音声のことばのない多動な自閉症児の療育2

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音声のことばのない、多動な自閉症児のA君が、2回目の療育にお母さんとやってきました。

車から降りる時、お母さんはA君の両手に、前回の赤と黄色のジョーロを持たせてくれます。

このジョーロは、お母さんが考えた、「病院の療育に行くよ」という、実物のことばです。

両手に好きなものを持たせると安心する

前回お母さんは、「願いが通らないとA君は自傷をしたり、仲間に手を出したりするので困る」と訴えました。

そこで、「いつも両手に好きなものを持たせることが大事です。」とお母さんに伝えたところ、保育園やデイサービスにも伝えてくれて、他害が減ったということです。

ジョーロを2つ持たせて、両手をふさぐことで、A君の激しい走りがゆるやかになります。

小児科の療育で、前回ずっと持っていたジョーロは、毎回駐車場で車から持って降りると、「あの部屋で遊ぶ」ということばにもなります。

しかし、金曜日の昼間の保育が終わって、きのうと同じに、まっすぐお家に帰れると思ったのに、病院小児科の療育に連れて来られて、A君には納得できない表情が見えました。

また前回は、スマホを片手に持って、大好きなトーマス動画を見ながら、療育の活動に入ったので、A君の好きな状況が保障されていました。

今回は、ジョーロだけで、トーマス動画がなかったので、何をするのかわからず、不安があったと思います。

療育の場所に、まだ不慣れで、ことばのないA君にとっては、トーマス動画が非常に大事であることがわかります。

次回は、トーマス動画の再生を保障する「基地=確定域」を大切にしたいです。

音声のない自閉症児にとってはブランコ運動、曲、歌、動画が基地に

人は脳の中で何かを考えずにはいられないから、ことばのないA君にとっては、トーマスの動画が脳内のことばです。

スマホのトーマス動画のバック画面で、繰り返し繰り返し、同じ歌が流れます。

A君の好きな歌です。

音声のことばのない自閉症のちあきちゃんと付き合ったとき、ちあきちゃんにはブランコが基地でした。

ブランコに乗りながら、填め板に手を出した、ちあきちゃんを思い出します。

(小中と頭部を殴る自傷が激しかったですが、40歳になったちあきちゃんは作業所とお家で穏やかに暮らしています。)

音声のことばのない自閉症のたかちゃんと付き合った時、たかちゃんにはセーラームーンの曲が流れるミニ電子オルガンが基地でした。

たかちゃんは、ミニ電子オルガンを両手で持って、曲を聴きながら2つの部屋を走って往復し、机に戻ってきては、玉入れや棒差しをしました。

(たかちゃんは中学部から走らなくなり、高等部になって、ひらがな五十音表や1~5の階段を学習しました。)

A君の好きなペットボトルのキラキラ水

今回の療育でA君は、スマホのトーマス動画の代わりに、片手にペットボトル水、片手に水筒を持って走ります。

ペットボトルに、水を1/5くらい入れて、上下逆さにまわして、水がキラキラするのを楽しんでいます。

水が好きなA君の様子を、よく見ているお母さんが作ってくれた、おもちゃですね。

お母さんはビーズトイから思いついたのかもしれません。

次回、ペットボトル水を、大小5本ほど用意し、A君に提案してみたいと思います。

ペットボトル水に軽重もつけて、棒差しみたいにするといいのかな?と思って、ペットボトルがストンと入るような透明の枠を、100円ショップで探してみます。

酒屋さんのビールケースのようなイメージで探します。

牛乳パックの連結でも、ペットボトル立てができるかな?

ヒットした教材はトランポリンとくるくるチャイム

いくつか教材を用意しましたが、A君の目と手の協応が難しく、A君から自発的行動や笑顔が出たのは、クッション式トランポリンと、くもんのくるくるャイムでした。

療育の部屋が狭いので、直径1mの大きなトランポリンは置けないから、流行のクッション式トランポリンを置いたところ、何度も喜んで飛びました。

くるくるチャイムは経験があるそうで、自発的に5つ続けて球を入れて見ていました。

容器が透明で、玉落ちが見えるところが、30年以上大ヒットの理由ですね。

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A君はトランポリンを飛んだり、くるくるチャイムの玉入れをしたり、お母さんに抱きついてお母さんの感触を楽しんだりします。

A君の手の動きは、まだ初期的で、壁を叩いたり、自分の手を壁に置いて、片手で手のひらを叩いたりする動きです。

スリット通しジャラットプレートでは、応じてくれましたが、穴を見ることと、円盤の方向を合わせることが難しく、自力では入れられません。

お母さんが上手に手伝って、一緒に入れます。

スリット通しは、シール容器で、穴の輪郭をマジックで際立たせて、円盤の横向き入れから、学習する必要があります。

ベック社のシロフォン付玉の塔は、玉と穴が小さすぎて、A君は自力で穴を探すことができませんでした。

シロフォン玉転がしの高さと、A君の目の位置が、穴の見えに関係します。

穴を、目で見やすい高さに置く必要がありました。

お母さんが穴を指さしたり、見本で玉を入れて見せたりしますが、A君はシロフォン玉転がしの一番上の横棒に球を置きます。

これも、見えやすいように、穴を際立たせる必要があります。

ヒットしなかった教材

キッズテント機関車は、小さい時は遊んだそうですが、今回は狭い療育の部屋ではヒットしませんでした。

長い時間を過ごす場所で、広い部屋の片隅に置けば、使えるかもしれません。

落ち着けるコーナーとして、放課後デイサービスや、来春入学する特別支援学校等で使ってもらえるなら、その時はこれをプレゼントしたいと思います。

トーマスのひらいてピョコンがなかったので、アンパンマンのひらいてピョコンにしましたが、やはりこれも全くヒットしませんでした。

手前のボタン操作と、奥のキャラクター人形の関連性を理解して楽しむ教材なので、A君にまだ難しいです。

いつかチャンスが来たら、チャレンジしたいと思います。

A君の身振りのことば

A君はお母さんに促されると、食べたいの「ちょうだい」と、スマホの「もしもし」の身振りができます。

パンを食べたい時、スマホを見たい時、ちょうだいの自発が増えると素晴らしいですね。

くちびるを手でさわる身振り、「食べたい」を作っていきたいです。

前回はお腹が空いていたのか、椅子に座って何度もちょうだいをして、パンを食べたA君でした。

今回はお腹がいっぱいなのか、パンを食べたがらず、座りたがらず、前半30分で、「帰りたい」とお母さんの手を引っ張ります。

家の写真を撮って、両手で三角山を作る「家」の身振りも作っていきたいです。

30分で帰ってもいいのですが、療育の時間が50分間なので、私が「遊ぼう」と、玉入れの玉を渡します。

療育の後半は、お母さんの手提げからスマホを探し出し、「トーマスの動画を見せてくれ」という、実物のことばがA君からありました。

目のわきをさわる身振り、「見たい」も私たち大人が使うことで、作りたいです。

インターネットがなかなか繋がらず、大好きな画面がすぐに出ないと、「ウー」という怒りの唸り声とともに、頭を叩く自傷が出ます。

しかし、お母さんが一生懸命スマホあれこれして見せてくれると、じっと見て待っています。

自分の手で握手🤝して待つ、「待つ」の身振りも周りの私たちがやって見せて、作っていきたいです。

ようやくトーマスの動画が出て、スマホを持って、笑顔でトランポリンを飛びました。

帰りたい気持ちがおさまって、穏やかになった時に、車の鍵を見せて「終わり」「帰ろう」と提案しました。

この先のA君とのやり取りの予定

A君とは、玉入れ➡玉差し➡棒差し➡リング差し➡スリット通し➡直接法宝探し➡丸い填め板へと、やり取りを進めていくつもりです。

来春の入学先の特別支援学校でも、上記のような教材を、目と手の協応学習に使っていただけると良いですね。

目と手の協応が進むと、生活でも、服のボタンとボタンの穴を見たり、水筒やペットボトルのキャップを見たりする行動が起きます。

ことばのない子どもにとって、モンテッソーリの教材は、初期学習(中島昭美あきよし、水口ふかし)の素晴らしい教材です。

「AとBを分けるとき、ことばが生まれる」とは、中野尚彦の名言です。

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