歩き始めたら見えるものの方に飛んでいってしまう、言葉で止めても危険が分からない、2歳を過ぎてもなかなか言葉を話さない、そういう子どもさんの育児に悩んでいる、保護者の悩みが目に浮かびます。
特別支援学校や特別支援学級および発達障害児のいる通常学級担任になった先生も、児童生徒の学習不参加や教室離脱で悩んでいる先生が、いらっしゃるかと思います。
大人は子どもの暦年齢で、子どもの標準的な発達を、考えてしまいがちですね。
標準的な発達とは、子どもを歴年齢の横並びで比較する、横断的な考えです。
今回は、横断的な考えを脇において、子ども一人一人の縦断的な言葉の発達を考えてみたいと思います。
それが言葉の、豊かな発達に繋がります。
梅津八三によることばの発達の難易
日本で初めて、山梨県立盲学校で盲聾二障害のしげ子さんとただおさんを教育した梅津八三によれば、お互いの合図として使われる「言葉」には、以下のような難易度があるといいます。
梅津の言葉の構造化を、以下のように、書き換えて見ました。
合図として、分かりやすい、簡単な「ことば」から、書きますね。
1.動作、行動も「ことば」です。
2.表情、視線
3.実物、模型
4.物や行動をかたどった身振り
5.実物の写真、既に出来上がっている絵
6.マーク、記号
7.作図、描いていく絵
8.指文字、点字、手旗信号、モールス信号、文字、数字
9.そして、音声が、最も難しい「ことば」になります。
我々大人が、普段何気なく使っている音声が、最も高級で難しい、複雑な言葉であるということを知っておいてください。
言葉の発達の難易度を知れば、脳外にイメージしやすい合図を出せる
合図となる「ことば」を一覧表にすると、下の画像のようになります。
「合図の種類」の欄の上~下へは、赤ちゃんが言葉を獲得する過程です。
子どもさんの言葉が、渋滞している所はどこなのか、大人が見立てる必要があります。
動作・行動~文字までは、全て脳の外に見える合図=言葉ですね。
子どもが扱う教材は、出来る限り立体的な、触われる教材を子どもは喜びます。
触れる立体から平面へ、見える平面から線図形文字へ、最後が触れない見えない音声です。
子どもの感覚の発達は、触覚➡視覚➡聴覚の順になります。
通常学級でも 子どもの感覚の発達を理解して係わる
触覚運動を「手悪さ」と呼ばないで、子どもの発達に必要な過程なのだと思って、教科書を両手で持つ、全員で立って読むなどの運動作業を与えましょう。
目に見える、実物・模型・身振り・絵・文字で、子どもの注意を引き付けます。
1枚のプリントに20問ではなく、1問ずつや3問ずつになるように、プリントをハサミで切って、2種類のカゴで出すのはどうでしょうか。
プリントを取りに動けることも、子どもの運動感覚を満たします。
大きなプリントの時はせめて、2枚のプリントを出して、「どっちを先にやりたい?」と選択的に聞いてください。
動ける、触れる、選べる、問題数が少ないと、取り掛かりを良くします。
大人の脳内イメージを 脳外に出して見せて 子どもに目からイメージを共有してもらう
イメージを脳外に出して見せる、これが特別支援教育であると、私は考えています。
音声ではイメージできない子どもに、音声以外の言葉を、見せる・付け加える支援です。
家庭も保育園も小中学校も、話せる大人が、たくさんの音声言語を子どもに伝えます。
しかし、相手の子どもが音声を話せない子どもであれば、合図を出発点の方にたどって、大人の話し方を変更します。
また、相手の子どもが、音声指示ではイメージを持てない、すぐに忘れてしまうのであれば、大人の脳内イメージを目で見て分かるように脳外化しましょう。
家庭でも保育でも療育でも、身振りをつけて、短い音声指示を出してください。
簡単な絵に書き留めて、音声指示をイメージしやすくしてください。
話し合う時に、絵や図を描いて、文字をつけて説明してください。
英語を話せない私が、アメリカに行ったとして、音声が使えないから、実物・身振り・絵・スマホの文字翻訳機能・読み上げ機能などを総動員して、コミュニケーションしようとするかと思います。
目の前の子どもさんが、日本語の音声では会話にならない、そうだとすれば、実物・身振り・絵・文字を我々大人が使って、言葉の発達を育てていきませんか。
猫ちゃんブログへのコメント