排泄行動にかかわる記憶力・言語力

83歳で認知症を発症して、89歳要介護1までは、ヤエさんの排泄は自立していた。
89歳で、少量の便失禁が起きた。
便失禁の始末には、「あ、汚れちゃいました。新しいパンツに履き替えたいです。」とデイサービスの介護士さんに言えるような、記憶力や社会的判断力、コミュニケーション力が必要だった。
要介護1のヤエさんにはもうそれがなかった。

その場で介護士さんに言えない、清潔の保持が身体に大事と分からない、汚れたパンツを隠して忘れる、ということが起きて当然の要介護1だった。
尿失禁はまだなかった。
しかしトイレに行ったことを忘れるらしく、90歳頃は5分おきくらいに頻繁にトイレに立つようになった。
ドリルやプリントが一人で解けなくなったり、テレビがつまらなくなったりして、一番気がかりなトイレの失敗をしないようにと、ヤエさんはトイレに通う。

水を流す考えがなくなった
運動だと思えばいいと私は考えたが、そのころの水道代は普段の2倍だった。
93歳、要介護3、トイレの場所が分からなくなった。
ズボンを下ろさないで便座に座ることもあった。
トイレの水を流せなくなった。

子どものころのトイレは水を流さなくてよかったのだ。
トイレの水洗ボタンが目の前になく、側方にあって見えないから押せなかった。
水洗ボタンも水道蛇口も前方に見えていることが大事だと私も知った。
私の声掛けや指差しで一緒に水を流したとしても、ヤエさんは手を洗わなくなった。

ズボンを下ろす、座る、排尿、拭く、パンツをあげる、水洗ボタンを押す、手を洗う、それらがつながらなくなった。
排尿で終了となってしまうのだ。
排泄行動とは、排尿のための手前の行動、排尿、排尿後にする清潔の行動だ。
なんと難しい行動をこれまでヤエさんはできていたことか。
自閉症知的障害の子どもさんたちが、排泄行動や着替え行動でパニックを起こす理由がこれだ。

〇〇〇が3個ある、そういう算数よりも、生活行動の構造化はずっと難しい。
相当な言語力がないとできない。
93歳、要介護3だから一緒にやってあげればいいのだ。
ヤエさんのMMSE検査は、93歳要介護3で、30点満点中11点になっていた。
パンツを脱いでしまう

93歳、要介護3、昼間、便失禁防止パッドを使うようになった。
「これを付けて寝ると安心だよ」と言って、夜間も尿取りパッドを付けて寝てもらうようにした。
昼間、パッドをつけていることに慣れたので、ヤエさんは拒否しなかった。
夜間、尿意で起きなくなって、、朝になるとパッドに排尿してあった。
94歳、要介護3、お正月、ヤエさんは夜間に、パッド付きパンツや股引を脱いでしまうようになった。

ヤエさんに自閉症の方のような感覚過敏が増していた。
夜間に濡れたパッドが不快なのだ。
濡れて脱ぐのは仕方ないとして、夜間のベッド内が暑い時、布団を剥がず、下半身を脱いでいた。
我々のように布団を剥ぐという社会適応がもうない。
次の排尿がなければ、脱いでもいいのだが、ヤエさんは夜間に2回は排尿する。

夜間排泄が自立していたころは、自分でトイレに2回起きて排尿していた。
何が原因で暑いのか、どうすれば快適か、一つ一つ条件を変更し原因を探ってみた。
冬の我が家は夜間は12度くらいの室温だった。
羽毛布団を0.6㎏から0.3㎏、さらに0.2㎏へと薄くしてみた。

それでもまだ就寝後、22時~1時の間に寝汗をかいていて着替えさせねばならなかった。
次にベッドパットを冬用から春用へ、さらに夏用の涼しいものにした。
電気毛布をやめ素足で寝かせた。
次に、防水シーツが暑いのかと思って取ってみた。

防水シートは腰部だけ
しかし防水シーツを取れば、マットレスまで失禁が浸みた。
さらに肌掛け羽毛布団0.2㎏もやめて、真夏のヒンヤリケットにしてみた。
これが当たった。
ヤエさんは入浴後疲れてすぐに就寝するから身体のほてりが取れないうちに眠る。

防水シートは腰部だけ
ヒンヤリケットにしたらほてりがなくなったらしい。
また、4月下旬から暖かくなり、パッドと失禁用パンツが夜間に蒸れるのでパンツを脱いだ可能性もあった。
5月は綿パンツと綿パンツの間に失禁パッドを挟んでみた。
5月1・2・3・4・5日と涼しく眠れるらしくパンツを脱がないで寝ていてくれた。

私も続けて3時間眠れると本当に助かる。
しかし急な暑さが来た5月中旬の夜中には7回目のパンツ脱ぎ失禁があった。
尿取りパッドもパンツも汚れていない。
パンツと股引が脱いであり、2枚のベッドパッドと夜尿シーツ、下着シャツとパジャマ上着に排尿してあった。
ヒンヤリケット2枚で涼しく眠る。

ヤエさんが夜中に脱いでしまう失禁シーツの洗濯は大量だったが、11月まで何とかしのいだ。
脱いでしまう件と、記憶の問診が1つも答えられず、ヤエさんは要介護4に認定された。
脱いでしまうことの解決は次回に書きたい。

この時期にはわからず、今になって分かるのだが、入浴で深部体温が上がること・足の表在静脈のつまり改善のために夕食後飲んだユベラ(ビタミンE)で身体が温まること、その2つも体内を熱くし、ヤエさんが脱ぐことに関係していた。
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