発達に心配のある子どもたちの中には、視空間認知に苦手さを持っている子どもがいます。
視空間認知は、建物内の位置を覚える、道具の操作がわかる、着替えができる、人や物にぶつからずに歩く、人の顔を覚える、相手と程よい距離を保つ、ボールを使った運動競技等ができる、地図を読める、図形を描ける、頭の中で空間イメージを作る、などに関係しています。
頭の中で空間イメージを作ることができれば、ひらがな、数字、カタカナ、漢字、ローマ字や英単語を書く、数学の文字式を解く、相手と自分が置かれた場面を音声の言葉で説明する、などが可能になります。
文字を書く、文字式の同類項をまとめる、時間順序で出来事を振り返る、などの空間イメージを脳内で分解合成することが難しい子どもたちを、脳外のカードで助けると、脳内での分解合成を育てることができます。
ひらがな・数字の視空間認知を作る
し、つ、の、い、こ、り、などは、分解と合成の数が少ない、単純な線分で、書きやすいです。
「め、あ、ぬ」「わ、ね、れ」「ち、と、を」「て、そ、れ」「う、え、ん」などは、線分を合成して書くので、複雑な線分です。

発達障害の中でも、学習障害、書字障害と呼ばれる子どもたちは、空間イメージを脳内で分解合成することに苦労していて、楽に書けません。
そこで、透明カードを使って、複雑なひらがな文字を脳外で組み立てる練習を重ねると、ひらがな文字を脳内で再現できるので、書きやすくなります。

A4のクリアファイルと、黒マジックがあれば、どなたでも簡単に作れるので、ひらがな文字に苦労している子どもさんと、透明カードの重ね合わせを楽しんでください。
数字も同様です。
1,6,7,は比較的簡単に書けますが、2,3,4,5,8、9の書字に苦労する子どもは多いです。
例えば、「4」「5」の数字も、A4のクリアファイルと黒マジックで分解してやり、カードを合成させましょう。

カタカナは線分の数が少ないので比較的簡単ですが、書くことに苦労しているカタカナがあれば同様にやってみましょう。
「ノ➡フ➡ラ➡ヲ」「ス➡ヌ➡ク➡タ」などのように、重ね合わせる線分を増やしていきます。
透明カードによる重ね合わせの学習の後、50字の漢字練習帳を使って、「あ」であれば「横ー、縦|、の」と大人がそばで言ってやり、子どもが書いてみましょう。
子ども自身が「横ー、縦|、の」とつぶやきながら書けるようになると、楽にかける人と同様の、書字が完成です。
この二重の仕事、つぶやきながら書く、ことが難しい子どもたちが多いです。
目で見るだけの同時処理は得意だが、時間順序でつぶやいていく継次処理が苦手な子どもは、漢字記憶が苦手です。
書いたことを認める、形が合っていることを認める、書き順は後で良い
文字の形を楽に書けるようになるまで、書き順については、間違いを正さないようにしましょう。
目で見ること、手で書くこと、の他に、書き順まで要求され、間違っていると非難されると、ますます書くことが嫌いになります。
空中で書く身振り運動も、記憶を助けます。
グレーのマジックや、緑の色鉛筆で、大人が書いてやる、ひらがなのなぞり書きでも、運筆練習は OK です。
鉛筆を持つことに苦労があれば、ホワイトボードや、ホワイトボードアプリ「Let’s Draw」「12Boards」「フリーボード」などでタブレットに大きく書きましょう。

鉛筆で書くことは苦手だけれど、半紙いっぱいに筆で大きく書く書道は好きだという子どもさんもいます。
漢字の視空間認知を作る
漢字も、ひらがなの「あ」と同様に、カードに書いて、ハサミで切って、分解と合成を行ないます。


漢字の分解と合成を、手で操作できるカードで学習しながら、冠・偏・旁に名前をつけると、視覚記憶に聴覚記憶も加わり、漢字記憶を助けます。

食べ物「焼肉」、お店の名前「丸亀製麺」など、その子どもさんの好きな分野の漢字から始めると、漢字学習への取りかかりがいいですね。
1枚1枚カードに書く準備が大変な場合は、教科書の巻末の漢字を200%に拡大すると大きくなり、冠・偏・旁をハサミで切って分解合成できますし、蛍光ペンで冠・偏・旁を視覚的に区切りながら、冠・偏・旁を音声で言う学習もできます。

漢字を書きながら冠・偏・旁を言う2つの仕事は難しいが、蛍光ペンを塗りながら冠・偏・旁を言う2つの仕事の方がやさしいです。
会話や気持ちを時間順序で合成し視空間で認知する
出来事の振り返りも同様です。
出来事を時間順序で分解し、カードで視空間化し、会話や隠れた意味を、時間順序で合成して、次回の行動プランを立てます。

音声の言葉は空間がないので、子どもたちは脳内に出来事のイメージを持ちにくいです。
カードを使って、出来事の時間と空間を見せることで、認知が良くなり、落ち着いた振り返りができ、次回どうしたらいいかの行動プランを立てられます。
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