33歳の自閉症の一平君は、1週間のスケジュールを自分で決めています。
そのスケジュール通りに、行動したい一平君です。
そのスケジュールは、まるで学校の授業のように、何曜日はどこどこへ行く、何曜日はどこどこへ行く、と決められています。
スケジュールが叶わないと、自宅では荒れます。
お母さんは可能な限り、一平君の希望が叶うように合わせています。
高等特別支援学校を卒業してから15年間、おそらく、一平君が歩き始めてから30年以上、一平君の希望が叶うように、寄り添ってきたお母さんです。
一平君がスケジュールを実行する楽しみの、共感者や伴走者が増え、気持ちの表出ができれば、一平君の激しさも緩むのではないかと、一平君の好きな食べ物のメニュー作りに取り組むことにしました。
音声発生アプリ「かなトーク」
7歳の時、病院の療育で一平君と出会いました。
音声の言葉の全くなかった一平君です。
ひらがな50音タイルで、文字を獲得したあと、文字も書けるようになりました。
小学生のある時一平君が、新聞紙の余白に「いえ」と書いて、家に帰りたいと訴えることが起きました。
29歳で使い始めたiPadの「かなトーク」50音表で、音声発生装置を使えるようになった今では、「こんにちわ。かりんとういかがですか。」と定型の文章を作りながら、「コンニチワ。カリントウイカガデスカ。」と、文字を打つときに1音ずつを音声を発するようになった一平君です。

お家でも iPadのかなトークを使うようになって、行きたい場所、買いたいものをiPadに書くようになりました。

一平君は名詞だけの文章を書くので、「で」「の」は後からの学習で一緒に入れました。
また一平君は、adidas FENDI NORITSU と、目で覚えた品名・会社名のアルファベットをそっくり書くので、療育で一緒にカタカナにしました。
お母さんが、ノーリツのガスレンジは、ジョイフル本田でいつも見ていると教えてくれたので、私が「ジョイフルホンダでノーリツのガスレンジかう」とメモ書きしたら、一平君が付箋紙に「セキチュー」と書いて、ジョイフル本田ではないと、考えを表わしてくれました。
音声で「違います」と言えない一平君ですが、メモ書きや iPad では、言葉を伝えることができます。
文字によるやり取りならば、一平君の考えていることが正確に分かります。
一平君が考えていることを、文字やiPadで正確に相手に分かってもらえたら、一平君も嬉しいのではないかと思いました。
おおぎやラーメンのメニュー作り
毎週日曜日のお昼は、お母さんとおおぎやラーメンに行く一平君です。
真夏も、冷やし中華ではなく、熱いラーメンを食べます。
メニュー作りには事前にインターネットで、おおぎやラーメンのメニューをダウンロードし、プリントアウトします。

少し厚手の台紙を用意し、穴を開けておきます。

貼る時にA4の台紙からはみ出さないように プリントはあらかじめやや小さく切っておきます。

液状のアラビックヤマトのりだと水分で台紙が変形するので、スティックのりを使います。

一平君は、こういう作業が丁寧で得意です。
作業所では、かりんとう作りを担当しています。
2箇所の穴を20mmのカードリングでとめて、メニューが出来上がりました。

出来上がったメニューの中身は、こんな感じです。

大人になった一平君は扱いが丁寧なのでこのままで大丈夫ですが、小学生だったら最後にラミネートしてから、とじる穴を開けると、丈夫になって扱い良さそうですね。
最後のページに、注文の合計額も書き入れました。

一平君は他にも、モスバーガーと銀だこに行くそうです。
一平君が楽しそうにメニュー作りをしてくれたので、次回の療育ではモスバーガー、さらに銀だこのメニューを、順に作りたいと考えています。
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