今回は、書き文字の中の、特に漢字に焦点を当てて、漢字記憶を助ける方法を探ります。
手先の器用な人と不器用な人がいます。
遺伝的に親御さんからもらった形質から来る運動能力だと思うので、運動音痴でも不器用でも、本人の責任では無いと考えています。
与えられた形質と自分を、どう調和させていくか、それが大事なことに思えます。
大人になれば、子ども時代よりは手指も器用になり、文字を直接ペンで書かなくても、パソコンで書類を音声入力作成でき、スマホで音声入力メールを送れます。
学校場面では、まだまだたくさんの書く作業と脳内記憶を問われる小中学生の苦労に、我々はどんな風に共感し、どんな風に助けることができるのか。
不器用な子どもも、自己肯定感を持てるように、チャレンジ精神や、努力中の途中経過を認める言葉をかけたいものです。
Ⅰ 文字や漢字のミスに対する肯定的な言葉かけ
「よく考えたね」
「あと一歩だね、惜しいね、似ているね」
「同じ所が分かったね。違う所はこことここだよ」
「意味は『A』と『B』というふうに違うから、漢字も別だよ」
「1文字を押さえて、もう1文字の方を読んでみよう」
「2文字熟語の分かる方の1文字を先に書いてみよう、すると思い出せるよ」
Ⅱ 線図形・文字・漢字などを記憶しにくい原因は?
文字を記憶しにくい原因は、以下の3つが考えられます。
- 空間認知が弱い。片付けができない。目についた線分から書き始める。など
- 言語発達が未熟。つぶやかない。説明が苦手。など
- 手指が不器用。 つまめない。物をよく落とす。鉛筆の持ち方が独特。など
Ⅲ 物の見え方に苦労がある
文字を楽に捉えられない原因は、以下の8つが考えられます。
- 眼球運動がぎこちない。視能訓練士 北出勝也さんの 『ちゃんと見えているかな?』 を是非参照してください。(えじそんブックレット)
- 乳幼児期に眼球に眼振があると、注視が難しいです。
- 斜視・遠視・近視・乱視があると、板書の書写が難しいです。集団場面での座席の位置に配慮を要します。
- 視空間認知の力が弱いと、上下、前後、左右、手前奥、こそあど、トランプ周り順の記憶などが困難 です。
- 図と地が分からないと、線図形をまとまりで見ることが苦手、線図形の合成と分解ができない、注視すべき場所とそれ以外を取捨選択できない、などが起きます。
- 部分と全体を同時に見るのが難しいと、2ミリ開ける空間が見えないで、漢字練習帳のマス目いっぱいに書く、などが起きます。
- 大きさ・遠近感が分からないと、車が接近しているか遠いかが分からない、人や物によくぶつかる、1点だけ見てその他が見えない、などが起きます
- 文字が揺れて見えると、文字の形を捉えられず、書けません。
Ⅳ 文字記憶・漢字記憶を助けるには、似ている文字の同時提示と、違いの言語化
記憶を助けて、記憶を形成するには、以下の方法があります。
- 空間の形成が必要。保育園の頃から、左から右へ、上から下へ、物事を処理する。
- 左から右へ。点つなぎ・なぞり書き・物の数え方・ものの並べ方・しまい方など。
- 上から下へ。点つなぎ・なぞり書き・物の数え方・ものの並べ方など。
- 斜めの難しさ。点結びでは、ゴールを助け手の人差し指で押さえスタートから線を引く。
- 身体運動で方向を表わす。前・横・後ろ・上・下を指差す。体側を中心に両手の平をあげて、水平、垂直、斜め。
- 線図形の分解(見え方)と合成(書き方)「|―=+×T〒#ЖШ」を書き写す。 カタカナ・平仮名の分解と合成「ノ、の、め、あ。つ、フ、ろ、わ、る、ね、そ、れ」などを書き写す。
- 手指を器用にするには、家事手伝いをさせる。美文字の3本指引き運動、ダイソーの太い鉛筆を使う。
- 視能調整機能の促進。メガネ、室内の調光、などで助ける。
- 教科書の文章に、文節区切りでスラッシュ線を入れて、見る量を援助する。
- 数字読み、平仮名1文字読み、平仮名の横読み・縦読み・斜め読みの練習により、読字の視機能を高める。
- よく見かける高親密語の平仮名2文字読み・3文字読み・4文字読み、あまり見かけない低親密語の平仮名2文字読み・3文字読み・4文字読みを行なう。
- 促音・長音・拗音の学習では、清音単語との比較照合を同時提示で行なう。
- 似ている漢字の同時提示で、似ている漢字の差異について、言語化できるように、こじつけ説明や記憶するコツを教える。
13.「悲しい」という字の「非」が「北」になってしまった。
確かに似ている。
目だけの記憶ではこうなる。
漢字は意味を記憶できないと覚えていくことが難しい。
似ている漢字の同時提示で、先生から違いについて触れてほしい。
Ⅴ 漢字記憶を助ける学習の例
- 好きな分野に関する漢字を使う。(図鑑漢字昆虫、図鑑漢字鉄道、図鑑漢字恐竜など 学研880円)
- 絵による象形文字、画像視覚記憶で印象づける。比較照合・同時提示が大事。
- 身振り運動で記憶を助ける。 「命」という漢字を身振りで表わす。
- へんとつくりのカードを合成させて記憶させる。
- へんの漢字とへんの名前をカードにして、 ゲームの神経衰弱をする。
- カードやペットボトルキャップによる漢字の熟語作り。
- シール貼り解答にする。比較照合・同時提示
- 線結び解答にする。
- 選択肢の〇囲み解答にする。比較照合・同時提示
- 選択肢の記号番号選び解答にする。比較照合・同時提示
- 選択語群から解答を書き写す。比較照合・同時提示
- 誤りの修正を書かせる。
- 空欄に脳内記憶から書き入れる解答にする。
同時提示のプリントが漢字の差異を比較照合させ記憶を助ける
Ⅵ 通常学級の集団指導では
- 空書きの時、画数でなく、へんの名前を言う。
- 新出漢字練習時、黒板に既習の似ている漢字を同時提示し、比較照合させ、違いを言語化させる
- あかねこ漢字ドリルや漢字練習帳での漢字練習では、目だけで写すことを避け、部首をつぶやかせながら書かせる。
脳外への、同時提示による比較照合が、漢字記憶を助ける方法だと考えています。
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