今年度は4月から週に1日、自治体の事業委託で、中学校の通級指導教室を担当しています。
個別の教育支援計画、通級個別の指導計画、通級指導、心理検査、通級指導報告書、保護者や先生方向けの通級だよりの作成などが、主な仕事です。
通級には通って来れないけれども、学習支援を必要としている生徒が通常学級にもいます。
今回は、通常学級のT₂支援で、作った教材をいくつか紹介します。
中学1年生の数学:項を空間でとらえることが難しい
小学校の算数では、5+3-4= など、数字とプラスマイナスの符号を、それぞれ独立して考えてきました。
中学に入り、数学で正負の数を学ぶと、+5+3-4 と、符号と数字を1セットにして「項」として見ることが、小学校とは大きく異なる「空間認知」になります。
この空間認知が遅れると、数直線の正負の移動がピンと来なかったり、数直線の後すぐに登場する文字の項 +5a+3a-4a を、「符号・数字・文字の1セット」で見ることが難しくなります。
頭の良い数学の先生や、すぐに目線で区切る空間認知ができてしまう生徒には何でもない「項」が、小学校の算数の空間認知が抜けない生徒たちにとっては大きなハンディになります。
そこで、以下のようなミニポスターを作り、1年生の学級担任の先生と教科担任の先生の許可を得て、教室内の壁に貼らせてもらいました。
このポスターで強調したかったことは、次の2点です。
①項を「符号・数字・文字」の空間でとらえる
➁移項すると項の符号が変わる
手書きの方が目立つので、手書きポスターを掲示しました。
文字式の計算問題では、移項すると項の符号が変わることを忘れるミスが最も多く、定期テストや入試で得点できない、もったいないミスになります。
移項で符号が変わることに最大の注意を払えば、プラス5点プラス10点の得点に繋がるでしょう。
小学校の復習:真分数 仮分数 帯分数
文字式の計算問題で、分数が出てくることがあります。
数学の教科担任の先生は、そこで真分数・仮分数・帯分数に触れました。
音声言語の説明だけで、理解が難しい生徒にとっては、絵で同時提示すると分かりやすいので、私が以下のような分数の比較絵を描いて、教室に貼らせてもらいました。
分数の比較ポスターを教室に持って行って見せると、掃除中だった何人かが、とっても喜んで大笑いしてくれました。
絵の意味が、一目で伝わったのです。
私も嬉しくなりました。
真分数は分子が小さいから細く、仮分数は分子が頭でっかちになるので大きく、帯分数は整数の位置に帯と書いた、意味の違いを絵のように伝えると、違いを言語化できない生徒にも分かりやすいです。
中学2年生の数学:x軸とy軸の認知と、点(x,y)の数値代入が難しい
通常学級2年生の数学「一次方程式のグラフ」のT₂支援では、座標(x.y)の数値の読み取りが難しい生徒が数人いるとわかりました。
そこで、x軸にはxをたくさん書き、y軸にはyをたくさん書いたポスターを作ってみました。
見えないものを見えるようにすることが、心理学を使った数学です。
またの名を「特別支援教育」と呼びます。
これで、座標(x,y)に、x軸とy軸の数値をそれぞれ代入できるようになると、見えていなかった位置と数値が見えてくることになります。
数学の教科担任の先生も、生徒に問いかけながら、時間順序で1項目ずつテレビモニターに以下の言葉を登場させて、生徒に問いかけて整理してくれました。
これらの言葉を、実際のグラフを描きながら対応させられる時、一次方程式のグラフを理解したと言えます。
因数分解は左から処理するよりも以下のような空間で認知すると分かりやすい
因数分解は、理解が進むと、最も数学のテストの得点につながりやすい分野です。
因数分解の解き方のコツをつかめば、絶対の自信になります。
解法のコツは
①( )( )=0と書く。
➁(x )(x )=0文字xを配置。
➂(x 4)(x 6)=0足して10かけて24になる数字を書く。
④それぞれの( )内の±符号を決める。
内項の積と外項の積を足してマイナスになる時は、少し難しくなりますが、基本は上記のような例題です。
例題をaX²+bx+=0とすると、文字で抽象的になって難しくなるので、例題にはやさしい具体的な数字を入れました。
これも、3年生の学級担任の先生と教科担任の先生の許可を得て、教室内の壁に貼らせてもらいました。
英単語の記憶も音節で分けて見えることが重要
小学校から英語を学んでいる生徒たちは、発音はうまいです。
しかし、書くための記憶となると、ローマ字で書いてしまって、間違う場合があります。
例えば月曜日は、マンデイと発音しますが、英単語を書くときはモンダイと覚えておかないと書けないのです。
それを以下のようなポスターにして、1年生の教室や通級の教室に貼りました。
英単語を書くためのこじつけ記憶は、一人一人の言いやすい言い方で大丈夫です。
1.漢字のへんとつくりの分解と合成記憶
2.数学の「符号・数字・文字」の項の空間認知
3.英単語を書くための音節分解とこじつけ記憶
この3つは、視空間認知の仕組みが似ていて、中学生の特別支援教育で、とても重要なポイントだと考えています。
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