美味しいものを食べたり、美しいものを見たり、温泉や湯船に浸かったり、フカフカの布団で眠ったりすることは、誰でも快適です。
我が家の猫ちゃんを見ていると、とにかく「快適さを保つ」ことを探して、毎日暮らしていることがわかります。
不快を避けて、できるだけ快適に暮らそうとするのは、動物も我々も同じですね。
快適に暮らすために、人も様々な家電製品を開発して、使っています。
快適さを求めることは、悪いことではありません。
時と場合によって、快適さを取るか我慢するか、選ぶ基準が2つになると、家族や仲間との関係を保つのに、よさそうです。
我々は、所属している家庭や学校、あるいは会社に適応するために、快適を選ばず、少しの不快は我慢して、所属する集団への適応のほうを選ぶ、仲間との良好な関係のほうを選ぶこともあります。
自分自身の快適を選ぶのか、家族や仲間のために自分自身の快適はちょっと我慢して、周りに合わせるのか、その2つを使い分けられるといいですね。
快感の代替えの提案
自閉症あるスペクトラムがあって、同一性の保持やこだわりが強いかたは、不快を我慢して集団への適応を選ぶことが難しく、自分の快感のほうを選びやすくなります。
脳機能で規定されている、先天的な特性なので、本人の快不快の基準変更は、なかなか難しいのです。
そこで不快に耐えろ!というよりは、他の代替えの快感を増やす、と考えるのはどうでしょうか?
病院の心理相談にも、感覚運動を満たしたい子どもさんの相談がよくあります。
例えば
高い所にすぐ登る
いつも身体を動かしている
いつも何かを触っている
手悪さをしている
姿勢が悪い
いつもタオルやぬいぐるみを手に持っている
友達に手が出る
ゲームばかりしている
スマホや YouTube ばかり見ている
などの訴えと相談があります。
子どもの発達順序は、触覚➡視覚➡聴覚です。
触覚=触る快感を満たすことは、自然なことです。
乳幼児が、安心する姿を思い浮かべてください。
24時間、お母さんに抱っこされていることはできないので、お母さんの代わりに、快適な布団や毛布やぬいぐるみを使いますね。
通常学級でも触覚運動を満たすことが快適さのポイント
通常学級でも、身体全体を動かす行動を、授業に取り入れてください。
お当番で、配布物を配る。
漢字の空書きは、へんとつくりを言いながら空中に身振りで書く。
あかねこドリルや漢字練習帳も、へんとつくりをつぶやきながら書く。
教科書は、必ず手に持って読む。
立位音読の、交代読みにする。
ペア相談や、ロの字型の4人グループ相談を取り入れる。
書き込み式のプリントを使う。
3問ずつのプリントができたら、教卓まで取りに行く。
足し算・引き算・円周・三角形・2倍・3倍など、先生も子どもも身振りを使って表すことを授業にたくさん取り入れます。
身体全体や手の作業を増やすと、何かを触る時間も少なく、手悪さをしている時間も少なく、姿勢が悪い時間も少なくなります。
友達にすぐ手が出てしまう子どもの感覚運動を満たす
高い所に登るような子どもさんは、ロッカーや机の下などの落ち着ける狭い場所や、フード付きパーカーが必要なこともあります。
タオルやぬいぐるみのようなものをいつも持っていたり、友達にすぐ手が出てしまう子どもさんには、感覚運動を満たす、玉入れ・棒差し・ブロック・レゴ・粘土・工作・折り紙・パズル・フワフワの柔らかい大きなぬいぐるみや毛布などが必要です。
一人だけでさせるのでなく、必ず大人が相手をして、楽しみを共有してください。
好きなこと、確定域の共感が、暴言や暴走にブレーキをかけます。
マイナスを消去しようとするよりは、プラスの行動を増やしていく視点がいいです。
電子ゲームやYouTube依存の子どもとアナログゲームを共有する
電子ゲーム依存になったり、 YouTube ばかり観ている子どもさんには、大人が相手をして、ボール投げ、あやとり、トランプ、3目、5目並べ、囲碁、将棋、オセロ、チェス、すごろく、野球ゲーム盤、人生ゲームなど、2人以上で遊べるアナログゲームが、代替えのゲームとして必要です。
初めは、Minecraftなど、その子どもさんの好きな電子ゲームで、横に並んで同じゲームを対戦するのでも良いでしょう。
「パパの時代、ママの時代のゲームもやろう」と誘って、相手の人と目を見て行なう、アナログゲームも誘ってみてください。
親しい人と、目を見て行なうアナログゲームは、行動にブレーキをかけたり相手の気持ちを推し測ったりする、脳の前頭前野を育てます。
Wii など、身体を使うテレビゲームもいいですね。
歌が好きならカラオケでもいいです。
必ず、家族と一緒に、2人以上で楽しんでください。
他者との共感の喜びが、快や満足となって、電子ゲームや YouTube 依存から、少しずつ離れられます。
体格が良くなった思春期のかたには大型のぬいぐるみやフワフワ毛布2枚を丸める
年齢が大きくなった自閉症スペクトラムの子どもさんでも、髪の毛を触わったり、身体接触を求めたりする場合には、抱きしめられるフワフワの大きなぬいぐるみを持たせてみてください。
中学生が、女の子を抱きしめたら変だけれども、ぬいぐるみであれば、時々いいよ、という代替え行動です。
家庭でも、お母さんと別に寝るような時期が来たら、代わりにこの大きなぬいぐるみを抱っこして寝られる、という風にしたら良いと思います。
大人になって、家庭でリラックスするときは、以下の画像のような、安心安全の基地があっても、恥じることではないと思います。
ストレスを解消し、また翌日、外の世界へ出て行く元気が作れたら、最高ですね。
子どもが求めている愛着や、子どもが求めている感覚運動を、スベスベのぬいぐるみや、フワフワの毛布で満たしてみてください。
ニトリの毛布はフワフワで、値段も安いから、我が家でも使っています。
もちろん、ぬいぐるみや毛布でなくて、バスタオルやタオルケットでも、とてもフワフワなものがあります。
その子どもさんがこだわる、スベスベやフワフワを大事にしてみてください。
快感を言語化し共有するとこだわりや強迫性障害を緩められる
大人が、フワフワ・スベスベの快感の、共感者になることがポイントです。
快感の孤独に一人閉じさせておくよりは、「気持ちいいね」の共感者がいるといいですね。
共感者になっておくと、「車の中に置いておこう」「玄関に置いておこう」などの、中止や延期の依頼をすることが可能になります。
共感者なしに、取り上げられ、やめさせられると、快感を求めて、別のこだわりが始まったり、別の強迫行動が始まったりします。
子どもさんが安心の中でこだわりを緩めるには、取り上げたりやめさせたりするのでなく、別の代替え行動を2つ3つと増やしていく、と考えてみてください。
快適なものや、代替えのものが増えれば、たった1つに強くこだわる事が緩みます。
ぜひ、お試しください。
快適な環境の代表 スヌーズレン
自閉症のかたたちの感覚が満たされる環境に、「スヌーズレン」があります。
スヌーズレンとは「探索する・くつろぐ」という意味で、1970年代のオランダの施設で始まった環境による療育です。
光・音・香り・振動・温度・触覚素材を組み合わせた、トータルリラクゼーションの部屋が、重度の自閉症・知的障害の方の心を穏やかにさせる療育です。
現在では、認知症のかたがたにも使われています。
千葉県柏市にある東葛医療福祉センター光陽園や、東京八王子市の島田療育センターには、常設のスヌーズレンの部屋があります。
通常学級にいる、自閉症スペクトラムの子どもさんが、自宅の押し入れや、学校のお掃除ロッカーやランドセルロッカー、および先生の教卓や自分の机の下に潜るのも、スヌーズレンのような、落ち着ける・くつろげる環境を求めてのことです。
そうだと知っていれば、声のかけ方が違ってきます。
「そこは落ち着くんだね。5分して落ち着いたら机に来てね。」
「ロッカーの代わりに、一番後ろの席で、パーカーのフードをかぶっていてもいいよ。落ち着いたらフードを外そうね。」
などと理解を示したり、代替え行動を提案する声かけを、できるようになります。
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