大人から見た、子どもの困った行動には、子どもの考えと理由があります。
理由もなく、かんしゃくを起こすわけではありません。
今回は、「困った行動には理由がある」の、その2です。
想像できない➡分からない➡かんしゃく
お母さんの言った言葉を、子どもが脳内で場面として想像できなくて、意味が分からないと、かんしゃくになります。
かんしゃくを起こしている姿を見たら、かんしゃくと呼ばないで、「どういうことだ?」「意味が分からないぞ!」「理解に困ってるぞ!」と、大人が音声の言葉にして、子どもの気持ちを代弁してみてください。
子どもはかんしゃくという行動で、喋っているのです。
あるとき、3歳の子どもさんが、部屋の中で真っ赤な顔をして暑がっていました。
建物の外は、13°cという寒い日で、お母さんは愛情から、ヒートテック肌着、長袖 T シャツ、ベストを着せています。
こういうお母さんの細やかな愛情で、子どもさんは健康にすくすくと育っています。
子どもさんが、背中をかき始めたので、子どもは眠くなると体温が高まるから、部屋が暑いのだろうと私は想像しました。
抱っこしてくれているお父さんと私で、「ベストを脱ごう」と手伝うと、首のあたりがきつかったのにも関わらず、素直に脱ぎました。
ベストを脱がせる前に、私がベストのすそを持って、2~3度上下に動かしました。
「脱ぐ」という意味の実物予告です。
子どもには、実物の予告が分かりやすいから、そうしました。
ベストを脱がせる意図が分かったので、子どもさんは応じました。
それでも暑がるので、今度はお母さんが、下着のヒートテック肌着を「下を脱ごう」と脱がせようとしました。
「下を脱ごう」と言ったお母さんの言葉と、脱がせる行動に対して、お母さんをずっと注目している大人の私でも、お母さんの意図理解に時間がかかったので、3歳の子どもさんにはこの言葉の理解は難しすぎて、分からなかったと思います。
その子どもさんには、お母さんのねらった意味=【上の T シャツは脱がないで、下のヒートテックを脱ぐ】が難しく、眠いこともあって、「フェーンフェーン」とグズグズ言い出して、かんしゃくの火種が起きました。
子どもさんは「下を脱ごう」の意味が取れませんでした。
上の T シャツは脱がないで、ヒートテック肌着だけを脱ぐというイメージ=想像が、3歳には難しいです。
お母さんが自分に、何をしようとしているのかが想像できない、分からないので「フェーンフェーン」と、ぐずぐず言いました。
お母さんは、上の長袖 T シャツを脱がせて、下着のヒートテックだけになると、大人の考えで見栄えが悪いと思ったので、下着のヒートテックを抜き取ろうとしたのです。
大人の考えを捨てて、子どもに分かりやすい、上の長袖 T シャツを脱ぐほうが、3歳の子どもには分かりやすかったと思います。
かんしゃくを起こしやすい子どもであればなおさら、大人の複雑な考えを捨てて、その子に分かりやすい、簡単な行動で接する方が、かんしゃくを引き起こさないで済みます。
上の T シャツを脱いで、下の肌着だけで良いような、肌着T シャツがいいですね。
物理的な工夫をすると、着替えなどの着脱も楽になります。
社会常識や大人の見栄えの側に立たないで、子どもの理解のレベルの側に立って工夫しましょう。
それが、かんしゃくを防ぐポイントです。
かんしゃくは、想像できない、意味が分からないことから起きます。
かんしゃくが爆発しないうちに、着替えが終了したので、その場は治りました。
意味が分からない状況が、もう1分長く続いたら、かんしゃくが爆発したかもしれません。
こんなふうに、子どもさんがお母さんの言葉の意味を想像できない時、分からない時、かんしゃくが起きます。
二語文をまだたくさん話さないのに、「下を+脱ごう」という二語文の理解は難しいです。
「脱ごう」は分かったかもしれないが、「下を」が子どもさんには分からなかったと思います。
着替えなどは、壁のコーナーに置いた、大きな鏡の前ですると、子どもにとっては目に見えて、良いのかもしれないですね。
家庭生活という暮らしでは、大人と子どもの「理解の不一致」の連続で、かんしゃくが起きるのではないかと想像します。
子どもの言語発達年齢が何歳か?ということを、お母さんも意識する必要があります。
心理学者の梅津八三が「言語行動」と呼んだように、言語発達が行動を左右します。
言葉が遅れると、行動も幼くなります。
暦の年齢は3歳でも、言葉の発達は6か月ぐらいだと理解して、子どもが分かる行動へ、大人が対応を変えるといいです。
実物は分かりやすく 分かると子どもは安心する
実物は、子どもに分かりやすいです。
「帰ろうね」という時、車の鍵を手渡すと、子どもは「鍵➡車➡帰れる」と、とてもよく分かって落ち着きます。
手に、言葉の代わりの実物を持てると、子どもは分かって、安心します。
子どもの手の中に、「帰れる=車=鍵」という、保障とイメージがあるからです。
子どもの発達の順序は、手で触れる、目で見て分かる、耳で聞いて理解していく、の順番です。
大人の音声言語は目に見えず、子どもが脳内にイメージを持つことが難しいです。
実物を使って子どもの手に実物を持たせ、スマホを使って場所などを目に見せて、子どもさんを安心させてください。
不全態が続くと、かんしゃくに至る
3歳の子どもさんと、ご両親とみんなで、ベビーブックやトミカカタログを1時間ほど見ました。
大好きな車のページで、車の名前をお父さんが言ってくれて、子どもさんも笑顔が出て、「カーキャリー」などとそれらしく真似して言いました。
音声の言葉作りは、まだはっきりせず、構音に渋滞があります。
構音に渋滞があると、保育園の先生や同年齢の仲間とのコミュニケーションに、非常に苦労があります。
1音の「ガ―(=ライオン)」は言いやすく、2~3音の「タクシー」「カーキャリー」ははっきり作れません。
言語聴覚士さんや作業療法士さんの、遊びの個別指導が必要です。
3歳児検診の結果で、保育園には支援員さんも必要です。
家庭ではご両親と、大好きなトミカや動物について、横に並んで指差し合いながら、たくさん話し合うと良いと思います。
好きなものについて、たくさん話し合う時に、言葉が発達します。
大好きな車について、みんなで一緒に眺めて話し合ったので、ヒートテック肌着を脱ぐ手前に、満足した時間があったから、かんしゃくは爆発しませんでした。
この楽しい満足した時間がなかったら、ヒートテック肌着を脱ぐ際にもっと早く、かんしゃくは爆発していたかもしれません。
お父さんが隣に並んで本の中の車の名前を言ってくれたり、眠いと抱っこしてくれたり、飽きると抱っこして建物の中を3回巡ってきてくれたりした、そういう時間がなかったら、やはりかんしゃくはもっと起きやすかったでしょう。
大好きな車の名前を言う、両親との確定域の共感の時間、眠い気持ちの受け止め、飽きた気持ちの受け止めなど、お母さんの育児を手伝ってくれるお父さんのおかげで、満足した自全態が90分続きました。
不全態が続くと、かんしゃくが起きるが、自全態が続くと、穏やかに切り替えが起きます。
帰りは、売店で「じゃがりこ」を選んで、買い物して、お母さんと手をつないで、駐車場まで歩きました。
かんしゃくという困った行動には、爆発に至る理由がある、理由を読み取って、子どもに分かる行動や言葉に変えていくことが大事、という紹介でした。
この子どもさんの好きなものが、トミカ・動物・じゃがりこ・せんべいと分かったので、次回付き合う時は、これらの確定域を私も準備しておけます。
今回は、お母さんの希望に沿って、医師と整肢療護園の療育を紹介いたしました。
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