遊びが難しい理由
特別支援学校には「遊び学習」と言われる学習がある。
「遊び」は「学習」になるくらい、複雑な状況理解と対応を必要とする。
私は、文字や数の学習の方が、やさしいと考えている。
狭い机上に平面的に提示できるから、立体的で広い生活空間より、見やすくわかりやすい。
食事・排泄・身辺処理・遊び・ソーシャルスキルなどは、部分的な下位の行動が、たくさん集合して成立する。
それらを脳内イメージとして、保持する必要がある。
360度多方向から、たくさんの情報が飛び交う、食事・排泄・身辺処理・遊び・ソーシャルスキルなどの場面は、広い空間に弱い一部の子どもにとって、脳内イメージが難しい場面となる。
それらを整えようと思ったら、まずは写真や絵で平面的に、机上で、部分的な下位の行動を学習するところから、スタートすると良い。
次に、ロールプレイや現場実践を、テレビのような画面で、子どもと一緒にモニターして、振り返ると良い。
モニターは、1回目は「頑張っているね」と認め、2回目は「次はここをこうしよう」と課題を1つにしぼる。
それぞれの遊びの複雑なルールを、楽々こなせてしまう子どもは、それらの遊びを楽しめる。
それぞれの遊びのルールを楽に習得できていない子どもは、遊びに参加したがらなかったり、遊び中に泣いたり、 相手の立場になれずにトラブルになったりする。
広い空間の認知を必要とする、他者心理理解を必要とする、ルールを守る、という点で、遊びは複雑な状況理解と対応を必要とする。
状況理解が苦手なら、脳外に全体イメージを呈示し、スモールステップでスキルを学習し、体験し、モニターして、脳内イメージ化する。
「遊び」の力も、文字や数と同様に、学習で形成していく。
遊びを脳外イメージの写真や絵で再現提示する
わたなべふみさん というイラストレーターさんがいる。
わたなべさんのサイン©fumiraを掲載していれば、ダウンロードして使って良い画像が、ネット上にたくさん掲載されている。
イラストレーターわたなべふみ|子ども、保育、児童書、学校教材、教科書、医療、福祉などのお仕事制作とイラスト素材を制作しています
私も、自分が写真を撮れない時、絵が描けない時、わたなべさんのプロ画像を使わせて頂いている。
わたなべさんの画像を借りて、以下に4種類の遊びにおける、複雑なルールを書き出してみたいと思う。
電車ごっこに必要な力
電車ごっこに必要な力➡事実を認める言葉かけ➡形成の言葉かけ「Let’s~」
1.一緒にやろうと友達を誘える➡誘えたね➡やろうと誘おう
2.入れてくださいと仲間になれる➡頼めたね➡入れてと頼もう
3.先頭になったり2番になったり、友達と交代ができる➡交代できたね➡~しよう
4.友達を引っ張りすぎていないか、後ろを振り返れる➡友達のこと考えたね➡~よう
5.友達の速さに、合わせることができる➡速さを合わせたね➡~よう
6.順番、ということが分かる➡順番にできたね➡順番に交代しよう
7.気持ちよく、譲れる➡ゆずれたね➡譲ろう
8.ありがとう、が言える➡ありがとうが言えたね➡ありがとうと言おう
9.先生の合図で終わりにできる➡終わりにできたね➡終わりにしよう
組み相撲に必要な力
組み相撲に必要な力➡事実を認める言葉かけ➡形成の言葉かけ「Let’s~」
1.怖かったら、応援に回る➡応援できたね➡ 応援しよう
2.手押し相撲・腕相撲・指相撲でも良い➡色々なお相撲があるね➡色々な相撲をしてみよう
3.小さい子には、負けてやれる➡かっこいいお兄さんだね➡カッコ良くするにはどうする?
4.相手が怪我をしない、80~90の力の調整ができる➡力加減ができたね➡力を50にしよう
5.遊びの中の相撲ということが分かる➡仲良く遊べたね➡遊びだから楽しくやろう
走る競走に必要な力
走る競走に必要な力➡事実を認める言葉かけ➡形成の言葉かけ「Let’s~」
1.参加する➡参加したね➡~しよう
2.真っ直ぐ走れる➡まっすぐ走れるね➡~走ろう
3.最後まで走る➡最後まで走ったね➡~ろう
4.自分の全力が出せる➡全力が出せたね➡~出そう
5.順位にこだわらない➡頑張ったね➡~頑張ろう
6.友達の勝利を喜べる➡一緒に頑張ったね➡~ろう
7.応援できる➡応援できたね➡~しよう
8.転んでも起き上がる➡立ち上がってカッコ良かったよ➡~しよう
かるた取りに必要な力
かるた取りに必要な力➡事実を認める言葉かけ➡形成の言葉かけ「Let’s~」
1.ゲームということが分かる➡ルールが分かったね➡ルールを守ろう
2.読み手の声を、よく聞く➡読み札をよく聞いていたね➡~きこう
3.読み手の復唱ができる➡心の中でつぶやけるね➡~つぶやこう
4.かるたの絵や文字を、よく見て探せる➡一生懸命探していたね➡~探そう
5.先生の判定に、従う➡残念でも我慢できたね➡~しよう
6.同時の時は、じゃんけんをする➡じゃんけんに従えたね➡~従おう
7.お手つきをしたら、1回休む➡お手つきは誰にもあるね。待てたね➡~待とう
8.お手つきをしたら、1枚返す➡ミス認めて返せたね ➡返そう
9.得意な札を、3枚決めておく➡狙っていたね ➡狙おう
10.取る枚数が少なくても、泣かない➡悔しくても我慢できたね ➡~しよう
11.仲間と一緒に、できたことを喜ぶ➡喜べたね➡~ぼう
12.得意な人に、おめでとうが言える➡言えたね ➡言おう
13.この次は、また頑張ろうと思う ➡この次頑張ると思えたね ➡このつぎ頑張ろう
14.自分の苦手を受け入れられる➡この前より1枚増えたね➡諦めずチャレンジしよう
鬼ごっこに必要な力
鬼ごっこに必要な力➡事実を認める言葉かけ➡形成の言葉かけ「Let’s~」を自分で考えてみよう
1.捕まえる鬼と、捕まえられるみんなの、2つの役割がわかる
2.最後は、全員捕まって終わり、という予測ができる
3.捕まった後は、どうするかが分かる
4.捕まっても泣かない
5.捕まえる時の力の調整ができる
6.わざとじゃなくても、痛い捕まえ方で友達を困らせたら、その場で「ごめんね」と謝れる
7.わざとじゃないから、ゲームだから、「いいよ」と言える
8.ゲームが終わったら、もう一度、「さっきはごめんね」と謝れる
9.「うんいいよ、一緒に行こう」、と次の行動に移れる
どうだろうか。
だるまさんが転んだ、とまり鬼、警泥なども、同様に複雑である。
遊びは複雑だ、と思えたら、ある子どもたちが、兄弟や友達を避けて、一人で遊んでいる理由がわかると思う。
単純にいつも1番、単純にいつも勝つこと、にこだわる理由が分かると思う。
そうだと、行動種が少なくて済んで、楽なのだ。
まずは机上で、写真や絵で、遊びの空間全体を見せて、言葉や文字で状況に名札付けをし、実際場面では部分参加のところから、同行して認めてやりたい。
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