教育仮設29-1 小学校の英語の授業は楽しい
アメリカ・イギリスなどからやって来たネイティブの先生が、英語の授業を教えてくれる制度が始まって久しい。
日本の子どもたちが、受験英語だけでなく、グローバルな人材として英語を話せる人になるようにと、文科省が始めた英語の早期教育だ。
小中学校で、その英語の授業を参観することが、年に4~5回ある。
いずれも、子どもたちは楽しそうに学習している。
子ども個人にインタビューしても、ネイティブの先生がやってくる、小学校の英語の授業は好きだと、みな言う。
発達障害と言われる子どもにインタビューしても、小学校の英語の授業は、楽しいと言う。
ネイティブの先生は、笑顔で、ジェスチャーが大きく 、絵カードやテレビモニターを多用し、明るいイントネーションとリズムで、生き生きと授業してくれる。
NHK 教育テレビの「英語であそぼ」のようであり、大人から見ても楽しい授業だ。
この英語教育に悪いことはひとつもない、と私も思っている。
教育仮設29-2 集団場面での聴覚記憶には配慮が必要
先日、小学3年生の英語の授業を参観した。
1人が「What do you want?」と聞いて、 相手が「色と形」を英語で答え、さらに「How many?」と聞かれて、ほしいカードの数も答える。
2回の応答で、該当する色形カードをもらうという、会話の練習だった。
色の名前はレッド・ブルー・グリーン・イエロー・パープル・ブラウンなどで、日本の子どもたちにも親しみがあり、よく記憶されていた。
大小比較と違って、色属性はそのものに固有の一対一対応なので記憶しやすい。
形の名前は、サークル・トライアングル・スクエア・スターなどで、色の名称よりは親しみが少なくなる。
それでも形属性も、そのものに固有の一対一対応なので、カードを手にしながら、子どもたちは何とか記憶しようとしていた。
該当するカードをもらうには、色と形を連鎖語で答える必要がある。
例えば、レッド・サークル🔴、ブルー・サークル🔵、グリーン・サークル、イエロー・スタ―🌟、パープル・スター、という2語文の連鎖語である。
子どもたちが実物を手にできる色形カードを、ネイティブの先生が作って来てくれていた。
子どもたちは、色形カードをもらおうと、5人ずつのグループ活動を生き生きと行なった。
私があちこちのグループを見回ると、色カードの英語名称は、4/5くらいの子どもが会話で言えていた。
色形の連鎖語になると、2/5ぐらいの子どもが言えていた。
しかし、質問の「What do you want?」を正確に言える子どもはほとんどいなかった。
発音が 「What do you ファット?」 となっている子どもが3/5くらいいた。
wantウォント=欲しいが、テレビモニターによる導入学習だけでは、子どもたちに登録されなかった。
正確な発音登録はなされないが、子どもたちはとても楽しそうにやり取りしていた。
私は一人の男の子のそばで、10分間ほど毎回「What do you wantウォント?(どれほしい)」「How many?(いくつ)」とお手本を英語でささやいた。
「What do you ファット?」と言っていたその子のそばで、つきっきりでお手本を言ってみせると、「What do you want?」「How many?」を耳から真似して、「ウォント」に近い音を出すようになった。
英語圏の子どもが0歳から英語を習得する時は、ほとんどは家庭で、家族と一対一での会話から、言葉と事象との対応を学ぶ。
家庭での会話が1対1なのは、日本語の0歳からの習得でも同じだ。
ところが、学校の授業はネイティブの先生と、英語担当の日本の先生の、2対多数で行なわれる。
聞き取りがよく、理解が早い子どもは、2対多数の学習でも、上記の例の英語学習「What do you wantウォント?=何が欲しいですか?」「How many?=いくつ欲しいですか?」が、テレビモニターの導入学習と、色形カードによって、すぐにわかる。
ところが、集団場面では、音声系の聞き取りが弱く、事象に対応する意味を取りにくく、記憶が弱い子どもは、英語の楽しさはわかって参加するが、内容の習得は起きていない。
中学英語のネイティブの先生の会話スピードはもっと速く、小学英語でのこの習得差は、中学では、ますます大きくなる。
そこに疑問を持った。
音声指示の聞き取りと記憶に弱い、発達障害や知的障害の子どもにとっては、ネイティブの先生の発音が速くて、一層聞き取れない。
教育仮設29-3 書式文字が記憶を助ける
私は、人の名前を記憶する時に、音声系やひらがなだけでは覚えられない。
名刺や名簿をもらって、漢字を見ることで、名前を記憶する。
視覚的な書式文字記憶が、私の記憶を助けるためだ。
小学校1年生で、漢字には意味があることを習い、意味を取ると記憶になる。
象形文字の、山・川・木・林・森・月・目・口などが、その代表だ。
さんずいも、3つの点を、3つの雫だと、しずくの絵を思い浮かべると、記憶しやすい。
視覚的な記憶と、事象の意味を取るということが、私の漢字記憶となっている。
「山田陽子さん」と名刺をもらって、太陽のように明るい人になるようにとご両親がつけたお名前かな?と思いながら、その方を記憶する。
人物事象と、漢字の氏名が、セットで記憶登録される。
小学校の英語の授業では、音声系と事象は登場するが、書式文字系はあまり要求されない。
英語圏の子どもの0歳から6歳が、小学校の1年生から6年生に該当するのかもしれない。
だから小学校では、音声系と事象系の対応だけ学習するのかもしれない。
書式文字系は、中学校へ行ってから、英単語の読み書きとして、習うようになっているらしい。
教育仮設29-4 学習英語は「音節分けカタカナ振り」が欠かせない
英語圏の子どもの英語は、生活英語だ。
生まれてすぐから、普段の家族の会話に使う。
日本の子どもの英語は、6歳からの学習英語だ。
私が人の名前を漢字から記憶するように、音声系の聞き取りと記憶が弱い子どもにとって、記憶の中継ぎとなる書式文字系が、小学校1年生の英語から必要なのではないか。
「What do you wantウォント?=何が欲しいですか?」「How many?=いくつ欲しいですか?」が、記憶されない小学校3年生を見て、そう思った。
学習英語だから、45分授業の中の5分くらいをかけて、What do you want? How many? のなぞり書き練習くらいは必要なのではないかと考えた。
中1英語では、音声系に強い子どもと、音声系に弱い子どもの、力の差が小学校よりも一層大きくなる。
漢字記憶ができなかった発達障害の子どもは、中学へ行って英単語記憶ができない。
英語の習得につまずいて、不登校になる子どももいる。
習得差をなくすためには、小学校2年生から、特別な支援を必要とする子どもたちには、英単語の書式文字系は、音節分けのカタカナ振りが必要だと考えている。
Su|n|da|y Mo|n|da|y
サ ン デ イ マ ン デ イ
wha|t wa|n|t
ファッ ト ウォ ン ト
小学校で、上記の「アルファベットとカタカナのなぞり書き」を5分ずつ5年間やったら、特別な支援を必要とする子どもたちへの、英単語習得の合理的配慮となる。
音節分けとカタカナ振りが難しい、中1英語の英単語習得を助ける。
英語がご専門の先生方の、ご意見はどうだろうか?
コメント投稿で、ぜひ教えて欲しい。
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