野良の老猫の看取り

102969f6e78768bc72656d02c7cda8f7-1
この記事は約3分で読めます。

30 茶色短毛猫のお見送り

 お母さん猫に出会って6年目、親の介護のため、実家に引っ越しをすることになった。

5年前、偶然にも野良猫を飼うことになり、庭のある家に居ついたお母さん猫が引越しに順応するかどうかわからなかった。

引越しの練習

2年ほど先延ばしにしていた引っ越しだった。

狩り猫灰色が死んだことも引っ越しを決断しやすくさせた。

住み慣れた郊外の家から、4キロばかり離れた市街地の実家へ春に引っ越しをした。

お母さん猫を日中何度か練習に連れて行き、今回の引っ越しをいい機会に、お母さんを完全室内飼いにすることにした。

引越し先は庭も車庫もないので、連れて行けない茶色短毛のことが気がかりであった。

短毛のいる庭と車庫の出入りサッシを10センチ開けておき、短毛が眠るとき車庫で雨露をしのげるようにした。

私が仕事に行く朝は必ず、引っ越し前の家の車庫に寄って短毛の餌の茶碗に餌と水をやり、トイレを清潔にした。

餌がなくなっているうちは安心だった。

短毛が車庫で無事に寝泊りできている証拠だったから。

しかし短毛にも私たちの引っ越しがわかったのだろう。

あるいは他のよそ猫に車庫の餌を目当てにされ、車庫で闘いを挑まれ、病気ゆえに力なく負けて車庫の寝床を放棄したのか。

置いて行かれるとは知らずに

夏ごろから短毛が車庫で餌を食べた様子がなくなり、短毛の消息がわからなくなった。

初冬のある夕方、引っ越し前の家に荷物を取りに寄る用事があり、私は暗い玄関へ向かった。

宅配便入れのダンボールに、丸まった骸骨のような短毛がいた。

生きていたのだ。

何も食べ物のあてがなく、病気が進んで骨と皮だけになって、おそらく毎日我が家の玄関で私の帰りを待っていたのだ。

私は引っ越しを悔いた。

夕方我が家へ戻る習性の短毛に合わせて、仕事帰りに車庫をのぞいてやらなかったことを悔いた。

「餌をやって、居つかせておいて、見捨てて、ごめんね。短毛」

私は風呂場の温水シャワーでダニだらけの短毛を洗った。

短毛にはもう抵抗する力はなく、短毛はまったく動かなかった。

電話を入れて動物病院に連れて行った。

獣医さんは栄養剤の注射と水分補給の注射をしてくれた。

車庫に連れ帰って、毛布と柔らかいベッドを用意して短毛を寝かせた。

春に一人ぼっちになって

その晩短毛は逃げなかった。

もうどこへも動く力がなかった。

翌日の夕方、獣医さんに相談すると短毛を入院させてくれるという。

私は依頼した。

2日目も危篤状態の短毛の安否が一日じゅう気になった。

せめて最後は看取ってやりたかったのだが‥‥‥。

獣医さんに預けて3日目の午後、獣医さんから「静かに息を引き取りました」と電話があった。

泣けた。

手厚く看護してやれなかった短毛だけに、引っ越しで別れた後悔で泣けた。

短毛が我が家へ現われてから、短毛に目薬を差してやったけれど、頭を撫ぜてやったけれど、汚い毛をすいてやったけれど、私が歩くたびに私の足元に擦り寄ってくる目のただれた短毛を、生きている間はとうとう一度も抱いてやらなかった。

獣医さんから渡された短毛の、硬直した身体をバスタオルで巻いてキャリーバッグに入れ、その上からそっと抱きしめた。

短毛をクロと灰色が眠る金木犀の近くに深く埋めた。

猫にも天国があるのなら、天国でクロと母似と灰色の父親として、威張って暮らしてほしい。

 

猫ちゃん

 心理学に基づいた子ども理解と教材について語り、発達を拡大促進する創作教材を紹介します。市販教材も紹介します。
 要支援2~要介護5のアルツハイマーの親の15年の介護でやってみたアイディアも投稿しています。
 7匹の猫生の記事も笑えます。
 このブログの題名「猫ちゃん」は、認知症の親が猫の名前を憶えられず「猫ちゃん、猫ちゃん」と可愛がったことに由来しています。

猫ちゃんをフォローする
 教材 紹介
 教材 紹介
野良猫お母さん
スポンサーリンク
猫ちゃんをフォローする
猫ちゃんブログ

コメント

タイトルとURLをコピーしました