特別支援教育の特徴は、以下の3点にまとめられる。
脳内イメージの脳外共有 、心理学的輔生工作、認知特性の理解、である。
教育仮設37-1 脳内イメージの脳外共有
お互いの脳内イメージを、何らかの方法で共通にするという、コミュニケーションの円滑化が特別支援教育だ。
図に描くと以下のようになる。
保護者に説明するときなど、この図を描きながら説明すると、保護者に伝わりやすい。
我々も、お互いの脳内イメージを共有しようと思えば、脳外に考えを出して見せることが、相手に最も分かりやすい。
学業や仕事で使う、プレゼンテーション用のマイクロソフトオフィス「パワーポイント」のスライドなどが、脳外提示の例だ。
住宅の設計図なども、脳外提示だと思う。
保育士さんや学校の先生に、
「音声は見えないので、イメージが持ちにくいです。
先生の脳の中にあるイメージを子どもの目の前に見せてください。」とお願いしている。
実物が出せなければ、写真を見せる、
写真が出せなければ、絵を描く、
絵を描く時間がなければ、身振りで見せる、
子どもがイメージを持ちやすいように、音声の言葉だけでなく身振りをつける、
それが、特別支援保育、特別支援教育だと、お願いしている。
こうやって、文章で読むよりも、上記のホワイトボード画像を見ると、皆さんもわかりやすいかと思う。
音声は1方向に生まれては消えていくので、聞いている者にとってはイメージが追いつかないことがある。
しかし上記の画像のように、消えない絵や文字で、話の流れを提示されると、記憶の負担が少なくなり、相手の言わんとすることが分かりやすくなる。
パソコンで、文章を作るときが、まさにそれだ。
脳の中にあるイメージを、文章にしていく。
文字になった文章を、目で見ながら、行きつ戻りつして、構成・修正していく。
これを全て、脳の中だけで行なう、本番・一度きり作文だったら、大変だ。
子ども達が、原稿用紙に書く作文、白紙に書く作文を嫌うことがわかる。
原稿用紙や白紙では、脳内イメージがわく手がかりが、少ない。
付箋紙作文、脳外作文にするとよい。
ワープロがなかった時代の、作詞家や小説家の手書きの原稿を見ると、たくさんの加筆修正がある。
私もパソコンと音声入力がなかったら、このブログ書きが渋滞している。
脳外イメージの提供が、特別支援教育のポイントである。
教育仮設37-2 心理学的輔生工作(梅津八三)
梅津八三は、相手の「生命活動を輔ける」教育を、心理学的輔生工作と呼んだ。
放課後学童の指導員さん、保育士さん、学校の先生は、子どもに係わる。
その奥側、向こう側には、保護者が見えていると思う。
子どもの保育・教育だけでなく、保護者支援も心がけていると思う。
私も、保護者あっての教育、保護者あっての自分の仕事だ、と思うようになった。
保護者が子どもの基地だから、保護者の願う子どもの社会適応にも、寄り添いたいと思うようになった。
なかには、子どもの社会適応を願うあまり、子どもの特性を見逃している保護者もいる。
保護者の願いを理解しながら、子どもの特性も理解してもらう。
子どもの特性を理解する方が、適応する工作も、実は早道だと、やってみせる。
情報が整理された、平面的な填め板の学習は得意だが、保育室や園庭のような広い空間になると、情報が多すぎて、ソーシャルスキルが難しい。
その子どもには、得意な平面的な填め板の学習で、ソーシャルスキルを刷り込む。
個別の、填め板の学習で、落ち着いている時に、ソーシャルスキルを話し合う。
給食で嫌いなものが出た時に、保育室を逃げ出すのではなく、食べる前に「減らしてください」の申告、食べた後に「残していいですか」の許諾のコミュニケーション、その2つを絵カードで提示する。
それを、予告カードにして、活動の前に確認し合う。
現場でも、事後でも、その都度、ソーシャルスキルカードで確認し合う。
音声の言葉の依頼だけでブレーキがかからないときも、ソーシャルスキルカードで思い出してもらう。
そういう教材の工夫や、使い方の工夫で、保護者の願うスキルも形成していきたい。
子どもだけでなく、保護者の生命活動も輔けたい。
教育仮設37-3 子どもの認知特性の理解
3つ目は、子ども理解が必要だ。
何が好きで、何が嫌いか。
何が得意で、何が苦手か。
実物・模型・写真・絵・身振り・音声など、どの言葉ならやり取りしやすいか。
1.取り掛かりが遅ければ、仲間モデルの最後の参加で良い。
取り掛かりが遅ければ、スタートと途中を手伝ってやり、ゴール近くからの参加で良い。
感覚運動は、立体的なオモチャや教材ほど、参加と探索行動が活発になる。
2.見て理解する時は、絵・写真・図など、平面的で狭い空間を見ることが分かりやすい。
「ここを見てください」という時に、四角の枠で見る位置を目立たせることなども有効である。
3.子ども達が、ゲーム機やテレビ、タブレットやパソコンを好む理由は、空間が平面的で限定されているから、見やすいのだ。
4.立体空間は複雑で、どこを見れば良いか、という視空間認知が分かりにくい。
横断歩道の路面を見ると、左右の車に気が付かない、子どももいる。
車が遠くにいるのか、近くにいるのか、遠近の距離感を掴めない、子どももいる。
広い体育館や校庭に行くと、先生の顔と声に注目するのが難しく、他を見ていて指示を聞いていない子どもいる。
体育委員にして、一番前に並ばせたい。
5.相手の言葉から自分も相手と同じイメージを持つことが苦手なので、イメージを目の前に見せてやると良い。
YouTube やテレビゲームが好きな理由は、イメージを脳外で見られるからだ。
6.似ている漢字を覚えにくい理由は、教科書に出てくる順番に、単独で学習するからだ。
似ている漢字は、同時に提示して、意味の違いを際立たせてやると、記憶を助ける。
海って水があるから「さんずい」だね、梅って木になるから「木へん」だね。
そしてその時に、さんずいの涙と、木へんの木が描かれると、記憶しやすい 。
漢字の意味を取ると記憶しやすいので、お母さんや先生が、似ている漢字を同時提示して、絵で意味を取りやすくしてやる。
英単語になっても同じことが言える。
7.お母さんが朝の支度の順番を毎朝音声で教えても、先生が図画工作の制作の順番を音声で伝えても、音声によるイメージと順番登録が難しい。
ワーキングメモリーというやつだ。
脳内記憶が難しいので、脳外に段取りを書いて示す。
黒板、ホワイトボード、板磁石、付箋紙、はしっこメモを使う。
加減乗除算の筆算のメモのようなものだ。
あの計算を、全部脳内でやれと言われると、私にはできない。
暗算は苦手だ。
筆算をメモ書きすることで、答えを出せる。
メモ書きが、記憶を助ける。
ワーキングメモリーが弱ければ、脳外の情報で助ける。
以上が、子どもの認知特性を理解する、ごく一部だ。
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