子どもの多動・衝動・不注意には原因があります。
多動・衝動・不注意を消去しようとするのでなく、原因を読み取って、苦労に共感し、適応のコツを大人が見つけましょう。
多動の原因
子どもの身体は、5歳で完成します。
色々とできるようになるので、6~7歳は、一番多動な時期です。
脳に性差があって、男の子は、一度に一つのことを、全エネルギーを注いでやりたがります。
女の子の方が、同時に色々と考えることができて、言葉も活発です。
男の子は、黙ってたくさん動くので、大人の女性のお母さんは、動き回る男の子を育てにくい時期があるかもしれません。
体重が重くなる、11歳頃は、多動が落ち着いてきます。
集団への不適応が目立つ時、環境を整えた上で、本人が望めば、体重が重くなるまで、中枢神経刺激剤コンサータなどの薬を活用することもあります。
年齢的なものや、性差も頭に入れて、多動を考えたいですね。
6~7歳の体重の軽い男の子は、動きたくてたまらない衝動があると理解して、多動・衝動を肯定的に見てやりましょう。
身体は、粗大運動から微細運動へと、発達します。
歩く・走る・立つ・座る・見る・探すなどです。
遊びも、粗大なものから微細なものへ、進化します。
散歩・ブランコ・鉄棒・うんてい・砂遊び・ブロック遊び・はさみ・のり・クレヨン・マジック・お絵かき・読み聞かせ・体操教室などです。
微細運動を土台に、片付け・着替え・お当番・お手伝いなど、しつけも身につけていきます。
多動の強いお子さんは、不注意・不器用も重なっていることが多いので、ぎこちなさ・うまくいかない不全感を理解して、助け舟を出してやりましょう。
大人が言語化できる「コツ」を、伝えるようにしましょう。
スタートを手伝ってやると、取り掛かりの億劫さが減ります。
言葉で「着替えなさい」と言うだけでなく、T シャツを脱がせたり、着替えの体操着を手渡すと、行動は起きやすくなります。
多動を緩める環境
例えば、学校の授業でも、家庭の食事場面でも、5分ごとに、動ける環境を作ります。
5分ごとに、動ける予定を予告して見せます。
5分で動けると分かれば、5分待てるようになります。
日数をかけて、10分~25分に延ばしていくと、例えば45分の授業では、2回立っても良い行動があれば、落ち着けます。
15分たったら、1分となりの友達と話してよい、15分たったら、1分座席を離れて友達と話してよい、などの環境作りです。
「5分・10分・15分頑張れたね」
「友達と話せたね」
「席に戻れたね」
できた行動、プラスの行動に、声をかけます。
遅れて、席に戻れない子どもがいても、マイナス行動は音声指示で指摘せず、スルーします。
クラス全体に向けて次の行動の指示を出しながら、その子のそばまで行って背中に手を当てて着席行動を促したり、その子の席の所で全体指示を出しておいでおいでをしたり、その子の教科書を差し出して手渡したりします。
先生の身体の物理的接近で促す、実物を見せて手に持たせて促す、などは切り替えが遅れる子どもさんに向いています。
音声の指示だけで行動させようとすると、衝動的に反対の方向へ動いてしまうことがあります。
身体や行動のベクトルを、同行の方向に重ねることが大事です。
対面指示よりは、目を見ないで並んで伝える指示の方が、良い場合があります。
休憩の1分は、教室の後ろのロッカー上の水筒のお水を飲んでもいいし、自由帳に鉛筆でお絵かきを1つしても良い、クラス全員で立って首や腕回しの運動をしても良いでしょう。
動かずにいられない特性を大人が理解して、動ける環境を準備することが、相互の歩み寄りです。
環境の工夫が、適応を形成します。
教室の座席の工夫
環境としての座席の工夫は、色々とあると思いますが、5×5の配置にとらわれないで、下の図のように柔軟に考えると良さそうです。
下の図は19名ですが、後ろや左右へ5~10名増やせます。
席替えは、座っていられる児童なら「勉強を手伝いたいから先生のそばに来てね」と、本人にはそっと予告します。
あるいは「背が大きいから一番後ろでね」という座席位置の予告もあります。
離席や教室離脱しやすい子どもなら、出口に一番近い場所が良さそうです。
席替え直後に、本人の不都合や不満に気付いたら、すぐにインタビューし、1か月はチャレンジできるか、次の席替えを待てるか、放課後に話し合いましょう。
担任の先生の支援を、一番必要とする子どもさんから、座席の位置を決めていきます。
衝動の原因と対応
衝動的であるとは、反応が早いということですね。
「素早いね」
「勢いがあるね」
肯定的に長所として捉えて、他の子よりスピードがあることを、まずは伝えておきましょう。
それから
「先生の説明を最後まで聞いて、123と数えて、3秒待って手を上げる」
「123と数えると、友達に手を出さなくても、話し合いで解決する」
「友達に何か言われたら、フーッと息を吐いて怒りのスイッチを切る」など、待つことを具体的に提案します。
待てた時を探して、認める声かけをします。
待てるとミスが減り、待てると友達と仲良くでき、待てると認められる、と子どもに刷り込みます。
ゆったりのんびり構えていられる状況の時を、「時間をかけてじっくり取り組めているね」と、大げさに認めます。
衝動の強いお子さんも、不注意・不器用が重なっていることが多いので、うまくいくコツを言葉にして伝えていきましょう。
例えば、のりづけは「消えいろピット」という、のりの跡がブルーに見えるのりを使い、①紙の周囲にのりをつけてから、➁中央につけると良い、と具体的に教えます。
ノートに貼らせるプリントは、ノートよりも縦横2 cm ずつ、小さなプリントを配布します。
プリントは、何のプリントかわかりやすいように、表を見せて折らせます。
座席を一番後ろにしておくと、支援員の先生がコツを伝えやすいです。
不注意の理解と対応
多動も衝動も、不注意も不器用も、「行動のコツ」を、自分で自分に言葉でつぶやくことができないので起きます。
先生の音声指示を、耳で聞くだけだと、すぐに消えていってしまいます。
自分も心の中で同じにつぶやくと、2回再生されて、記憶に残りやすくなります。
行動に注意を払うには、先生の指示を心の中でつぶやくことが大事です。
「①宿題のノート ➁筆箱 ③ハンカチ」など、チェックリストなども、記憶の負担が少なく、番号順に点検しやすいですね。
多動・衝動・不注意のある子どもたちは、するべき行動を自分で復唱音声化した方が分かりやすいのですが、通常学級では音声化すると迷惑になることもあるため、黙って行動しなければならず、それが多動・衝動・不注意の子どもたちにとっては、不利益な環境です。
先生が「皆も言って」と、復唱音声化を全員に促すと良いです。
注意を向けさせるには、身振りや指さしも大事です。
1~2年生の先生が、教科書音読の時に、指たどりをさせるのはそのためです。
先生が、黒板で指差し棒を使って、注意を向ける箇所を、目立たせることもあります。
Chromebook や iPad タブレットで、デイジー教科書を使うと、デイジー教科書では、音読する箇所が黄色枠で移動していきます。
漢字記憶や漢字書きを助ける
漢字の記憶なども、人数の多い通常学級では、黙って書字するため、記憶を助けません。
「体」は、「イ」+「本」と、自分でつぶやけると記憶を助けます。
「日記を読む」と先生が黒板に同時に呈示すると、子どもは「記」と「読」を書き間違えません。
「見」「書」などの細長い漢字が、漢字練習帳の1マスに収まらない子どもがいます。
1マスの枠線の上の青線から書き始めるように、コツを伝えます。
青線から3 mm 下がったところから書き始めてしまうと、「見」「書」は1マスに収まらないからです。
「見」は「目 ル」と言いながら、「書」は、「ヨ つきぬける 1 二 日」と言いながら、書けるように手伝いましょう。
部首やコツを言えるということは、形態を記憶していて、書けるということです。
言いながら書くことが難しい子どもさんには、保護者がそばで、漢字練習の時に、部首やコツをつぶやいてあげてください。
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