「看護サマリー」という書類をくれるが、これこそ在宅介護する家族にほしい。
オムツ交換時にオムツ上で陰部洗浄できる
オムツテープを外したら、交換前に古いオムツのまま陰部洗浄してやり、そのオムツを取り去って、新しいオムツにすれば気持ちがよいと、病院の看護を見て知った。
尿量が少ないときに、捨てるオムツを外さないうちに、そのまま陰部洗浄するのだ。
シャワゾーくんという洗浄ボトルが1700~2000円くらいで販売されている。
35~36度のぬるま湯で洗う。
排便したときは新しいオムツにしてから、ベッド上で陰部洗浄・肛門洗浄すれば清潔になる。
しかし2回オムツを替えねばならない。
ヤエさんの抵抗に2回遭う。
軟便はティッシュで大雑把に拭きとってからお尻拭きで
程よい硬さの良便の時はベッド上での拭き取りも楽だが、下痢の時は股間から水溶便を取り去ることも経験が要る。
ある時、安いボックスティシュで吸い取ることを思いついた。
Boxティッシュなら1箱使っても50円、アテントお尻拭きは2パック使うと660円だった。
感覚過敏のあるヤエさんも、冷たくぬれているアテントお尻拭きより、乾いているティシュの方が拒否が少なかった。
病院で便秘して、座薬を入れてもらい、摘便してもらった日は、ヤエさんは不機嫌で、昔の「くしゃおじさん」みたいに口を硬く引き結び、何もしゃべらなくなった。
ヤエさんの機嫌・不機嫌を見ると、認知症の方の問題行動は、意味がわからないとき・感覚が不快なときに起きるのではないかと思われた。
ヤエさんはオムツ交換の後に、10分寝かせると、忘れてご機嫌が直って笑顔で起きた。
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