自分のエネルギー以上の仕事や育児に追われていると、誰でも荒れたり切れたりしやすくなります。
心が荒れる前に、気持ちが切れる前に、相談に来てくれた、若いお母さんに会いました。
疲れたお母さんの中には、相談に出かけるエネルギーさえなく、閉じこもり無反応になってしまうお母さんもいます。
仕事の休みをもらい、育児を保育園に頼んで、疲れていても、大雨の中、若いお母さんは、予約どおりに相談に来てくれました。
他者に、SOSを出す力のある、お母さんです。
子どもに対して、いいお母さんでありたい、穏やかに仲良く暮らしていきたい、お母さんの目からそういう願いが溢れます。
保育園で指摘される困りごとに悩むお母さん
声は弱々しく小さく、姿勢からはため息の様子が見えますが、困りごとをメモしてきて、少しずつ話し始めてくれました。
いくつか悩みを聞いていくと、主に、保育園の保育士さんに指摘されたことを悩んでいます。
保育園や小学校の先生は、20~30人の子どもを集団で預かるので、どうしても子どもたちを比べます。
そして、全員を平均に近づけようとして、子どもの苦手な部分を指摘しやすくなります。
しかし、苦手な部分を埋めていくということは、非常に起きにくいことです。
自分に置き換えてみて、どうでしょう。
苦手なことだけ指摘され、それを直せ、それを直せ、と言われて、いい気分になるでしょうか。
むしろ、得意なことに共感してもらえて、一緒に楽しんでもらえたら、苦手なことも頑張ってみようという気持ちが起きるのではありませんか。
お母さんに、子どもの得意なことに力を入れるように、提案してみました。
保育園の先生にも、子どもの良い行動に、「何々、いいねぇ。何々、できたねー」と、たくさん声をかけて、認めてもらえるとありがたいです。
マイナスの行動に注目するよりプラスの行動の形成に力を入れてみよう
子どもさんの好きなことを聞いていくと、パズルが好き、お絵かきが好き、色塗りが好きなど、主に手を使う作業が好きなことが分かりました。
これは、子どもの発達段階に合っています。
子どもは、身体全体を動かすことが好きです。
多動な子どもさんには、トランポリンやふわふわドーム、ブランコや自転車乗りをおすすめします。
落ち着いて座っていられる子どもさんなら、パズルのような、触覚による運動感覚を満たすことが好きです。
ぴったり填まると、気持ちいいですよね。
この時、そばで見ているお母さんに「入ったねー」と、共感の「ねー」を言ってもらえて、目を見合わせてもらえたら、子どもはきっと笑顔になります。
子どもの好きなことに共感し、そこで子どもとのきずなを強いものにすると、他の生活場面でもお母さんの指示が通りやすくなります。
自分に共感してくれる、この人の言うことなら聞こう、という態度になるのです。
苦手なこと、マイナスな行動、保育士さんに指摘されたことは、ちょっと置いておいて、共感・共有・きずな作りに、一生懸命になってみましょう。
お母さんに、西松屋のアンパンマンお風呂パズルをカッターで切って、ピースを増やした教材を紹介したところ、なるほどと感心してもらえました。
パズルが好きなお子さんなので、すでに簡単になってしまったパズルのピースをカッターで切って、ピースを増やしたら、またしばらく楽しめます。
好きなこと=梅津八三のいう「確定域」の中で、人は満足して自全態になり、苦手な行動にも踏み出す関係性が作られます。
マイナスの行動に注目することを止めて、プラスの関係を作ろうと努力すると、結果としてマイナスの行動は減っていきます。
切り替えが起きにくい子どもさんの時は、その子が今していることを3分間共有してから、「何々をしよう」と頼んでみてください。
その時、声かけだけでは消えて忘れてしまうので、思い出すには目に見える実物が必要です。
出かけるなら車の鍵や帽子を遊びのそばに置く、お風呂ならタオルや着替えを遊びのそばに置く、それが忘れにくい実物になり、切り替えが起きやすくなります。
自分のエネルギー100%と、仕事・家事・育児の、力配分を知ろう
平均的な発達や、常識的な行動を取りにくい、発達障害が心配される子どもを育てるお母さんは、疲れています。
お母さんのエネルギーについて、以下のような3つの図を描いて説明しました。
実家から仕事に行っている、独身のお嬢さんは、家事を全て親御さんにやってもらい、仕事に100%の力を注げます。
私も初めて就職した時、そうでした。
夜7時半に帰ると、母親が夕ご飯を作ってくれていて、食べてすぐに寝てしまうという生活ができたのです。
しかし、結婚するとそうは行きません。
これまでの仕事に加えて、家事が増えます。
エネルギーの力配分は、自分の仕事50%、家事50%になります。
時短勤務や、ご主人の協力が必要です。
子どもが生まれると、エネルギーがさらに足りなくなってきます。
自分の仕事33%、家事33%、育児33%が自然ですね。
育児休暇や、ご主人の協力、ご両親の協力、保育園の協力、などがないとやっていけません。
お母さんにこの図を描いて説明したところ、お母さんの目から涙が溢れました。
若いお母さんが、無理なことを何年も続けてきた、その無理がたたってお母さんの心理が追い込まれてしまった、お母さんにも自分の辛さの理由が視覚的に認知できた様子です。
エネルギーは、200%も300%もあるわけではない。
自分のエネルギーは、100%と限られています。
自分の力以上の生活が続けば、子どもも大人も、荒れやすく切れやすくなります。
仕事でも育児でも、オーバーワークはいけません。
自分がカッとしてしまうような場面が増えたら、能力以上のことを強いられている、働きすぎ、疲れすぎ、家族や保育園に家事育児分担のSOSを出す、と考えてください。
お母さんに少し笑顔が出て、帰って行きました。
またいつでも、相談に来てくださいね。
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