11 クロの事故
12月、子猫たちも、生まれてから半年くらい経つ。
離乳して身体も大きくなり、好奇心も広がって、道路へと出て行く姿も増えた。
このころ、よそ猫がうちの庭へ頻繁に侵入するようになり、母猫が怒って追いかけ、追い払う中で、子猫もお母さんについて、近所に見回りに行くようになった。
そして、子猫の見回る縄張りがそれぞれに出来、単独行動をするまでに成長した。
猫たちは、お母さん、灰色、母似の順に私に懐いた。
用心深くて人になつかない子猫
用心深いクロだけが、なかなか私に懐かなかった。
そのクロも4ヶ月経って、急に私に懐き、クロのほうから私の膝に寄って来て、初めて撫でさせてくれた。
クロは、4匹の中で、見かけと違って、触るとフワフワな柔らかい毛をしていた。
わたしが「クロ」と呼ぶと「ニャー」と返事をしたり、人間の炬燵で私の膝に乗ったり、私の手をなめたりしてくれるようになった。
可愛く、嬉しかった。
漸くクロも、私に心を許してくれた。
やっと仲良くなれた。
クロ猫の死
そう喜んでいたある朝、庭に出てみたら、横たわっているクロを見つけた。
確か、朝の見回りに、一人で出かけたらしかった。
しかし、目の前のクロは、口から血を出していて、動かなくなっていた。
近くの畑にでも行って、ネズミでも食べたのだろうか。
我が家の周辺は、畑に殺鼠剤をまくような、田舎の土地柄だった。
身体のどこにも、傷はなかった。
苦しかったろうに、よくここまで、帰って来た。
クロは最後の力を振り絞って、我が家の庭まで戻ったのだ。
「ごめんね。お腹が空いて、畑でネズミを食べたのかな。」
朝の給餌が遅れたことを謝っても、後の祭りだった。
クロの身体は、すでに硬直していた。
ペットの出入り口を取り付けて、クロの自由を保障したことを悔やんだ。
ペットの出入り口は、外へのガラス戸につけるのではなく、室内のドアにつけて、室内の猫の移動を保障するだけでいいと、今では分かる。
お母さん猫の子別れの様子
お母さんは少し離れたところから、動かないクロを一瞥したが、寄り付きも鳴きもしなかった。
なんとあっさりとした、別れなのだろう。
これなら、子どもに依存しない。
子別れの悲しみに、執着しない。
初めて見る母猫の子別れの光景に、私は拍子抜けした。
妊娠期間の短い、多産の猫ならば、そういうものなのかもしれない。
この3日間で、ようやく私に懐いたクロだけに、死なれると寂しかった。
8月に出会ってから、まだ4か月しか経っていない。
クロは、わずか7か月の短い命だった。
クロを、庭の金木犀の根元に埋めた。
お母さんは、私の埋葬作業を何度も見に来た。
それが、お母さんなりの別れ方だった。
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