心理学者梅津八三は、言葉の構造を以下の5段階にまとめました。
①相手に読み取ってもらう行動=自成的な言葉
②イメージはあるが相手に読み取ってもらう脳内のことば=表内系の言葉
③実物・絵・身振りなどイメージを脳外に見せる言葉=表出系の言葉
④マーク・漢字など実物を意味する形の言葉=形態質系の言葉
⑤文字や音声など1つ1つを合成する言葉=分子合成系の言葉
上記にならって、言葉の構造を3段階に捉え直してみました。
言葉の発達の構造化
音声の言葉のやり取りが、最も高級で難しく、
音声に身振りをつけてもらえると分かりやすく、
実物が、いちばん分かりやすいことばです。

例えば、家族でお出かけする時、子どもの誘いかたで、子どもにとっての難易は、以下です。
1.音声「車で出かけましょう」(遊び行動が切り替わりにくい)難
2.ハンドルを動かす身振り(見てわかると行動を切り替えやすい)
3.車のキーを手渡す(手に持たせると子どもは行動が起きやすい)易
音声のない子どもや乳幼児を誘う時は、実物を見せて誘いましょう。
感覚の発達順序
感覚の発達順序を、触覚➡視覚➡聴覚と考えています。

車のキーを触って分かる(触覚)
➡ハンドルの身振りを目で見て分かる(視覚)
➡「クルマ」と耳で聞いて脳内にイメージする(聴覚)
子どもとの係わりの中で、音声指示よりも有効な、視覚指示、触角指示を、考えておきましょう。
子どもにとって分かりやすい言葉
家庭でも学校でも、係わる大人が、言葉の難易度を以下のように理解して、指示の言葉を使うと、子どもは理解しやすくなります。

ある塾の先生が、算数を教えていて、「直角は何度?」と子どもに質問したら、すぐに「90度」と音声の回答があった。
プリントで、「(ア)の角度を見てごらん」と促すと、「直角のマークがある」と子どもが答えた。
「(ア)の角度は何度かな?」と尋ねると、「…」無回答だった。
直角=∟=90度の意味を理解していない、と先生がこぼす。
直角→90度と、最も高級な音声で暗記できているが、直角の意味を理解していないからプリント問題を解けない、というお話です。
音声と文字だけのやりとりですね。
掛け算九九の暗記と同じように、音声だけ暗記して、意味が分かっていないことが子どもには時々あります。
ではどうすると意味を取れるかと言うと、直角を身振り運動で記憶させておくことです。
身振りは、実物の型取りだから、意味を記憶しやすいです。
親指と人差し指で作る L でもいい、ローソンでハピローの CM の L でもよい、「直角=90度」と言いながら身振りをします。
プリントの(ア)の角度に指の L を合わせると、∟=直角=90度と思い出せます。
身振り運動が、意味記憶、結合記憶を助けます。
学習教材のわかりやすさ
教える時に提供する学習教材にも、分かりやすさの順序があります。
1.最も分かりやすい教材は、手で触れる実物。
特別支援学校では、○△▢などの立体パズルで、形を学習します。
中学生にも、カラーマジックで、カードに書いた数式や英単語を、ハサミで切って分解し、合成学習すると、手で動かす運動でわかりやすくなります。
脳内で行なう移動作業、分解と合成作業を、脳外で行なうと分かりやすくなります。
2.次が目で見てわかる絵、図、身振り。
子どもたちが、動画 YouTube や、ゲームアニメーションが好きなのは、目で見てわかるからです。
学校もタブレット学習が進んでいますが、是非、身振りや、分解と合成カード方式を学習に取り入れてください。
3.最後が脳内イメージに頼る、文字や音声。
小中学校の学習の多くは、教科書の文字と、先生の音声説明によっています。
文字や音声に、興味関心を示せない子どもには、目で見てわかる絵・図、身振り、手で動かせるカード、手で触ってわかる立体教材が必要ですね。
授業の導入に、実物、身振り、分解と合成カードを使ってみてください。

例えば、前出の直角について、ティッシュの箱の実物を用意して、「角が直角です」と触らせると、直角」の意味を分かりやすい。
教科書には、ティッシュの箱の画像があったり、∟ この部分を直角と呼びます、と図が描かれていたりします。
画像や図 ∟ に、指を当てて身振りをしておくと、運動記憶の再現で、意味を思い出しやすくなります。
子どもは、「実物の箱の角」=図 ∟ =文字「直角」=音声「チョッカク」を一致させて、「直角」の意味を記憶します。
分度器を使って90度を数え、直角=90度と覚えます。
身振りをはさむと、直角=∟=90度と、意味を記憶しやすくなります。
大人は身振りをほとんど使いませんが、小学校の授業や家庭、塾では、先生も子どもも身振り記憶を多用してほしいです。
「円の勉強をします」という時は手で円の形、「直角三角形の勉強をします」という時は手で直角三角形の形、大人レベルではない、子どもレベルの身振りの言葉を授業に取り入れてください。
発達障害や知的障害があるとき、身振りの運動記憶はいっそう有効です。
発達障害や知的障害がある時のアプローチの仕方
言葉の発達を理解した上で、以下の係わり方を心がけてみてください。
学習でも、身辺自立でも、同じアプローチです。

できないこと・苦手なことよりも、現在よくできていること、得意なことに焦点を当てます。
その子が興味関心のあること、その子が最も得意とする確定域で学習に誘えば、椅子に座ったり、タブレット問題に取り組んだり、その勢いでプリントに取り組めたりします。
例えば、SL蒸気機関車が好きな中学生であれば、
数学は、C11,C57,C61,C62,D51の文字と数字を入れ替えて、同類項をまとめるスタート問題を作ります。
11C+D51+57C−61C+62C=
英語は、steam locomotive などから取り掛かります。
team tea teach teacher locomotion motion などに学習を広げられます。
国語は、SLネット情報を読んだり、SLネット情報の要約を書いたり、SLの体験作文を書いたりできます。
社会は、SLの歴史を調べられます。
理科は、SLの構造を調べられます。
美術は、SLの絵を描くか、写真をコラージュできます。
技術は、SLの模型を切り抜くか、設計し、ダンボールや厚紙で作れます。
確定域を取り掛かりの足場にして、学校の活動や教科書問題につなげていきます。
係わり方の工夫のまとめ
ロシアの心理学者レフ・ヴィゴツキーは、子どもが1人でできることと、子どもが1人ではできないことの、間の領域を、子どもの「発達の最近接領域」と呼びました。

係わり方が難しい子どもであればあるほど、発達の最近接領域は、その子の確定域にあります。
今、その子が興味関心を示していることは何かを見定めて、その確定域を足場にして、取り掛かりやすい課題から、大人が工夫していきましょう。
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