14 クーちゃんの猫生
2月に入って、夜はクーちゃんを、ペット抱っこ用バッグにすっぽり入れて、外を見せに散歩に連れて行った。
鼻で夜の匂いを嗅ぐ仕草をして、クーちゃんは静かに喜んだ。
13歳で我が家に初めて来た時から、外が好きなクーちゃんだった。
網戸を器用に開けて、隙あらば脱走しようとしたクーちゃん。
脱走対策に、網戸固定金具「ワンタッチ締まり」を、家じゅうの網戸に取り付けたっけ。
とても13歳とは思えない、元気な猫だった。
亡くなる前の晩も、ヘルスウォーターボールまで歩き、自分で水を飲んだ。
クーちゃんとの別れ
そしてバレンタインデーの翌朝、ついにクーちゃんが逝った。
2月に入っても、クーちゃんは夜中に休むこたつで、猫らしく毎晩手を舐めて、お手入れをしていた。
ドロドロの口内炎の薬のせいで、クーちゃんが手を舐めると、手がベタベタ汚れるので、毎朝、クーちゃんの口と手をぬるいシャワーで洗うのが日課だった。
その朝はシャワーに驚いたようで、引きつけを起こし、頭がガクンとなって静かになった。
猫のクーちゃんに清拭の意味は分からなかったし、もう目も見えなかったから、ぬるま湯とはいえシャワーで驚かせてしまった。
私のシャワーへの触れさせ方が、突然過ぎたのだ。
シャワーできれいにしてもらうことに耐える体力、それがもうなかった。
お湯で温めたタオルに、しておけばよかった。
呼んでも反応がなく、手足がだらんとして、ついにクーちゃんは力尽きた。
私は、クーちゃんをしばらく抱いていた。
それから、東の窓辺の日当たりの良いベッドに、やせ細ったクーちゃんをそっと寝かせた。
私はお礼を言った。
「クーちゃん、半年(人間ならば2年間に相当する)、看病させてくれてありがとう。
親の介護でほったらかしだったのに、いつも笑わせてくれてありがとう。」
片目は口内炎の膿の硬さで見えないが、最後は両目を見開いたまま逝った。
片目のクーちゃんの瞳が、綺麗に光っていた。
クーちゃんの清拭に欠かせなかった、ユニ・チャームシルコットピュアウォーター純粋99%ウェットティッシュで、クーちゃんの眼もと口もとを拭いた。
クーちゃんの全身をウェットティッシュで、綺麗にしながら、話しかけた。
半年間口内炎と闘ったクーちゃん
「お疲れ様、クーちゃん。
半年もの間、口内炎とよく闘ったね。
歯磨きをしてやらなかった飼い主で、ごめんね。
口内炎の治療と看病が、遅れてごめんね。」
午後は、仕事に出かけた。
帰ってから、5匹が眠る、郊外の家の庭に、クーちゃんを葬りに行った。
背中の黒いクーちゃんには、真っ赤な椿の花の根元が、似合う気がした。
クーちゃんは、土の中に静かに横たわった。
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