野良猫だったクロちゃんを捕まえてから、10日が経ちました。
クロちゃんの、人間に対する変わらぬ恐怖の姿にあって、クロちゃんをまだ動物病院に連れて行けないでいます。
恐怖から、身の守りの攻撃が起きそうなクロちゃんを、無理やり動物病院に連れて行っても、動物病院にも迷惑をかけます。
ひっかくとか、かじるとか、が起きそうです。
2段のケージ約121×幅約93×奥行約63cm
タンスのゲンのコンパクトサイズのケージ幅69×奥行48×高さ153にしておいたら、我が家の小さなエレベーターにも入って、クロちゃんを陽の当たる部屋に連れていけてよかったなあと思っています。
子猫だったら、最も小さい1段のケージは、アイリスオーヤマのコンビネーションサークル、ペット用トイレトレーニングサークル(ブラウン)は、幅47cm×奥行き65cm×高さ65cmです。
屋根は別売りですね。
これは、猫の成長にしたがって、さまざまに、ケージを合体・増設できます。
上下縦型2段3段は猫ちゃん用で、左右横につなげると、ちょっと走れるワンちゃん用になります。
我が家の小さいエレベーターに入るためには、キャスター付きケージで、陽のあたる窓辺まで移動できるケージ、コンパクトなケージが欲しかったのです。
そこまで考えずに、カインズ実店舗で購入したのは、幅69cm×奥行55cm×95cmでした。
同じサイズでも、猫の行動と慣れ方をよく考えて買うとすれば、以下のペティオのケージ、本体サイズ幅71㎝×奥行58㎝×高さ101㎝ が一番いいかなと、今では思っています。
このケージが特にいいのは、猫の出入り口のキャットフラップが付いていて、猫が自由に部屋に出たり、ケージにこもったり、好きにケージを出入りできるところですね。
恐怖心からの威嚇
私がトイレ砂のウンチを取ったり、排尿シーツを片付けたり、散らかったトイレ砂を掃除するときは、クロちゃんはケージの一番上の左端っこに張り付いて、黙って見ています。
クロちゃんは、私がカリカリと水を取り替える時、黙って静かに見ています。
私を引っ掻こうとしたりはしません。
クロちゃんを見ないで、黙って作業する私が、クロちゃんに接近しないことを、クロちゃんも分かったからですね。
8日目、クロちゃんは、スプーンに乗せたちゅーるアペティートに接近して来て、黙って美味しそうに4回も食べて、その後、のんびりした姿勢で私の目を見てくれました。
しかし、同じやり方をしても、9日目は、用心深そうに後ろへ下がり「ファーッ」と言って、私を追い払ってから食べます。
食べる姿を、見られたくないのです。
「美味しいものをくれる人」という認識は無理で、私のことを「何をするか分からない敵」と思っています。
ちゅーるアペティートをもらえる時は、スプーンと一緒に、私の手がクロちゃんに向かって接近することが怖いから、用心して、「俺に近づくな」という意味で、「ファーッ」と、私を威嚇します。
私がケージを掃除する手の動きと、スプーンで接近する手の動きを、クロちゃんが区別して、接近の危険を判断していることに、驚きます。
9日目は威嚇されましたが、10日目・11日目は、スプーンであげれば、威嚇なしに、ちゅーるアペティートを食べました。
2週間後には、ちゅーるアペティートを3本も食べました。
しかも、私と15cmくらいの距離に接近してくれました。
調子に乗った私が、ちゅーるアペティートを指に付けて出してみたところ、それには全く接近しませんでした。
スプーンと指を、とてもよく見分けているクロちゃんです。
現在、威嚇なしに毎日、スプーンからちゅーるアペティートを 食べています。
そしてついに、スプーンからちゅーるアペティートを食べた後、続けて私がちゅーるアペティートを指にのせて出すと、クロちゃんは私の指から、3度食べてくれました。
クロちゃんの綺麗なピンク色の柔らかい舌の感触が、ふんわりと優しかったです。
しかし、保温のための電気毛布を整える時、一瞬でもクロちゃんの身体の毛に私が触れると、ファーッと言います。
ちゅーるアペティートという食べ物は、目的が分かるので私の指が平気になったが、身体の毛を触られることは、捕まえられてしまう!と危険に思うので、嫌なのですね。
アヴェロンの野生児
エサをくれる人に、慣れようとしないクロちゃんを、18日間見て来て、私は「アヴェロンの野生児」を思い出しました。
梅津八三の「野生児の問題」1968年 三和書房 、アヴェロンの野生児が紹介されています。
Amazon に、「アヴェロンの野生児」の中古本があります。https://amzn.to/35ZYXfy
梅津が資料としたのは、フランスのジャン・イタールの「アヴェロンの野生児-その生立ちの記録」 古武弥正訳 1949年 丘書房 の2つの論文です。
アヴェロンの野生兒 : その生立ちの記録 (丘書房): 1949
梅津は、1948年から1970年まで、山梨県立盲学校で、2人の盲聾児「しげこさんとただおさん」を日本で初めて教育しました。
その盲聾教育の実践の後、梅津は「ヒトは、環境によって行動体制の型が作られる」と、「野生児の問題」をまとめています。
イタールは、1800年当時26歳のフランスの耳鼻科医で、このアヴェロンの野生児に、ヴィクトールという名前をつけて、丁寧な教育をしました。
ヴィクトールは4~5歳頃、フランスのアヴェロン地方の森に捨てられ、発見された時は12歳くらいでした。
イタールは、赤ちゃんと同じ発達経過を想定して、5年間ヴィクトールを教育します。
1.少年の、家庭的な環境を整える
2.外からの刺激に応えられるような、生活習慣を作る
3.社会のしきたり、他の人とのコミュニケーションの仕方を、学ばせる
4.言葉を、学習させる
5.事象についての概念を、形成する
少年ヴィクトールは、3ヶ月ほどで、ベッドで寝たり、トイレで用を足したり、洋服を着たり、お風呂に入ったり、世話してくれる婦人に、喜びや怒りを表わすようになりました。
しかし、身振りでのやり取りは、多少できたものの、言葉の発声は難しかったそうです。
言葉と事象との対応付けは、名詞・形容詞・動詞まで学習し、文字も真似て書くようになり、筆記の文字の言葉カードが、「ミルク」などの要求に使われるようになりました。
音声以外の4分野は進化がありましたが、思春期の嵐が訪れて、少年の興奮を鎮めるには、当時は、瀉血療法(血を抜く)しかなく、学習はここまでとなりました。
その後ヴィクトールは、おとなしい人柄に落ち着いて、聾唖院の手伝いをしながら、40才で一生を終えました。
人馴れしない生粋の野良猫のクロちゃんの恐怖心を見ると、梅津八三が「行動のいずれにも正当性がある」と解説してくれた、アヴェロンの野生児を思い出します。
梅津は、野生児も盲聾児も障害児も健常児もその境界はいらない、野良猫も家猫もその境界はいらない、すべて環境との関係で特定の行動がある、と教えてくれています。
もしかしたら、クロちゃんは、野良猫のままでも幸せなのではないか?
野良猫より、家猫の方が幸せだと思うのは、私の思い上がりではないか? と思い始めました。
寒さをしのげて、餌をもらえることだけ、野良より安全で、守られているかもしれませんが‥‥‥。
クロちゃんは耳が聞こえていないのではないか?
さらに、この10日間で、私がクロちゃんに感じることは、もしかしたら、クロちゃんは、耳が聞こえてないのではないか? という疑いです。
呼んでも何も反応がない、音にも驚かない、耳が聞こえていないために、目から見える情報で、非常に恐怖心を持つ、10日間でクロちゃんに対して、そんなことを感じています。
後に聞こえていることがわかりました。2022年9月17日現在、私が1階に降りた物音を聞きつけるとクロちゃんは、朝ごはんががもらえると思って、隠れ場所から私の方へやってきます。自閉症の子どもさんがオモチャに夢中になっていると、お母さんが呼んでも応答がないので、耳が聞こえてないのではないかと疑うのに似ていました。
クロちゃんが築き上げた、野良の生活という、クロちゃんの確定域を奪って、今、私がクロちゃんにしている保護は、本当にクロちゃんの幸せになるのか、分からなくなりました。
しかし、ヴィクトール少年も、3ヶ月間お世話してもらって、変容があったので、私も3ヶ月はクロちゃんのお世話をさせてもらおうと思っています。
ちょうど冬の寒い時期、クロちゃんのお世話をさせてもらい、仲良くなれたら動物病院に連れて行って、ワクチン接種と不妊去勢手術をさせてもらい、クロちゃんの様子で、野良に返すのか、我が家で飼えるのか、考えたいです。
クロちゃんを保護したことは、クロちゃんの野良としての幸せを壊したのか、クロちゃんを見ながら、自問する毎日です。
1階のクロちゃんに気づいていない花ちゃんは、きょうも、クロちゃんの姿を見たくて、今か今かと待っています。
猫ちゃんブログへのコメント
ねこものがたり、複雑になりますね。関わればいろいろなことが見えてくるものですね。
仕事の繫忙期に事件連続、まだまだ続きますか。
家の中に入ろうとする野良猫は、かつては家猫だった猫ちゃんのようです。
入ろうとするのだから、事情が許せば、入れたい。
クロちゃんは餌には近づくが、人には決して近づこうとしない猫だったので、TNR(Trap-neuter-return)を狙っています。