食品の調理法
ヤエさんは何でも食べてくれる人だ。
好き嫌いは聞いたことがない。
うなぎやお刺身も食べたし、チーズやステーキも食べた。
農家で育ったので、野菜ももちろん嫌いなものはない。
果物で酸っぱいものが少し苦手なくらいだ。
甘い温州みかんは喜んで食べた。
要介護4の後半、感覚過敏が増して、みかんの袋やスジを嫌がったので、きれいに袋をむいてお皿に出した。
好き嫌いのないヤエさんだったので、献立に困ることはなかった。
要介護1~4まで、ヤエさんの献立で留意した第一は、根菜類などを柔らかく煮るようにした。
第二段階では、小さくカットした。
第三段階ではみじん切りに刻んでやるようにした。
リンゴや梨も3 mm ぐらいに薄く切れば食べてくれた。
お正月のお餅も1.5cm 角くらいにカットして茹でると、噛みやすく、のどに詰まらなかった。
ラーメン・おそば・うどん・そうめんなどの麺類は、麺の長さを10 cm くらいにカットして茹でれば、食べやすかった。
2012/ 9やわらかく カップラーメンの麺が柔らかく噛みやすい お蕎麦は10cmにカット 鮭・野菜の水炊き お餅1.5cm角カット 水で電子レンジ2分 チーズと海苔をまいて ゆで餅をお汁粉に ひき肉野菜炒め リンゴは3mmカット バナナは5mmカット きざみ納豆 2013年デイサービスで 2015年95歳 要介護4 2016年96歳 鍋 2017/9 97歳
誕生日のお食事

88歳から95歳までヤエさんの誕生日には毎年、ヤエさんの兄弟がファミレスの夢庵でごちそうしてくれた。
姪が美しい花束をくれた。
ヤエさんの笑顔も花のようだ。
誕生祝膳をヤエさんは毎年嬉しそうに夢庵で食べてくれた。
しかし会話はなくなり、ひたすら食べ物だけ見て食べているヤエさんだった。

寂しい気がした。
認知機能が衰え、言語が退行していくのだから、食べてくれるだけでいいと思わなければならない。
兄弟に会って、お出かけして、ご馳走を食べること、ヤエさんの笑顔、それでよかった。
噛めるうちの入れ歯は大事
一番初めに食事で困ったのは、ヤエさんの体重が痩せて、歯茎も痩せて、入れ歯が合わなくなった時だった。
83歳で認知症の診断が出てから87歳まで、ヤエさんは近くのスーパーに買い物に一人で行けた。
私が夕食を作っていたが、ヤエさんは昼間パンを買ってきて、昼食に柔らかいパンを食べるようになった。
入れ歯が合わなくなり、和食の昼食より、パンが噛みやすかったらしい。
ヤエさんの兄弟の提案で、入れ歯を新しく作り変えることにした。
新しい入れ歯で、噛む力が復活した。
89歳、要介護1頃は、入れ歯と補聴器と杖がヤエさんの三種の神器だった。
2007年入れ歯上下 2007年87歳補聴器 2010年耳掛け⇒耳穴式 2012年補聴器買い替いえ
ヤエさんは70歳で車の免許を返納したので、車も買わないし、旅行にも出かけたがらないし、高価な服やバッグを欲しがるわけでもない。
無駄遣いをせず、ささやかな暮らしを楽しんでいた。
国民年金は60歳からもらってしまったので、40%カットされたまま年間36万円くらいだった。
しかしお金を使わないヤエさんなので、補聴器と入れ歯は奮発した。
入れ歯は保険の効かない高価な入れ歯を選んで、1回の受診で作ることができ、1回の調整でうまくいった。
以後亡くなるまでの約10年間、この入れ歯はヤエさんの食生活を支えてくれた。
ありがたかった。
入れ歯をあきらめるとき
下の入れ歯は総入れ歯だが、上の入れ歯は部分入れ歯で脱着が難しかった。
95歳から3年間は私が脱着していた。
脱着にはコツがあり、デイサービスの介護士さんにそれを伝えるのが難しかった。
しかしデイの介護士さんは自宅の洗面所まで来てくれて、脱着の研究してくれた。
老健・サ高住・グループホームにヤエさんを預けるときに、私が思い切りよく、この部分入れ歯を諦めると良かった。
噛むことが大事だと思い、部分入れ歯をお願いしたが、かえってヤエさんの施設での拒否の態度になって、ヤエさんにかわいそうなことをした。
ヤエさんは私以外の者の、部分入れ歯の脱着を拒否するようになっていた。
部分入れ歯がなくても噛めるのであれば、部分入れ歯はどこかの時点で諦めるといい。
噛みやすい刻み食やムース食にするとよい。
在宅介護では決まった家族が1つのやり方で、部分入れ歯の脱着を手伝える。
施設等では交代勤務で接する人が変わるので、部分入れ歯の脱着は本人にも介護士さんにも大きな負担となる。
一時、日本中で人気者だったきんさんぎんさんのきんさん100歳は、マグロのお刺身が大好きで、入れ歯なしで食べていたそうだ。
ヤエさんは要介護4、2017年の末から、噛むことに時間がかかるようになり、薬が飲み込めなくなった。
要介護4の最後の方は在宅中にそうなったので、その時に入れ歯を止めると良かった。
2018年8月、要介護5、脱水で入院した時に言語聴覚士さんが、食事の飲み込み指導もしてくれた。
身体を45°にして、ゼリーや水分をあげると、気道に入らず、食道にゼリーやムース食が落ちやすいということで退院してからも真似をした。
ムース食であれば入れ歯はいらない。
食べる力はまず噛む力が落ち、次に飲み込む力が落ちる。
ヤエさんも最後2018年10月はムース食の誤嚥が我が家であった 。
2018/4自宅ムース食 2018/6退院後ムース食 2018/8病院のムース食 2018/8退院後ムース食
次回はムース食の材料や、口腔ケアのコツについて書きます。
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