7歳から療育に来ている、重度知的障害の自閉症の一平君は、34歳。
イギリスのローナ・ウイングによれば、自閉症スペクトラム障害の人の特徴は、3つに分けられます。
受動型=自分からは関わらないが、受け身で指示に従うタイプ。
孤立型=人といることを避け、自分の世界に閉じこもるタイプ。
積極奇異型=積極的に関わろうとするが、自分独自のルールや一方的なコミュニケーションを取るタイプ。
一平君は孤立型で、自分のこだわりの実行には積極性があります。
私は、自閉症のかたのこだわりの強さが否定されると、どうして否定されるのかがわからずに、自傷や強度行動障害につながると考えています。
強度行動障害
皆さんも SNS で強度行動障害の症状をご覧になったことがあるかもしれません。
自閉症のかたのパニックや、自傷の一層激しい症状です。
パニックも自傷も、状況がわからない時に起きます。
自傷は、音声のない自閉症の、受動型の子どもに起きやすいです。
音声言語を持たない自閉症の子どもの自傷については、以下の投稿をご覧ください。
自閉度の強さと、わからない状況の継続の、二重の要因で、強度行動障害が起きると考えています。
教育学部を出てすぐ、特別支援学校の小学部に勤務した時、強度行動障害のある子どもに出会いました。
担任の先生と、ずっと手をつないでいないと、防護ヘルメットをかぶったまま、床に額を打ち付けて、血が流れます。
先生は、手を離せない状況、目を離せない状況です。
その子は、音声言語もありましたが、床への頭突きを「しません」という禁止の音声では、強度行動障害を緩めることは難しかったです。
こだわりの強さを保障する、こだわりの実現に同行する、心理学者梅津八三の言う「現勢の保障」が、こだわりの強い自閉症のかたの自傷や強度行動障害を防ぐに違いないと、考えるようになりました。
Instagram の 「最重度障がい児はやちゃん」
Instagram には、音声言語のない、「はやちゃん」という、ヘルメットをかぶり、つなぎを着ている、自閉症の少年の日常が投稿されています。

ヘルメットは自傷を防ぐため、つなぎは脱いでしまうことを防ぐための道具です。
はやちゃんの行動に、理解あるご家族と特別支援学校の先生の指導で、はやちゃんは中学部では、ヘルメットをかぶらずに、つなぎではない普通の服で、歯科通院もできるようになりました。
食事も、座ってテーブルでできるようになったそうです。
しかし、便いじりが再び起きて、困っている様子です。
家庭では片手に iPad を持って、ソファーと床を飛び回るはやちゃんですが、ご家族は禁止しません。
はやちゃんの「運動」と考えていて、壊れるソファーのひじかけは、ご家族が大工仕事で直します。
はやちゃんの行動にダメ出しをしない、ヘルメット・つなぎ・ iPad・ソファーなど、可能な限り物理的環境を整えて、はやちゃんの行動を支えている。
ソファーと床を飛び回りたいはやちゃんを止めないで、現勢の保障を続けたら、頭突きや脱衣は消失してきた。
令和の最近ではこうやって、実践する保護者が SNS に投稿するので、同じ症状の子どもを持つ保護者たちは、先輩の工夫の情報を得られます。
一平君のこだわり
一平君はこだわりが強く、自閉度も強く、自分の希望の実現には、ものすごい勢いがあります。
特別支援学級に通っていた小学生の頃は、家庭で外出すると、
街中で見かけるガスボンベの上の蓋にこだわる➡無断でいじるのでお母さんがもどす
タクシー会社の営業時刻のシールをはがす➡お母さんが謝罪
店舗や病院のポスターを無断ではがす➡お母さんが止める、「バツ」を教える
病院の療育でも、玄関で自販機の2000円のお見舞いの花を買う、産婦人科の自動販売機でベビーオムツを買う、自販機の毎日新聞を買う、自販機のジュースを買う、等にこだわる
毎回、病院の隣の薬局まで走り、必ず両手ハンドルを握る血圧測定を行ない、結果の紙を欲しがる
病院にある、全ての血圧計で血圧を測り、結果の紙を保存する
療育の最後には、階段で各階の公衆電話の電話帳をそろえ、屋上に行って非常口の看板を触る
特別支援学級に通っていた中学生の時には、お父さんに「そんな風に食べるな」と食べ方を注意され、丸2年、固形物を食べないで、飲み物だけで過ごす、健康に関わるこだわりがありました。

紙類や文房具を集めるこだわりがあり、お母さんによると、「使わないのに何度も何度も繰り返し必ず買いたがる。仕方なく時々処分する」
30歳ごろ、作業所の通勤路にある工場のコンテナの配送伝票が欲しくて取ってしまい、社長さんは配送ができなくなって困り、お母さんが謝罪したあとも、2回目があり、一平君はお母さんの車か作業所の車でないと、通勤不可になりました。
一平君のこだわりと、一平君の自由行動との間で、お母さんの悩みは深いです。
最近も、ゴミ出しにこだわりがあり、必ず自分で出したいので、収集日の前日の夜に、大雨でも傘もささずに、ゴミ袋を出してしまいます。
お母さんに夜のゴミ出しを止められるので、お母さんが入浴している時間帯に、出すのだそうです。
一平君のお母さんの実践
「一平のこだわりを止めても、また別のこだわりが出る」と、お母さんは理解しています。
一平君は、自分で決めた曜日で、週に3日、午前中だけ、作業所に行きます。
1月の療育で、なぜか、「2/18㈬やすみ」と、繰り返し繰り返し書きました。



お母さんに聞いても、思い当たる理由が分かりません。
他のほとんどの時間は、お母さんと外出し、ヤマダ電機やケーズデンキで店内を見て買い物をし、モスバーガー・おおぎやラーメン・銀だこ、で外食をします。



お母さんは一平君のこだわりに寄り添い、可能な限り、一平君のこだわりが実現するように生活しています。
我が家の親の介護は15年で終了しましたが、お母さんの一平君のこだわりへの付き合いに終了はありません。
台風でお店に出かけられなかったり、自分の予定が叶わなかったりすると、大声を出して地団駄を踏み、家庭では叫び声をあげる一平君です。
自閉度の強い、こだわりの強い一平君が、34歳の今も強度行動障害にならずに家庭で生活できているのは、お母さんが、一平君のこだわりを保障しているからです。
私がお母さんに時々、一平君のグループホーム入所を勧めても、お母さんはまだまだお家で一平君を見るつもりです。
お母さんの健康が、あと30年?続くように願っています。(その時一平君は65歳に)
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