音声の言葉のない多動な自閉症児の療育4発達年齢と言語行動

音声の言葉のない多動な自閉症のA君が、4回目・5回目の療育に来てくれました。

11月は就学児健診や児童相談所の療育手帳の再判定があって、忙しいA君とお母さんでした。

2023/10/31のA君の療育3回目のブログ記事にも書きましたが、A君の目と手の使い方は初期的です。

このような手の使い方で、お家での生活や保育園での生活を、A君がこなしていることに感心します。

言葉の発達年齢が行動の発達年齢になる

保育園は暦年齢集団で、A君も誕生日や体格から、5~6歳に扱われることが多いです。

ところが、遠城寺式発達検査で観てみると、A君は0歳11ヶ月くらいの発語と、1歳2ヶ月くらいの言語理解です。

おそらく、児童相談所で行なわれる心理検査でも、検査のために着席することや、第1問目の1歳1ヶ月の課題をクリアすることが難しいです。

発達検査の数字は、A君の困難と苦労を理解するための数字=発達年齢です。

私は検査の数字から、発達年齢も手がかりにして、A君を理解しています。

特に集団場面では、A君の発達年齢を頭に入れておくことが、A君にわからないことをさせない、自傷を起こさせないことだと考えています。

保育園でも、A君の情報の集め方と気持ちの伝え方は1歳前後であると理解して、実物や身振りで伝えていくことが大事です。

A君は、特別支援学校の小学部に就学の予定です。

専門の先生方にも、実物指示、A君の目と手の協応、身振りのコミュニケーションを育ててもらえたらと、期待しています。

音声で伝えられない代わりのA君の自傷

人は言葉で行動しています。

4回目の療育の時、30分くらい活動したところで、A君が強く、自分の手で自分の頬を叩きました。

叩くことが止んで、落ち着いてから、「A君、帰ろう」と車の鍵を見せました。

A君は帰れることがすぐに分かり、ドアの方に行動します。

分からないとか、帰りたいとかの気持ちを、自傷で表わすA君の痛みを思いました。

A君が帰りたいと伝えるためには、車のキーを透明ケースに入れて、机の上に置いておき、帰りたい気持ちを実物で伝えてもらうようにすることが大事かなと思いました。

集団場面の時間を短くしたら自傷や他害が減った

発達年齢1歳前後のA君にとって、保育園の朝の会、歌、インタビュー、お当番、おやつ、制作、給食、歯磨き、トイレでの排泄、絵本の読み聞かせ、お昼寝、自由遊び、などの活動を、先生の音声指示でこなして、集団に合わせることには無理があります。

お母さんの決断で、11月からA君の保育時間を午前中だけにしました。

お母さんとの1対1の時間が増えたからか、5回目の療育に来た時、40分間A君に全く自傷がなかったのです。

スマホのトーマス動画を「見たい」という緩衝かんしょう行動もなく、「帰りたい」とドアを開けようとすることもありませんでした。

「A君帰ろう」と車の鍵を見せるまで、トランポリン、壁叩き、棒差し、玉入れ、パンの宝探しをやってくれました。

「お母さんがA君と過ごす時間が長くなって、お母さんが大変ではないか?」と尋ねると、お母さんは「Aは外で遊ぶことが好きなので、公園のブランコや滑り台などの遊具で遊んでいます」「夜はお父さんが身体を使った遊びをしてくれるので、夕飯を作れます」という返答でした。

A君は一人っ子で、ご両親にとても可愛がられています。

透明カップによる A君の好きなパンの宝探し

おやつは、お皿にのせて出す場合があります。

A君の大好きなパンを、お皿に乗せて出せば、A君はパンを取って食べます。

ここに、目と手の協応の学習を含めていきます。

➀2cmの高さにカットした透明カップ6個を、養生テープで固定します。

➁宝探しには、見ること、探すこと、位置の記憶が必要になります。

➂初めは6ヶ所全部にパンを置いて、「パンをどうぞ」と見せて伝えます。

④次は2個にしたり1個にしたりして、「探してください」と見せて伝えます。

⑤さらにパンをのせた箇所に、透明カップの蓋をします。

⑥パンを取ろうとする時、邪魔な透明カップを、補助の手で取り去り、利き手でパンを取れたら、教材が狙っている行動が起きることになります。

⑦その先では、透明カップを不透明カップにして当たりを予想したり、多色カップにして当たりの位置を色で記憶したり、填め板をはめてから蓋を開ける、というような回り道宝探しをします。

A君はパンを取る利き手で、透明カップを外し、同じ手でパンを取ります。

⑥の両手の協応動作が起きにくいです。

目的を遂行する利き手と、それを補助する支え手の役割が、まだ起きていません。

利き手でスプーンを持って支え手で茶碗を持つ、利き手でハサミを持って支え手で紙を持つ、利き手で書くために支え手で紙を押さえる、支え手で穴を持って利き手でボタンを填める、などが難しいことが、上記の直接法から想像できます。

4回目の療育で、お母さんにこれをやって見せました。

お母さんは教材を持ち帰り、早速お家で実践し、2回に1回は両手の協応が起きるようになりました。

A君のお母さんの素晴らしいところは、パン探しの直接法の、こんな小さな両手の協応動作でも、A君ができると拍手して喜ぶところです。

1歳から6歳まで、音声の言葉のないA君と、このような手の使い方で、よく過ごしてきたものだと感心します。

A君も昼間は家庭から離れ、集団場面の保育園で、音声指示が分からないながらも、5年間一生懸命適応してきたのだなあと感動します。

自傷や他害は、その苦しい中で、起きてしまったことです。

5回目の療育で、宝探しの意味と方法を、お母さんに詳しく伝え、やって見せることができました。

A君が嫌がらない程度に、お家でも宝探しを楽しんで欲しいと思います。

着席行動を促すかもしれないバランスボール

A君とお母さんに、カインズで購入したバランスボールと、車のハンドルカバーと、自転車の空気入れをプレゼントしました。

バランスボールは、直径45cm、55cm、65cmと色々なサイズがあります。

カインズのバランスボールの評価レビューには、「すぐ空気が抜けてしまう」と星☆は2つだったのですが、A君には空気がパンパンなバランスボールよりも、空気がちょっと抜けるバランスボールの方が落ち着いて座れるのではないかと思いました。

車のハンドルカバーを床に置いて、上にバランスボールを置くと、子どもの足が床に届かない時のバランスボールでも転がりません。

多動なA君が、食事をしたり、スマホでトーマスを見たりする時に、バランスボールに乗ることで机の下のバランス感覚を楽しみ、走り回らなくてもいいようになったら、と考えてプレゼントしました。

Amazonのバランスボール45cmポンプ付き

お家でのバランスボールの結果を聞いて、A君に合うようであれば、病院の療育でも使いたいです。

A君が机にいてくれるようになると、教材への取り組み頻度も増えると期待しています。

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