認知の退行で起きる問題の解決方法 その2

電気は大事 電気代は高い

 1920年生まれのヤエさんにとって、電気代は高いもの、電気は節電するもの、という考えが、若い時から90歳代まで、染み付いていた。

90歳で要介護3になったヤエさんに、5年にわたって、節電行動とコード抜き事件が何度か起きた。

90代のヤエさんは、夜中に2度ほど自分でトイレに起きる習慣だった。

ヤエさんの節電行動は、決して悪いものではないが、冬、暖房している家族にとっては、困った事態になった。

トイレヒーターのコードを抜く事件

2011/ 2/ 9 90歳 要介護3

ヒートショックのない部屋の作りとはいえ、トイレには戸があり、室温と多少の温度差がある。

冬、室内温度を15°Cから18°Cくらいにして、寝ていた。

要介護1、90歳のヤエさんが一人で夜中に、一度目のトイレに起きた時、狭いトイレが多分20°Cくらいで室温より高く、ヤエさんは便座に座った時に、トイレを暑く感じたのだと思う。

トイレヒーターのスイッチが、朝、切ってあった。

スイッチは見えない位置に。90歳 要介護3

明け方6時頃が一番冷えるので、ヤエさんが2度目のトイレに起きたときに、トイレが寒いことを私は心配した。

私は、トイレのヒーターのスイッチを、紙コップの蓋の底の部分で隠した。

ヤエさんは、トイレのヒーターのスイッチが見えなくなったので、ヒーターとは反対側のコンセントから、コードを抜いた。

暖房便座のコードもコンセントが一緒だったので、便座は冷たくなり、トイレの水も流れなくなった。

2012/11/15 文字で依頼 92歳 要介護3

認知症の方は、自分がこうしようと思った時の、それに向かっていく時の自己解決力がすごい。

徘徊が頻発するかたは、外に行こうと思うと、家族のほんのちょっとした行動の合間に、家を出て行くそうだ。 

私は、元のヒーターの位置をの180度反対側に変えて、ヒータースイッチもコードコンセントも、便座に座ったヤエさんから、一番見えにくいところに、ヒーターを置いてみた。 

90歳では、またまだ文字が有効だったので、文字でも「触らないでね」と、ボール紙に書いて頼んだ。

2012/11/15 92歳 要介護3

コンセントが見えないように、コンセントを文字の紙で覆った。

これで、ヒーターのコードを抜く事件は、解決した。

その後は、認知の退行で、次第にコードを抜く考えもなくなって、トイレ暖房を切る事件は起きなかった。

エアコンのコードを抜く事件

要介護3、91歳の夏、ヤエさんがエアコンのコードを抜いた。

2012/7 91歳 要介護3

エアコンのコードは、壁の高い位置にある。

ヤエさんはベッドに登り、壁からコード抜いて、エアコンを止めた。

エアコンコードの3点プラグは、簡単にさっと抜けるものではない。

ヤエさんが帰宅する前に、タイマーで稼働していたエアコンが寒かったのか、音がうるさかったのか、夕方一人で留守番している1時間のうちに、ヤエさんがエアコンコードを壁の高い位置にあるコンセントから抜いた。 

足が悪いはずのヤエさんの行動力に、びっくりした。

そこで、トイレのヒーター同様に、コンセントをボール紙で見えないようにした。

コンセントとコードを、ボール紙に書いたお願いの文字で覆った。

ボール紙は折って高さを作り、コンセントから離れるように画鋲で取り付けた。

2012年の夏・冬以降、ずっとふさいでおいた。

同様の状況は、介護施設のエレベーターボタンに、透明の蓋がつけてあることと、似ている。

我々は、透明の蓋を持ち上げて、必要な階を押す。

認知症の方は、透明のフタを開けることに、考えが及ばない。

私はふさいだ紙に、夏の「涼しく」だけでなく冬の「暖かく」も書いた。

さすが、にエアコンのコンセント位置が高いせいか、これは二度目は起きなかった。

まだ、文字も、ヤエさんに有効な時期だった。

温水ルームヒーターのタイマーを切る事件

要介護3、91歳の冬、今度は温水ルームヒーターの、タイマーを切る事件が、夜中に起きた。

夜中、ヤエさんがトイレに向かって歩いていくと、正面に温水ルームヒーターの緑色の時刻ランプが見える。

緑ランプ 2011/11 91歳 要介護3

翌朝、暖房が入るように、

90歳、要介護1までは、そういうことはなかったが、91歳要介護3のヤエさんは、その緑色の時刻ランプを、暖房機のオン状態と考えて、毎晩切った。

赤い、「切」ボタンを押しても、緑の時刻表示は消えない、切ろうとして何度も何度も赤い切ボタンを押したらしい。

オンオフを繰り返されて、マイコンが一時的に壊れて、朝、私がスイッチを入れても暖房がつかなくなった。

この時、まだ私は、ヤエさんと別の階で寝ていたので、夜中のヤエさんのこの行動を知らなかった。

ヤエさんと同じくらいの認知の力がある方は、施設で様々にこういう行動が起きるのだと思う。

たまたまヤエさんは、自宅で毎日付き合う家族が決まっているので、ヤエさんが起こす行動の理由がわかりやすい。

施設では、介護士さんが交代で見るので、困った行動だけが大きく取り上げられ、理由の推測は5倍の時間と労力がかかる気がする。

夜中のヤエさんの行動を知らない私は、2度にわたって修理業者を呼んで、、室内機を修理に出し、室外機も調べてもらったが、原因がわからなかった。

マイコンの一時的な故障なので、コードをコンセントから抜いて初期化すると、1日後には復活した。

その繰り返しだった。

ある時、明け方、ヤエさんの様子を見に起きた私は、温水ルームヒーターの赤い切ボタンを押しているヤエさんと、ばったり出会った。

「あー、そうだったのか」と原因がわかり、ヒーターに大きな紙をかけて緑ランプが見えないようにした。

緑ランプ隠す 2012/ 2/ 5 91歳 要介護3

翌年は、夜間に新聞をかけておけば済んだ。

新聞で隠す 2013/ 1/27

緑ランプが見えない、物理的な対応が一番効果的だった。

朝、タイマーで稼働するヒーターの背面の排気の関係も考えて、オンオフボタンだけを出しておき、緑ランプは見えないように小さな紙を横長に貼って使用した。

緑ランプだけ隠す

加湿空気清浄機についても、デロンギオイルヒーターについても同様にして、操作部分に紙を貼ってヤエさんに見えないようにした。

 このボール紙と文字で隠すやり方は、要介護3の間、有効だった。

電気釜のスイッチを切った事件

「 時 分」の上部分のタイマーの緑ランプを隠した

94歳、要介護4、電気釜のスイッチを切る事件も起きた。

朝、ご飯が炊けていなかった。

やはりタイマーの緑ランプが、ヤエさんにとってはオン状態に思えたらしい。

そこですぐタイマーの緑ランプが見えないように黒い紙を貼った。

効果があった。

また、可能な限り、ヤエさんのいない時間帯にご飯を炊いた。

94歳 2015/4/7 トイレ表示を手前で目立たせる

94歳の同時期、他のことでは、ヤエさんはトイレの場所がわからなくなった。

トイレを行き過ぎてしまうので、ボール紙のトイレの表示が、ヤエさんの目の前に飛び出るように、手前に貼った。

私もヤエさんと同じ階で寝るようにして、ヤエさんがトイレに起きると、私も起きて介助した。

95歳からは夜間リハビリパンツになり、つなぎパジャマで一晩中寝ているようになり、コンセントからコードを抜く行動はなくなった。

問題行動に終わりが来る

要介護1から要介護4まで、ヤエさんの節電行動とコード抜き事件が何度もあった。

97歳、要介護4の後半、ヤエさんから音声の言葉が失われ、テレビを見ても拍手や指差しで言葉の代わりの身振りに退行したころは、上記のような事件を起こす力もなくなった。

徘徊や暴力、強迫行為など、強い症状にお困りのご家族がいらっしゃると思う。

一概には言えないが、我が家の例では、3~4年でその症状も小さくなり、その行動もその力もなくなっていく気がする。

問題行動のトンネルも、きっと出口が来る。

そう思って、対処法を見つけてしのいで欲しい。 

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 病院小児科で臨床発達心理士をしています。
 梅津八三の心理学、行動調整法、子どもの行動理解、育児、教材、ソーシャルスキル、介護、猫の行動について投稿中です。

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