37 お母さん猫の最後

2月が終わろうとしていた。
お母さんを抱いてベッドに運んだが、羽毛布団の上で目を開けたまま寝ない。
まぶたを撫でて閉じてやったら、2時間ぐらい寝てくれた。
3月1日、その朝も私の後を追って珍しく自力で階段を下りてきた。
いつものように、水を飲もうとするしぐさをした。
苦しさを訴えず、鳴きもせず、食べようとし、飲もうとし、こんなになっても生きようとしていた。
しかし、あごが濡れるだけで、自力では水を飲めなかった。
スポイトで水を口へ入れてやった。

夜になって、親の入浴世話終えて、お母さんが私を待つ
ベッドへ向かった。
一人でベッドに上がろうとして、その力なく、昇る途中でこと切れたお母さんを見つけた。
「ごめんね、お母さん、引っ越して来てからの5年間、相手をしなかったね」
何一つ文句を言わず、最後まで猫生を全うした、12歳のお母さんだった。
次の日、お母さんと出会った、郊外の家にお母さんを連れて行った。
母似が眠っている、花盛りの椿の根元に埋めた。
「ありがとう、お母さん。お母さんに逢えて、お母さんの猫生を知って、幸せだったよ。」

野良だった「お母さん猫」end of story
continue to 「保護猫クーちゃん」
コメント